9月に入って、上旬は梅雨時みたいな曇り空や雨天の日が続いた。15日の敬老の日を含む3連休は、絶好の好天に見舞われ、早いところでは運動会や秋祭りなど、各地でさまざまなイベントが催され、伊勢志摩にも多くの観光客や行楽客が訪れ、伊勢神宮界隈もかなりの人出でにぎわった。 天気図を見ると、停滞していた前線がはるか南の海上に南下し、日本列島は大陸から張り出した寒冷な高気圧に覆われていて、そのせいか朝夕はまるで晩秋のような肌寒さである。しかし、太陽が昇るにつれ、気流は涼しげであるが、陽射しはまさしく残暑を振りまいている。8月に続いて、又、川やら海辺を散策してみた。
川へは、久しぶりに五十鈴川を高麗広まで駆ってみた。このコースは昭和の半ばまでは、五ヶ所行きのボンネットバスが剣峠越えに走り、小狭い上流域には戦国の昔より人々がひっそりと住み着き、江戸時代に書かれた名所図会などには、五十鈴川界隈の名所と供に、幾つかの名物岩や謂れ石などが描かれている。 内宮前から川の左岸の県道を遡ると、数百mほどの所に清流を渡る法度口の「飛び石」がある。ここからさらに1kmほど入った右手の道路際に、名水(俗に高麗広の金名水などと呼んでいる)の湧き出る湧水場がある。この真下の渓流の大岩のひとつに、「鰒岩」(あわびいし。鮑石とも書く)がある。
さらに数百m進むと、民家のある仙人下橋(せんにんしもばし)に至るが、右手の支流沿いの林道を進むと、竜ヶ峠を経て4kmほどの行程で、伊勢市矢持町菖蒲(しょうぶ)の集落に出る。最近、この竜ヶ峠越えのルートが整備され、逆に久菖寺のある菖蒲からの「裏参宮街道」として知られるようになった。山歩きや森林浴を楽しむには、程よい散策コースとなっている。 神宮の宮域でもあり、今は行けなくなったが、仙人下橋対岸の五十鈴川の右岸に、古来の名所である「鏡石」(かがみいわ。鏡岩とも書く)がある。チャートの露岩の一面が断層に伴う鏡肌(スリッケンサイド)となっていて、昔は人の顔が映ったとさえ言われているが、川の反対側でもあり、道路からは見えない。 さらに上流に行けば、神宮の宮域林の山中に大滝、小滝がある。
海へは、志摩の大王崎近くの名田漁港付近の海岸を散策した後、大野浜に立ち寄った。この浜は、いつ行っても「層内断層入りの漂礫」がたくさん打ち上がっているが、この日は水石にもなるような、少し大
きな漂礫を探してみた。 幾つか拾って持ち帰ってから、あれこれと眺めてみた処、階段状に生じた層内断層入りの小石を、置き方を変えてみたら、まるで稲妻模様の紋様石として鑑賞出来る事がわかった。 新たな発見であり、「志摩の稲妻石」(しまのいなづまいし)と名付けてみた次第だ。さらに探せばもっとそれらしい、きれいなものが見つかるかも知れない。