かぎ裂きのほつれをひろう針先を見ている 母がまたあらたまる
すみませんね、とだけ言って味噌を溶く小さなひとになってしまった
屋根を圧す雪の重みに家ぬちの声はくぐもりながら底方へ
来し方を語る男が残忍な逸話をふたつみつこぼしゆく
とうとさに喉を焼かれた鳥たちをかくまうように生をつないで
深夜から深夜へ渡すテキストの澱をあつめて真冬を燃やす
そのようにひとりひとりが離りながら爆ぜながらゆく舟となるまで
※2月号は欠詠
かぎ裂きのほつれをひろう針先を見ている 母がまたあらたまる
すみませんね、とだけ言って味噌を溶く小さなひとになってしまった
屋根を圧す雪の重みに家ぬちの声はくぐもりながら底方へ
来し方を語る男が残忍な逸話をふたつみつこぼしゆく
とうとさに喉を焼かれた鳥たちをかくまうように生をつないで
深夜から深夜へ渡すテキストの澱をあつめて真冬を燃やす
そのようにひとりひとりが離りながら爆ぜながらゆく舟となるまで
※2月号は欠詠
安物の箸でくずせば卵黄のあまい嘆きは粘りをおびて
朝な朝な綻びながら綴じながらただ負けたくてここにいること
分かつまでどれほどの雨 街路樹の枝の傷みにふれることなく
搗色に深まりながら手荷物のツバメノートをひらく男よ
裂け目から鮮やかな香がたつことの、木のかなしみを言わせたいのか
眉尻をあげて遮る一瞬を驟雨のように性はよぎって
白湯で溶く蜜のぬめりのどんなにかくるしいだろう ふゆがはじまる