秋だというのに何で今更蚊遣り?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、この時期案外と蚊がたくましいというか元気なのです。
仕事場で型抜き作業を繰り返していますが、窓を開け放っていると次から次と蚊が飛んできます。
夏場の蚊も嫌ですが、秋の蚊は脚や針も黒々していて直線的に襲ってくるようで、またしつこい。
そんな訳で、部屋の中に蚊取り線香を同時にふた巻焚いているので、中にいる自分の体もいつの間にか燻されて、燻製のようになってしまいます。
画像の豚の蚊遣りは今戸焼ではなくて、隅田川を挟んで川向うの「百花園焼」のものです。梅花型の枠の中に百花園の文字の陶印があります。萩の花の下絵付けの上に透明釉がかかっています。時代はわかりませんが、そんなに古いものではないのかもしれません。しかし百花園でもこのような実用的なものが焼かれていたというのは意外です。都鳥ばかりではないんですね。百花園焼は墨田川焼のひとつだと言えると思いますが、隅田川の東岸には三浦乾也や鳥居京山もいたし、本所に中之郷瓦町というところがあったりと、窯業が盛んだったようです。今戸焼の名工と言われた戸沢弁司も寺島にいたようです。隅田川西岸に今戸があり、それより川上の橋場には井上良斎の隅田焼、聖天様の下の聖天瓦町という地名もあったようですし、川を挟んで両側に焼きものが点在していたようです。
画像の豚の蚊遣りで不思議に思うのは鼻孔がヘラ押しで付けられているんです。徳利の口に当たる部分が鼻だと思うのですが、これを作った人は口だと思ったのでしょう。つまりひょっとこの口をした豚さん。面白いと思います。隅田川を挟んだ両岸の焼き物いろいろ。陶工の行き来もあったことでしょうし、今戸焼の親戚みたいなものではないでしょうか?