「山」旅の途中

40代後半になって始めた山歩き。自分はどこから来てどこに行くのか。光、空気、花々の記憶を留めたい。

大雪山を行く 紅葉と初冠雪 旭岳~間宮岳~裾合平(2)

2009-09-13 10:39:48 | 表大雪
(写真: 旭岳山頂)

八合目、九合目と進むにつれて風が強くなり、防寒のためにフリースと雨具を着込む。

ごつごつとした岩肌にも着雪があり、滑らないようにと気を引き締める。

斜面をひと登りして頂上に出た瞬間、一気に視界が開けた。白く染まった山々の連なりが大雪山の大きさを物語る。ロープウェイ姿見の駅から1時間半ほど。

ここは標高2290.3m。大雪山、そして北海道の最高峰。

北海道上空3000メートルには10月初旬並みの寒気が入っていて、この雪は昨夜までに降り積もったのだろう。


(写真: 比布岳~北鎮岳の連なり。右手前は熊ケ岳)



山頂には一等三角点が埋設されていて、その由来が記されていた。

明治33年(1900年)9月10日に選定とあるので、109年前の仕事ということになる。

映画「剱岳 点の記」を彷彿させる、明治の男たちの偉業。迫る冬を前に時間とも闘いながら、大きな仕事を成し遂げた証だ。



(写真: 山頂標識と1900年選定の一等三角点)



旭岳山頂からは、急斜面を下って間宮岳との間のコルに降りることにする。

夏は歩きにくい砂礫地で、この斜面は難所だと思う。今回は新雪で、むしろ夏より歩きやすかった。

先行者一人の真新しい踏み跡も、ありがたく利用させていただいた。

足跡は、もうひとつ古いものがあった。晴れた今朝ではなく、前日に歩いた人がいると知る。

おそらく吹雪のなか、驚きだ。


(写真: 画面中央付近の底部に降りて、左手を再び登る)


(写真: 最近、右膝が痛むのでサポーターを装着)



旭岳山頂から降りたコルは、裏旭と呼ばれている。振り返ると裏から見た旭岳。登山者だけが見ることができる、もうひとつの表情だ。

「表」は山体が崩壊し、爆裂火口の荒々しさが印象的。一方、「裏」は丸みを帯びた優しい表情を見せてくれる。

新雪の白と、真紅に染まったチングルマの葉。秋と冬の季節のコントラストが鮮やかだ。

初冠雪を気象台が発表したのだろう。テレビ局のヘリコプターも飛来する。


(写真:「裏」から見た旭岳)



コルからは再び登り返して、やがて「お鉢平」という大きなクレーターを囲む外輪山に至る。ここが間宮岳分岐。旭岳山頂から1時間ほど。

お鉢はぐるりと一周できるが、右に進めば北海岳。左に進めば間宮岳、中岳、北鎮岳、凌雲岳と連なる。ここは左廻りを選ぶ。

秋の装いを淡く整え始めたお鉢を白雪が包み込む。

間宮岳分岐から中岳分岐までは、30分ほど。ここで北海岳を望みながら一息つく。

この時間、次々とテレビ局のヘリコプターが来る。新聞社の小型ジェット機もあわただしく旋回する。夕方のニュースが楽しみだ。


(写真: お鉢を囲む外輪山。高い山が北鎮岳、その右が凌雲岳)


(写真: 中岳分岐から見たお鉢と北海岳)