語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~

2017年07月05日 | 批評・思想
★パラグ・カンナ(尼丁千津子・訳)『「接続性」の地政学 グローバリズムの先にある世界(上下)』(原書房 各2,400円)
  
 (1)世界が注目した5月のフランス大統領選挙の最中、後に大統領に選出されるマクロン氏の言動が話題になった。工場の閉鎖に反対してピケを張る地元ウィルプール社の工場に赴き、
「隣のプロクター&ギャンブル社は9割を海外で売り上げて雇用を守っている。グローバル化からは誰も逃れない」
 と従業員に言ってのけたのである。

 (2)『「接続性」の地政学』が説くのは、このグローバルなサプライチェーンの有用性だ。南北アメリカ大陸、アジア、欧州、ユーラシア大陸をくまなく旅する著者は、各地の有形無形のつながりこそが、豊かさとチャンスがあらゆる階層に降りそそぐ、ということを博覧強記気味に多くの事例や地図でもって説得的に示していく。
 インフラ、情報、人、エネルギーなどあらゆる資源を得るには、最も遠くの地と最も摩擦を少なくできるかどうかに懸かっている。そこで優位になるのは、旧来の国民国家ではなく、資源を活用し、資本を招き、雇用を生み出すことができるシンガポールやドバイのような、世界とつながる都市である。グローバル化した世界では、国籍に頓着しない都市こそが勝者となるのだ。

 (3)このサプライチェーンは寸断できない。寸断すれば、中国がかつてレアメタル(希少金属)を禁輸した時のように、新たな供給源が開拓されて、さらに強固な結び付きが生まれてくるだけだからだ。
 ここから中国は学習した。つまり、中国は世界を「買う」のではなく、自国に資源を運ぶためにインフラ投資をして、世界秩序を組み直すようになっているのだ。
 この中国の投資と開発によって、今度はアフリカが豊かになり、それが新たな資源を生んでいく。
 思えば、中国自体、香港やマカオという租借地を通じて利益を得てきた。中国の進める「一帯一路」も、世界各地に同じようなSEZ(経済特区)をつくり、自らが資源を得ることを目指すものだ。

 (4)世界とつながることで、私たちは鼻先を引きずりまわされ、脆弱な立場に追いやられてしまうのではないか・・・・。
 大半の予想とは異なり、著者は、世界のあちら側とこちら側、富める者と貧しい者が依存し合うことで、お互いに責任を持つことになるはずだ、という。
 本書によれば、世界の幹線道路は6,400万キロメートル、インターネットの海底ケーブルは75万キロメートルに上る一方、国を隔てる国境は25万キロメートルに過ぎない。
 国境の壁を高くすること、すなわち接続を拒否する誘因の高まる時代に、私たちが誤った方向へ進まないための知恵がこの本には詰まっている。

□吉田徹(北海道大学大学院法学研究科教授)「否応なきグローバル化の中でつながることの有用性を考察 ~私の「イチオシ収穫本」~」(「週刊ダイヤモンド」2017年7月8日号)
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【南雲つぐみ】ゲリラ豪雨

2017年07月05日 | 医療・保健・福祉・介護
 ゲリラ豪雨というのはマスコミ用語で、気象庁では「集中豪雨」「局地的大雨」という言葉を使っている。湿度が高く、熱せられた地上の気温と上空5千メートル以上との湿度差が大きいことなどが発生の条件になっている。
 これは、昔からあった夕立が起こる条件でもある。しかし、最近は、アスファルトの照り返しによる地表付近の高温やエアコン、車の排気で、都市部では夏の気温が3度以上上昇したという。地上と上空との気温差がますます大きくなり、大気の状態が不安定になっていると考えられる。
 局地的な雨の予測は難しかったが、2014年に気象庁は、30分先までの降水を予測する「高解像渡降水ナウキャスト」を公開した。パソコンとスマートフォンの両方で、無料で見られる。
 ゲリラ豪雨が起こるときは、竜巻や雷も起こりやすいという。外出中などに黒い雲が近づき、周囲が暗くなって雷鳴があり、空気がひんやりしてきたら、早めに屋内に入ろう。竜巻の被害を防ぐためには、窓や雨戸を閉めるだけでなくカーテンも閉め、窓から離れたところにいるといい。

□南雲つぐみ(医学ライター)「ゲリラ豪雨 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年6月27日)を引用
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