WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

「安息の地を求めて」

2010年03月29日 | 今日の一枚(E-F)

●今日の一枚 243●

Eric Clapton

There's one In Every Crowd

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 ご無沙汰しています。

 ほぼ、一年ぶりの更新である。一年間も更新を怠っていた理由はいずれ書き記すこともあるだろう。

 さて、しばらくぶりの今日の一枚は、エリック・クラプトンが1975年にリリースしたアルバム、『安息の地を求めて』である。かつての私の愛聴版のひとつである。

 最近、車を買いかえたのだが、その車につけたカーナビゲイションシステムにHDDオーディオ機能というのがあった。CDなどの音源をカーステレオのHDDに貯蔵しておけるというものである。例によってジャズ系のものを何枚か入れてみたわけであるが、ふと、車で聴く音楽には古いロックもいいのではないかと思い立ち、その作業をはじめてみた。いくつかのアルバムをHDDにいれてみて、久しく聴いていなかったこのアルバムを思い起こした。若いころ、文字通りレコード盤が擦り切れるほど聞いたアルバムである。レコードは所有しているが、HDDに入れるにはCDが必要ということで、早速購入してみた次第である。

 やはり、レコードとはどこかサウンドのニュアンスが違う気がするが、一聴して、「ああ、やっぱり、私はこのアルバムが好きなのだ」と思った。思わず顔がほころんでくるのが自分でもわかる。小気味よいレゲエのリズムと歌心溢れるヴォーカル&コーラス、そして何よりチープな感じのギターをフューチャーしたサウンドが好ましい。全編に寛いだ、レイドバックした空気が流れ、文字通り音を楽しむようなヴォーカルとコーラスの、またそれぞれの楽器の掛け合いがたまらなくいい。そして、中盤の⑦ Make It Through Today の静けさ……、身体の細胞の振動と共鳴するかのようなゆったりとした世界は、根源的な安らぎといってもいいほどだ。

 ロック史上の大名盤とはいえないだろうが、間違いなく私のフェイバリット・アルバムのひとつであり、音楽を聴くことの喜びを教えてくれる一枚だ。HMVのウェブのレビューにある藤沢の「サンボボ」さんの「若いときはどうしても461ばかり聴いていたけど年齢を重ねたいまはこのアルバムを支配する空気感がたまりません。これもまた名盤です。」との言葉がこのアルバムの核心を語っているように思う。