うら壁やしがみ付(つき)たる貧乏(びんぼ)雪
うら住や五尺の空も春のてふ
売家につんと立たる冬木かな
売飯に夕木がらしのかかりけり
うろたへな寒くなる迚(とて)赤蜻蛉
梅咲て一際人の古びけり
梅咲て身のおろかさの同(おなじ)也
梅咲くやあはれことしももらひ餅
梅咲や信濃の奥も草履道
梅咲やしやうじに猫の影法師
梅さけど鶯なけどひとり哉
梅がゝに障子ひらけば月夜哉
梅がゝに引くるまりて寝たりけり
梅がゝやどなたが来ても欠茶碗
梅がゝや針穴(はりあな)すかす明り先
梅が香をすすり込だる菜汁哉
うまさうな雪がふうはりふはり哉
馬の草喰ふ音してとぶ蛍
馬の子の故郷(こきやう)はなるゝ秋の雨
馬迄もはたご泊りや春の雨
海見えて一汗(ひとあせ)入(いれ)る木陰哉