業務日誌

許せないヤツがいる 許せないことがある
だから倒れても倒れても立ち上がる立ち上がる
あいつの名はケアマネージャー

情報非公開

2006年11月26日 | 業務日誌
※ 画像は古谷実『稲中卓球部』。かなりスキな漫画です。

私たちの毎月の認定調査の件数、多いです。
先月はアイリン女史が7件やって、区役所から提出済み確認のハンコをもらって帰所するたびにみんなにすご~い(大変)!と言われ、
『そうよ、また3000円も稼いで来たわよ』
と自嘲気味にグチっていたけど(ハリケン地区では調査一件につき3000円の委託料がもらえます)、正直なところこんなもの3000円払うから誰かやってくれ!と言いたい。
しかし、先月半ばからこの私は、もう更新8件と区変1件をやっています。
他にも実は2件、調査だけの依頼があったのですが、新人オリーブに泣きついて代行してもらったとゆー状況です。

そんな調査対象者の中に、ここ数ヶ月に渡り、なんとかこの調査だけは区の職員にやってもらおうと画策し続けていた利用者がいました。
ベティさん/経過的要介護 75歳女性・独居・ナマホ。
今月更新です。
私には、どうしてもこのベティさんを介護給付にする自信がない。
もしかしたら要支援にもならないのではないか。
なぜなら
この利用者は走れる
のですから!
走れる高齢者の1-1群に「両下肢麻痺」のチェックを入れるなんて、私には出来ないよ。
1-2群の「可動域制限」はある。…ベティさんは頚椎と肩が少し悪くて自由に上下左右を向くことができないと訴え、現在週に2回来ているヘルパーさんに下着を洗わせる。
パンツを、それも手洗いで。
「細かいところがうまく洗えないでしょ!」
と、手袋をせず素手で洗えとやかましく言われるらしいし。
いいえ、女性としてどうとかそんな話では全然なく、私がヘルパーでもそれが必要なことなら手でだろうと足でだろうと洗いますが、ベティさんはヘルパーが来ない日の下着は自分で手で洗うんです。普段は利用者が自分でもできることを、なぜヘルパーがいると全部やらせてしまうのか。
またどうしてヘルパーもホイホイとやってしまうのかが私にはわかりません。
担当者会議の席では「あれ(パンツの手洗い)って失礼よねえ」と言うくせに。

でも、私がこの認定調査が出来ないと思った最大の理由は、ベティさんが超被害妄想で、医療の情報の一切をくれないことです。ほうぼうの色んな病院にかかっていて、自分をまるで病気のデパートのように言われるのですが、薬はおろか既往も現疾患も教えてくれないし、やっと聞き出したのは主治医だけ。
意見書の閲覧も、主治医連絡票すらも拒否なんです。
だだでさえまだ関わって間もないペーペーの私が、しかも経過的要介護で短い距離なら走れるような元気な利用者を、どうやったら介護給付にできるのか。
しかもものすごい被害妄想と発展妄想の持ち主。
自分で置いてあったものの位置を自分で直し(しかも散らかった部屋で)、そのことを忘れてしまい、
「誰かに盗られたのかもしれない」
と妄想がむくむく出てきて、それがその日の夜には
「きっと誰かに盗られたに違いない」
となり、翌日には
「誰かが盗っていくところを見た」
に発展し、とうとう
「隣のアパートのババァは以前から私を恨んでいて、私が見ていないときにこっそり私の部屋に入って来て金目のものをじゃんじゃん盗っていく」
となってしまう。
そんなベティさんですから、もしも私がやった調査の結果が要支援だったり非該当だったりしたらと思うともー、ということで
「私はまだベティさんのことをよく知らないし、主治医の先生にもお話を伺うことができません。なので私にはベティさんを正当に調査できるかどうか自信がありません。ましてや今、認定調査の結果は全国的にとても厳しくなっていますし、私が調査票を出すと、非該当になってヘルパーさんが来られなくなるかもしれません。それでは困るでしょう?申し訳ないのですが、この認定調査は以前からベティさんのことをよく知っておられる区役所の方にお願いしてもいいでしょうか?」
といい続けてきたのでした。
当然ベティさんは私に「適当に(重く)書けばいいじゃないか」と迫りましたが、ごめんなさい、それは出来ませんと断りました。
私はベティさんが私を追いかけて走ってくるところも見ているし、私の前任者や同僚やヘルパーも、ベティさんが重い物を下げて歩いて買物から帰ってくるところを何度も目撃していますからと。
で、区役所員も信用できないし、病気のことは教えたくないしで悩んだベティさんは、ある日突然、到着した更新の通知と保険証を持って区役所に行ったそうなのですが.......................。

ベティさんは、区の職員から
「区役所に来ていただいても(居宅ではないので)区役所(この場)で認定調査をすることはありません。」
と言われたのを(あたりまえだ)
「区役所員は認定調査ができない」
と思い込み、結局区職員に説得されて担当ケアマネの私が認定調査をすることを承知したそうです(爆)。
私はその場からかかってきた電話で、区職員に事情を説明したのですが、
「そういうことですか、でもまあ、医療情報は本人同意が無ければ提供できませんし、ケアマネさんが見た普段の生活ぶりを調査されるより他ないじゃないですか。こちらのほうもベティさんにその点をちゃんと説明しときますから」
と言われ、仕方なく認定調査をしましたと。
1群1には両下肢麻痺をチェックして、特記に「短い距離なら走ることもでき日常生活に支障はない」と書き、1群2には本人の訴えた首の可動域制限を書いたけど、確か首って審査会ではハネられる項目らしいし、2群3群も「つかまればできる」しかないし、あとは7群のア.妄想とイ.作話を「ある」にチェックし…
その他はまったくの白紙同然です。
これで介護給付になったとしたら世の中間違ってるよ。

最近ホントに利用者が激減してて、青田主任からもグダグダ言われるし(スルーだけど)できることなら介護給付の予防への移行をくいとめて、包括さんともあまりお付き合いのないようにもしたい。
でも、やっぱりウソ・大袈裟はダメですよ。
こないだなんか私、細木さんから
「ハリケンさんの担当の○○○さん、ウチの近所の人だけどさ、介護ヘルパーと一緒に病院行ってるでしょ?でもあの人、ヘルパーの来ない日は自分で歩いて病院に行ってるじゃないの!どういうことかあんた説明してよ!」
と叱られてしまいました…。

介護保険はみんなが寄って集(たか)る、たったひとつの大きなドーナツ。
食べ尽くす日も遠くない。