語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】信頼関係の作り方 ~『人たらしの流儀』~

2018年01月02日 | ●佐藤優
(1)「文庫版 まえがき」(引用)
 <この本は実用書である。読者が生き残っていくために必要な知恵が満載されている。
 (中略)本書には、他人の心をつかむ、他人を自分の考えに同調させるといった「人たらしの流儀」が具体的にいくつも紹介されている。「人たらしの流儀」自体は、善でも悪でもない価値中立的なものだ。この流儀を前向きに、自分の出世のために使うこともできる。同時に閉塞的な社会状況においては、国家、会社、悪質手配師にだまされないようにするために、「人たらしの流儀」についてよく知ってほしい。>

(2)単行本の「まえがき」(要旨)
 福島第一原発事故に関連した東電幹部や原子力安全・保安院(現・原子力規制委員会)幹部が、記者会見(テレビ中継)でうろたえ、情報を何度も訂正する姿を見て、多くの国民が「これで大丈夫か」と不安を抱いた。
 彼ら、一流大学を卒業し、競争試験に勝ち抜いた日本の超エリートは、専門能力には長けているが、何か重要なものが足りない。胆力が足りないのだ。
 日本でエリートになるには、偏差値秀才になる必要がある。そのためには教科書に書いてある内容を正確に覚え(理解しなくてもいい)、それを筆記試験で1~2時間の制限時間内に再現させる能力をつければいい。むろん、こういう記憶力と復元力はエリートとして最低限、必要とされる能力だ。しかし、それだけでは十分ではない。信頼感、指導力、共感力などの数値化されない(筆記試験で測ることはできない)能力が真のエリートには必要とされる。
 偏差値エリートは、競争で勝つことに生きがいを感じるので、がむしゃらに働く。
  ①その結果、心身の健康を損ねて競争から脱落してしまう人も多い。
  ②競争に敗れると、やる気を完全に失ってしまい、無気力人間か、世の中をすべて斜めに見るひねくれ人間になる。
  ③競争に勝っても、仕事はできるが、他人の気持ちになって考えることが苦手、という誰からも好かれない人間になる(こういうタイプは官僚に多い)。
 こういう偏差値エリートは、「攻め」には強いが、「守り」に極端に弱い。その姿が、東電や原子力安全・保安院の幹部に端的に表れている。
 胆力は人間関係によってしか鍛えることはできない。本書は、そのための教科書である。

(3)インフォーメーション、インテリジェンス、インテレクチュアル ~「講義1」~
 15の「講義」の最初に、基本的な概念(インフォーメーション、インテリジェンス、インテレクチュアル)が定義される。
 (a)インフォーメーション・・・・そこら辺にある情報。
 (b)インテリジェンス・・・・インフォーメーションを拾うときに収拾選択が行われて、さらに選択されたインフォーメーションをどう見るかということで評価された情報。
 (c)インテレクチュアル・・・・教育で教える知識。

(4)人の話を聞く ~「講義2」~
 人脈をつくろうとして、自分が提供できるカード(情報)がない時、「教えてください」とお願いに行く。
 インテリジェンスの要諦は、相手の願望・欲望にどうやって付けいるかにある。だから、「人の話を聞く」という行為は、大切なインテリジェンスの一つだ。

(5)信頼関係を作るには ~「講義3」~
 人脈作りの最初は、まず昼食だ。奇抜な料理でなく、普通の料理のほうがよい。相手が女性の場合、複数で。「これは仕事だ」という雰囲気を強める。相手が値段を気にしないですむように、上から二番目の値段の料理にする。
 夕食は、かなり関係が進んでからだ。
 食事に行ったとき、仕事の話はしてはいけない。これがミソだ。信頼関係を構築するのが、出発点だ。だから、仕事以外の話ができないと、信頼関係は築けない。
 で、バカ話をする。相手が興味を惹きそうな話題の引き出しを幾つか用意しておく。<例>ベストセラーを読んでおく。

□佐藤優『人たらしの流儀』(PHP文庫、2013)
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