【PMA 2005】Kiss Digital Nでキヤノンが狙うもの~キヤノン 岩下副事業本部長インタビュー
デジタルカメラに関しての、キヤノンへのインタビュー記事。
キヤノンの考え方が分かって参考になる記事だ。ユーザから見ても、キヤノンの戦略は正当だと思う。
キヤノンの考え方をインタビューから拾ってみたい。
「デジタル製品は時間と共に猛烈に進化するものです。これは銀塩時代との大きな違いでしょう。」
その通りだ。銀塩一眼レフから来ている方にはこの部分を分かっていない方がいるように見えるが、キヤノンが実状を正しく把握しているのはよいことだ。
「またKiss Digitalが発売前にやや10Dの買い控え感がありながら、発売後はまた10Dの売り上げが回復した経験」
これは、KissD の機能制限があまりに大きかったためだろうと考えられる。今回、KissD N を購入しようとして 20D を購入する人がいるかどうか。KissDと10Dの関係ほどではないように思う。
「Kiss D Nに関しては100%が大分工場で製造」
なかなかすごい。国内で100%生産とは。
「キヤノンのレンズはEFマウントが基本です。EF-Sマウントのレンズは、1.6倍焦点距離では不便になってしまう焦点域のレンズをピンポイントで提供していきます」
キヤノンとしては正しい選択だと思う。
「カメラがデジタル化すると、ソフトウェアと若干の仕様変更で、様々な特定用途のカメラにカスタマイズ出来ますから」
このデジタル化の時代、デジタルならではの工夫をしたところが勝っていくとわたしは思っている。ただアナログだったシステムをデジタルに置き換えただけではダメだ。デジタルにしたことによる付加価値を最初につけて、他社と比較して機能的に優位に立たねばならない。このキヤノンのコメントはまさにデジタルならではだ。
デジカメやビデオカメラといったアナログからデジタルに置き換わったような分野では、この点を考えていかねばならない。
「私は2つの仮説を持っており」
「銀塩一眼レフカメラはコンパクトカメラ市場の10%程度のサイズ・・・・・(デジタル一眼レフは)まだまだ市場拡大の余地はあるだろうと捉えています」
「(コンパクトカメラとの)2年の時間差を考えるとデジタル一眼レフカメラにブレーキがかかるのは、まだ2年ぐらい先の事です」
なるほど、というのが前者。
後者は、おもしいろい。ではなぜコンパクトカメラと2年の時間差があるのか。これは、デジタル一眼レフの技術的な難しさと成熟度にあるのだと思う。
デジタル一眼レフは KissD の発売とともに普及を始め、そして競争が激化した。ブレーキがかかるのは、競争により技術が急速に進み、各社の機能的な差異が小さくなり、特徴を出せなくなり、結果として各社が価格とデザインなどで勝負をせざるを得なくなるような時期だ。その時期になると、今のモデルと1年前とのモデルとの差もそれほどなくなり、まぁ旧モデルでもいいや、ということになってくる。
電子機器で言えば、コンパクトデジカメや携帯電話がその状態になっている。HDD/DVDレコーダもHDD容量くらいしか進歩が無くなってきている。デジタルビデオカメラも無駄に静止画素数を追い求めるしか過去のモデルとの差がない。パソコンも、キャプチャや大きな画像処理(RAWとか)程度しか性能を要求するアプリケーションが無いので、同様の状態に陥っている。
では一眼レフデジカメはどうかと言うと、まだまだ技術的に発展途上だ。それは、10D と 20D、KissD と KissD N を比較すれば一目瞭然だろう。そんな製品は買ってみるとかなり泣けるが、見ている分にはおもしろい。
キヤノンの予想は、そのような技術革新が2年も経つと落ち着く、という意味に取れる。
そんな中で重要なのは、発展途上の時期においては技術的に他社に優れたものを開発して消費者に対しての印象を強くし、ブレーキがかかった時期においてはそれまでに蓄積したブランド力で消費者に選んでもらうとともに、デザイン・価格だけではなく、そんな時期だからこそ他社に無い機能を盛り込んでいかねばならない。キヤノンはこの発展途上の時期にシェアを確保して次に続けようとしている訳だ。競合ひしめく中でそれができるキヤノンはすごいと思う。
これから、いつのモデルを買えばいいのかと考えてみる。例えば今 KissD N を購入し、2年ほどあとにフラグシップモデルを購入して使い続ける、というのがありそうだ。
しかしわたしの場合はお金がないので、もうしばらく KissD を使い続けることになりそうだ。うまいこと、成熟した段階でよい製品を買いたい。