「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの学習指導法:今年の開成中学入試問題「算数」

2016年02月04日 | 学習指導法



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 難関中学を含めた中学受験に合格するためには、合格者と不合格者の得点の乖離が最も大きい科目である算数で、しっかりと得点することが重要です。男子上位進学校の算数が、その中でも最も難しいと言われていますが、それでもフィギアスケートでトリプルアクセルを跳ぶ離れ業のような問題ではありません。

 トップ校の算数を解くためには、基本的な考え方をしっかりと理解して、それを様々な問題に応用できる「身に付いた知識」にまで高めておく必要があります。また、基本的計算力を駆使して、ミスなく解答を導き出す注意力が大切です。

 また最近では、頭脳に汗して書き並べていく、根気強さも要求されるようになりました。規則性を見つけ出す発想力も要求されています。

 では、今年のトップ校の入試問題を使って、その問題の出題意図を含め、受験対策に役立つ解説を、数回にわたり伝授したいと思います。ただし、取り上げる入試問題は、私なりの解き方で説明しますが、上位校の算数の解法は幾通りか考えられます。その一つの解き方を説明することになります。

 まずは、今日は私立中学の雄・開成中学の問題です。大きな問題が4題出題され、それぞれ小問3~4題で構成されています。問題1は、速さに関する問題。問題2は、割合に関する問題。問題3は、規則性の問題で、書き上げて考える問題。最後の問題4は、円に関する長さや面積を求める問題で、最後の4番目の小問の求積問題が、ちょっとした発想力が必要な問題となっています。

 それぞれの小問の内、最後の小問を除きさほど難しい問題ではありません。したがって、そうした問題を完全に正解することが必要ですが、100点をとる必要はないので、最後の小問を捨てても、しっかりと見直して正解する戦法もあります。算数を得点源にする受験生は、最後の小問も意欲的に解く必要があります。

【問題1】

 2つの地点X、Yを結ぶ道があります。A君はXからYへ向かって、B君はYからXへ向かって移動し、地図上の中間地点Mで出会うことにしました。地図には等高線が描かれていなかったため、B君は、図1のように2人とも水平な道を移動すると考えました。B君は、自分がA君より速く移動できること、おのおのがつねに同じ速さで移動することの2つをふまえて、A君が出発してから15分後に出発しました。これで、2人はちょうどMで出会うはずでした。
 ところが、実際には図2のような下り坂がありました。X%の下り坂では移動する速さがX%だけ増すことになります。ここで下り坂がX%であるときは、

X=(下向きに移動する長さ/横向きに移動する長さ)×100(実際の表記とは異なる)

のことを指します。それでも無事に、2人はちょうどMで出会いました。このとき、以下の問いに答えなさい。なお、3辺の長さの比が3:4:5や5:12:13となる直角三角形を利用してもかまいません。

(1)①A君がXを出発してからMでB君に出会うまでに、「実際にかかった時間」は、「事前にB君が想定していた時間」の何倍ですか。

(2)②B君がYを出発してからMでA君に出会うまでに、「実際にかかった時間」は、「事前にB君が想定していた時間」の何倍ですか。

(2)A君がXを出発してからMでB君に出会うまでに「実際にかかった時間」を求めなさい。

【解答・解説】

  グラフを見ると、道のりが平坦ならX地点とY地点から中間地点Mまで、16目盛りあります。A君が平坦な一目盛りを歩く時間を1と仮定します。すると、B君が想定したA君のMまでの到達時間は、16÷1=16ということになります。

 ところが実際のMまでの道のりは、下り坂が10と平坦な道が8でした。そこで、まず下り坂10の道のりを進む時間を計算します。

 下り坂で速さの増す割合は、下向きに移動する長さ/横向きに移動する長さ=6/8=3/4ですので、A君の下り坂の速さは、1+3/4=7/4となります。よって、A君のMまでの実際の時間は、10÷7/4+8=96/7となります。

 よって求める割合は、96/7÷16=6/7・・・①の答え、と出すことができます。

 B君もA君と同様に求めます。B君はA君よりも速いのですが、計算上B君の速さも一目盛り進む速さを1とすると、想定到達時間は16となります。実際の道のりは、下り坂13と平坦な道4となっています。

 条件に従い、下り坂で速さの増す割合を求めると、5÷12=5/12となります。よってB君の下りの速さは、1+5/12=17/12となります。この数値を使い、下り坂13と平坦な道4の実際の時間は、13÷17/12+4÷1=224/17となります。

 よって求める割合は、224/17÷16=14/17・・・②の答え

さて、ここまでは順調に解けましたか?計算ミスしなければ、さほど難しい問題ではありません。最後の問題が解けるかどうか。

そこで、ここまで出て来た条件を整理しましょう。

A君の想定していた時間をA(分)と表し、B君の想定していた時間をB(分)と表すと、次のような文字式で整理することができます。上位校を目指す場合、小学生でも「条件を文字式で整理」することは大切です。(求めるA君の「実際にかかった時間」をAとして、式をたてることはできません。)

   A-B=15(分)・・・初めの想定時間差
   A×6/7-B×14/17=15(分)・・・実際も時間差は同じだった

この消去算の式を解くことにより、A君とB君の想定した時間を求めることができます。

 この文字式を解くことを、小学生では「消去算」と呼びますが、中学生では「連立二元一次方程式」となります。そこで、公立中学1年で学習する一元一次方程式と、中学2年の連立方程式は、解けるようにしておくことが必要です。

 この式を計算すると、A=315/4  (B=255/4)と出ます。

 よって求める「A君が実際にかかった時間」は、①で出した割合を利用して、315/4×6/7=135/2(分)と出すことができました。よって、1時間7分30秒・・・(2)の答え

 四谷大塚の予習シリーズでは、割合のつるかめ算などというピンとのずれたタイトルで指導していますが、「消去算」として教えた方が妥当な問題です。

 開成中学算数の入試問題でも、小問3題中、2題が比較的解き易い問題で構成されています。合格するためには、その2題を落とさない学習が必要でしょう。このシリーズでは、トップ校の算数を取り上げ、日ごろの学習法を伝授します。

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