WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

昼と夜のバド・シャンク

2006年09月12日 | 今日の一枚(A-B)

●今日の一枚 46●

Bud Shank    

Bud Shank - Shorty Rogers - Bill Perkins

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 典型的なウエスト・コースト・ジャズの第一人者、バド・シャンクの1950年代半ばの作品、通称「昼と夜のバド・シャンク」だ。正式名称は『バド・シャンク・クインテッツ』というのだそうだが、ジャケットのどこにもそうは書いていない。前半と後半でパーソネルが異なり、ジャケット写真も表と裏に昼と夜の同風景の写真を使っていることから、そう呼ばれているらしい。

 軽快なリズムにのって日本人好みの哀感を帯びた旋律が繰り広げられる。単純に気分が良い。音が内省的で深みがあるとか、鬼気迫るソロとかがあるわけではないが、どこまでも軽快でよどみなく流れる音の連なりが、ただただ気分が良い。

 気分が良いとは大切な感覚である。村上龍はかつて、ポップスについて述べたあるエッセイで次のように語った。

 「喉が乾いた、ビールを飲む、うまい」「横に女がいる、きれいだ、やりたい」「すてきなワンピース、買った、うれしい」。それらのシンプルなことがポップスの本質である。そしてポップスは、人間の苦悩とか思想よりも、つまり「生きる目的は?」とか「私は誰?、ここはどこ?」よりも、大切な感覚について表現されるものだ。