昔乙女，今は……

 おばさんは声が大きい。正確に言うと，おばさんの一部には声の大きい人もいるということになるが，印象としては，おばさんは声が大きい，である。
  土曜日に福岡に行った。熊本までは空席の方が多かったが，熊本で満員になった。途端に，後ろの方から大きな声で喋るおばさんの声が車内に響き渡った。「秋の行楽シーズンはおばさんが多いなー」と思った。
　新幹線を降り，改札口を抜けると後方から女性の大きな声が聞こえてきた。振り向くと十メートルほど後方で，二人のおばさんが大きな声で喋っていた。元気なのはいいが，それほど大き声を出さなくても十分聞こえるだろうに。あの大きな声は一体誰に向かって何をアピールしているのか……
　翌日曜日，研修会場に向かって友人と歩いていると，十数数メートル先の歩道を颯爽と歩いていた女性が，いきなり腰をかがめたかと思うと，道に落ちていた空き缶を素速く拾った。どうするのかと，友人と話をしながらその女性の後ろ姿を何気なく見ていると，道の反対側に渡り，自動販売機の横に備え付けていた缶入れのに拾った空き缶を素速く放り込んだ。この間，わずか数分間である。思わず「格好いい」と心の中でつぶやいた。
　翌月曜日，昼食に家に帰ると妻が，電話を片手に部屋中に響き渡る大きな声で喋っていた。ここは工事現場か。