よく噛んでやわらかくした感情を吐きもどす犬、よわくなったね
そのかみは夏野の王であったろう草穂の海を薙ぐようにゆく
子は犬に、犬は子に護られながら汀のような夜道をわたる
弱まってゆくことの佳さ それぞれの体にかなう声を出し合い
忖度の手つきが見えてさびしいと子は言いつのる 晩夏なのだよ
ぞんぶんに夏の地面を碾き終えてサンダルのまま帰っていった
湯で割れば梅酒が見せる逡巡のどうしているか父だったひと
日曜の午後を費やし教わったコンツェントラツィオンス・ラーガー
せんそうのこと。底隠る父の声。火。痩せている。こんなに。こんなに。
ばかみたいだったと最後につけ加え餌壺の粟に指をうずめる