BSE&食と感染症 つぶやきブログ

食品安全委員会などの傍聴&企業・学者・メディア他、の観察と危機管理を考えるブログ by Mariko

BSE意見交換で仏学者「米国状況は非常に劇的かも・あまりよくないかも」

2005年11月10日 13時31分39秒 | アメリカ牛は安全か?
※11月末、山内一也先生から50mgの感染の件についてご連絡を頂戴しました。軍の機密研究という点に事実誤認があったこと、50mgは経口ではなく脳内接種であること、5mgで実験が継続中であることなど、および最新情報です。末段にUPさせていただきます。(PC不調などによりUPが遅れ失礼しました)

11月4日、食品安全委員会主催で、
食品に関するリスクコミュニケーション(東京)- BSEと牛肉の安全性 -
http://www.fsc.go.jp/koukan/risk171104/risk-tokyo171104.html
が行われ、行って参りました。(資料は上記参照)
フランスの原子力委員会でBSEを研究されていた学者(現在は米国のスクリプス研究所)の、コリーヌ・ラスメザス博士のお話を伺い、質問の時間がありましたので、食品安全委員会に送ってきたけれど「無視」されてしまった数々の情報を直接研究者に質問するチャンス!と思って、以下質問をしてきました。

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1.サルが5gの脳で経口感染した論文のほか、50mgの脳で経口感染した報告が論文にあるが、それらは軍の調査とのことで詳細が公開されていない※(わけではなく、誤解がありました。末段参照)、やはり他の研究者にも情報が共有されていないのか。

2.たとえば感染後6ヶ月して、腸からプリオンが検出された後、扁桃や脳などに発現するまで異常プリオンたんぱく質が消えるが、これは(本日の講演のマウス実験にあったように)血流を通じて移動していると考えていいのか?

3.米国はSRM由来の32万トンの肉骨粉と牛脂を家畜飼料に使い、また、牛に100万トンの鶏糞を与え、そのうちの3割の30万トンが肉骨粉というFDA長官代理の見積もりがある上に(この情報提供にもかかわらず食安委はそれを答申案に反映していない)、鹿などの動物までレンダリングシステムに混入しているようだが、コリーヌ先生はこの米国の状態をどう考えるか?

4.BASE(アミロイドが蓄積する弧発性ヤコブ病の症状に似た新型BSE)および、最近霊長類への感染の論文が出た、米国で大蔓延している狂鹿病(CWD)の最新知見を教えてください。1997年の規制が遵守されず、鶏糞なども通じて鹿などが食物連鎖に混入している米国の状態について、私は英国型でないBSEの発生を心配しているが、コリーヌ先生はどう考えるか?

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1.は回答が長いので最後にUPします。

2.は「研究中」ということで、はっきりした回答はいただけませんでした。

3.米国の飼料管理の無茶苦茶さを、具体的にトン数などで申し上げたわけですが、通訳を通して、コリーヌ先生はこういわれてました。

「ご存知のように、歴史を見て参りますと、たとえばリスク評価はできる、つまりこの肉骨粉がどの国に輸出されたかと、そのへんに不確実性があります。というのは貿易というものは非常にフォローができないんです。ですからとてもいい地理的な絵があって、肉骨粉がこっちにいった、世界中にいった、ということは示すことができます。これは標準としてとりますと、状況は非常に劇的かも知れません。これはあまりいい状況ではないんですけれども。」

「国の国内慣行があります。やり方です。最初のリスク評価が米国で行われました。それも議論を呼びました。今第二の(米国の)リスク評価をやり直しています。えさのやり方の慣行、どう肉骨粉が処理されているか、輸入された肉骨粉がどうなっているか、近いうちに公表できるでしょう。」

「積極的に状況を検査しないとわからない。テストをしてみないとわからない。真の米国のBSEの発症がどうなっていたか、真実はわかりません。

「状況はわからないけれど、保護はあります。たとえばテストをする、あるいはすべての個体を○○するとか、適切な形でSRM除去をやっていくことが重要です。」(要旨)


4.コリーヌ先生は「新型の(弧発性に似た)BASEは要注意」とのこと。そして北米の狂鹿病、CWDは研究者は、皆憂慮されているとのこと。「反芻動物は反芻動物に食べさせるべきではありません」

参考:狂鹿病問題:鹿ハンターからヤコブ病26名発生 そして鹿肉骨粉や油脂・エキスの行方は?

なお、飼料としての牛脂の危険性についてはコリーヌ先生も触れてました。 日本の食品安全委員会は、「現場の飼料専門家」が牛脂の危険性を調査会で指摘したにもかかわらず、米国内でまったく規制のない牛脂の増幅を一切無視した答申案を出していますが。


詰まるところ、こんな肉ますます食べられない~!と思った意見交換会でございました。が、今までの傾向と対策から、これらリスコミの内容が反映されることは、やっぱりないんでしょうか。質問の時間は1時間とたっぷりあったんですが、最後に時間が余ったときに、寺田委員長にこう質問してきたらよかったです。しまった。
「これらリスコミで出た意見や新しい知見は食品安全委員会で今後どう反映されるのでしょうか?」


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1.の回答について
笹山登生さんの掲示板【2082】以降に書き込んだ報告のコピーで申し訳ございませんが、質問と回答などを。。。
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(サルが経口感染した脳)5gの件とは別件の話で、今年2月19日の毎日新聞に50mgで感染の記事が掲載されたので、確認したところ、山内先生からの情報とお教えいただいたので、山内先生に伺ったところ、2082にご紹介した論文の方に、50mgの脳を食べさせて感染した話が出ていて、「フランスの軍の研究で」(訂正:末段参照)、とのことである数字について伺ったのですが、「そんな実験はない」といわれてしまいました。論文には50mgの数字は出てるのですが?(^^;?
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=15733719
http://www.vegsource.com/talk/madcow/messages/93984.html

(余談)しかし、5gの脳をバナナに入れて?食べさせて、2頭中1頭が感染発病したという現実があるのに、なんで1.5kgの脳を食べないと感染しないという話になるのか、数字って難しいですね。種の壁の話が出たので「インドのヒトの遺体から感染したという説もあるがその場合は種の壁もないのではないかと思う、クールーの潜伏期間は50年にのぼる例もあるし11000人の感染者?のその後を見守らないと。その間はとても飼料管理の無茶苦茶な牛なんて食べられません。」などと発言してしまいました。

コリーヌさんのデータ予測?によると、死者は500人?、不顕性の(症状のない)感染者が11000人?いるのではないか、という数字が出ていました。
コリーヌ先生の資料その4より
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笹山さんから頂戴した情報

Corinne Ida Lasmézasも参加したフランス原子力庁BSE研究チームの論文「Risk of oral infection with bovine spongiform encephalopathy agent in primates」の中で言及されている、この部分で、引用された論文のことですね。
「The accuracy of estimates of the oral ID50 for man will not be improved until completion, several years from now, of a large dose-response European study (QLK1-2002-01096) in macaques, in which the minimum dose is 50 mg. However, because similar inocula were used in both the cattle and macaque studies,6 a tentative comparison can be made between the efficiency of oral infection in cattle and that in primates. On this basis, a factor of 720 could be considered as the range of magnitude of a bovine-to-primate species barrier for oral BSE infection (70 primates infected compared with 490 or 1400 cows,
with a similar dose).」

これ「"Transmission of BSE to non-human primates". MOTZKUS D, SCHULZ-SCHAEFFER W, STUKE A, HUNSMANN G. The First International Conference of the European Network of Excellence NeuroPrion, Paris, France, May 24-28.」
http://www.dpz.gwdg.de/virol/web-viro/poster/Paris_2004_Motzkus.pdf
が、当の論文のようです。

ただし、ここでは、はっきり「BSEに感染した牛から採ったホモジェネートした脳を50mgマカクザルに摂種』とかいてありますよ。
最後の所に『コリーヌ・サスメザス博士の協力に感謝』とも書いてありますね。


■山内一也先生からいただいた情報
追加訂正
山内一也先生からのコメントと情報です。
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Lasmezasの講演会の記事で、50 mgの実験について、私の話として「フランスの軍の研究でデータの詳細は機密で公開してもらえないのだが、数値だけが公開されている」という内容が紹介されているのに気がつきました。これは、プリオン専門調査会終了後にあなたから質問された時の会話にもとづくものと思いますが、そのような話はしていませんので、訂正させていただきます。

私の話は、50 mgの出典がLancetにもとづくものかというご質問にイエスと答えたこと、この実験の詳細について問い合わせているのだが、まだ返事がもらえていないこと、Lasmezasの所属する原子力研究所が厳しい警備下の軍の施設内にあることの3点ではなかったかと思います。軍での機密研究といったことは申し上げていません。なお、この研究所には1996年に座長の吉川先生と訪問したことがあります。獣医学会HPなどに連載されている私の講座、人獣共通感染症の第49回(1997年1月15日)に載っていますのでご覧ください。

後で明らかになったのですが、これはあなたのブログでも紹介されているドイツ霊長類センターでの実験でした。その内容は50 mgを脳内接種したもので、経口接種ではありませんでした。もっとも、Lasmezasの論文では、人への経口投与量の推定の議論の中で50 mgを取り上げているので、当然、経口投与と考えたのです。しかし、50 mgの成績は脳内接種なので、適切な議論とは思えません。

サルへの経口接種の実験は現在、原子力研究所、ドイツ霊長類センター、ドイツ・パウル・エールリッヒ研究所、イタリア・衛生研究所で進行中で、結果が出るのはまだ大分先のようです。この実験については多分、Lasmezasが話されたものと思いますが、もっとも少ない投与量は5マイクログラムで、10年間観察の予定です。

別の話ですが、科学(岩波書店)の12月号にプリオン専門調査会での議論の経緯を書きました。ご覧いただければ幸いです。もっとも、大部分をヨーロッパ滞在中に大急ぎで書いたためもあって、3カ所に誤りがありました。第1は、中間とりまとめの年月が2004年でなく、2003年9月になっていたこと、第2、第3はリスクコミュニケーションの項で、3つの諮問としてしまったこと(中間とりまとめは諮問にもとづくものではありません)、およびトランス・サイエンスに研究者(科学者の方が適切な表現です)と消費者がともに関わるべきとしたことです。ご参考まで。


岩波書店:科学 12月号(11月25日発売)
http://www.iwanami.co.jp/kagaku/


5 コメント

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Unknown (タッキー)
2005-11-11 04:27:44
TBありがとうございました。

恐ろしい限りです。

食べないしかないですね。
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ダラダラとすいません。。 (BSEに関心を寄せるフリーターw)
2005-11-15 22:19:50
発見されてから10年かそこらの病気について、10年間のわたり……即ち、

プリオン病が認められてからずっと研究に尽力なさった事は評価される

べきだと思います。しかし、科学的に妥当であると認められるには、同じ

手技で検査をした際に同じ結果が得られなければならないのです。これを

再現性と呼ぶのですが、再現性が確認されていないウチは論文をそのまま

鵜呑みにするのは危険な感じがしますし、科学的とは言い難いと思います。



この点については、慎重にデータを積み重ねていく必要があるでしょう。



しかし、今回の輸入再開問題にあたって、生体牛についての感染リスクにも

触れているのに、家畜を所管する農水大臣が諮問しないと言うのはどういう

了見なんでしょう?SRM の除去ったって、腸管を細切れにされたら目の前の

ものが回腸遠位部かどうかなんて、組織検査でもしないと分からないのにな。

(ちなみに組織で見ても、なかなか分かりにくいらしいですよw)



あと、前頭検査とか月例の確認に大衆の目が行っているようですが、

もっと大切なのは飼料の流通管理であると考えます。代用乳が原因か

どうかという問題はひとまず置いておくとして、いつ、誰が、どの牛に

どんな成分を含んだ材料を与えているかが非常に重要になってきます。



なんせ、BSEは経口感染ですから。



日本では着々と飼料の管理体制が厳しくなりつつある(一般には知られて

いないと思いますが……)中で、リスク評価をする際にその辺りの議論を

無視して行うこと自体がナンセンスであるようにも感じます。



だいたい、BSEリスクっちゅう言葉も気に入りません。

①牛→牛のBSE感染リスクなのか?

②牛→牛肉の異常プリオン蓄積に関するリスクなのか?

③牛→人のvCJD発症に関するリスクなのか?

その辺を上手くボカされています。



①であれば、厚生労働大臣ではなく農林水産大臣が諮問すべき内容

であるハズなのですが、農水省は全く動いてくれません。



不親切なパブリックコメントの求め方に非難が相次いだのか、HPに

「評価(案)のポイント[PDF:364KB]」なるものが発表されましたが、

その中でも生体牛のリスクについて明記してあります。そしてBSEは

法定伝染病という、悪性伝染病の中でもいちばん警戒が必要な病気です。

法定伝染病について主管するのは農林水産省であり畜産を主幹部で

なくてはならないはずです。なぜ諮問をしなかったのか非常に疑問です。



評価(案)についてのポイント[PDF]

http://www.fsc.go.jp/hyouka/hy_bse_usacanadian_point.pdf
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ご意見ありがとうございます。 (Mariko)
2005-11-16 10:32:50
BSEに関心を寄せるフリーターさん、たくさんのご意見ありがとうございます。



私は今回木村先生が、プリオン専門調査会の「公開審議」でご発言されたことは、国民に対する問題提起として非常に重要な意味を持っていると思います。



だっていままでこの説、公的に完全無視されてきたんですよ。(^^;だからちゃんと調査もされなかったわけです。



国民は代用乳についての前回のBSE対策チームの報告書がいかにいい加減なものであったかも知らなかったし、えらい学者が「科学」として発表しているものにも、国民として疑わなければならないということを、こうして公的な審議で、国民にわかる形で指摘していただかなければ、(報道されるかどうかは別にしても)何も始まらないと思うんです。



とくに食の安全問題など、「予防の原則」が重要なことにおいて、「どの学者がどう対応しているのか」、後世の記録に残すことは決して無意味なことではないと思います。



ちなみに代用乳問題について、ようやく新しく研究対策班ができたわけですが、これも座長は吉川教授だそうです。(^^;

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私のブログにトラックバック有難う御座います。 (オーガニック)
2005-11-19 15:59:35
BSE問題に限らず、私たち生産者からすれば国の対応がずさん過ぎるような気がしてなりません。

食品安全委員会という組織を立ち上げ昔よりは良くなっているとは感じているものの。。。。。。これからは消費者と生産者が一緒に行動を起こしていかなければならないと強く感じます。



「命の源である食」これを健全な方向にもっていくには

政治の介入や金儲けから少しづつ離れていくべきだと思います。では、ご意見お待ちしてます。



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TBありがとうございます (ろぼっと軽ジK)
2005-11-20 17:28:17
11月20日のブログで紹介していますが、しれっと米国産牛肉輸入解禁に関するパブコメが実施されています。マスコミも全くといっていいほど触れていず、ここで意見が少数であれば、一気に「日本の市民はたいして反対していない」という既成事実がつくられてしまいます。わたくしは投稿済みです。11月29日がパブコメの締め切りです。内容よりもまずは数がポイントになりますので、関心をお持ちの方はぜひご投稿を。
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