語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】E・ケストナー「ホテルでの男性合唱」 ~人生処方詩集~

2015年11月01日 | 詩歌
 これはぼくの部屋であって しかもぼくの部屋じゃない
 ベッドが二つ 手をつないで立っている
 ベッドが二つだ 一つしかいらないのに
 だって ぼくはまたひとりになったんだから

 トランクがあくびしている ぼくも疲れた気がする
 きみは ずいぶんちがった男のとこへ走った
 ぼくはあの男をよく知っている ぼくはきみのために無事を祈るよ
 それから もうすこしで祈るとこだ きみがいつまでも着かないでくれたらと

 ぼくはきみを行かせるんじゃなかった
 (ぼくのためにじゃない ぼくはよろこんで独りでいる)
 しかしとにかく 女があやまちを犯したいときは
 はたで邪魔してはいけない

 世界はひろい きみはそのなかで迷子になるだろう
 ただねがわくは あんまり遠くに迷いこまぬように
 ぼくは 今夜はよっぱらって
 きみが幸福になるように いささか祈ろう

□エーリヒ・ケストナー(小松太郎・訳)「ホテルでの男性合唱」(『人生処方詩集』、岩波文庫、2014)
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 【参考】
【詩歌】E・ケストナー「絶望第一号」 ~人生処方詩集~
【詩歌】E・ケストナー「顔を交換する夢」 ~人生処方詩集~
【詩歌】戦争を礼賛する牧師 ~E・ケストナーによる諷刺~

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