ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

イケメンかどうかで、生涯賃金に差が出る!?

2011-08-18 21:07:36 | 社会
男は四十を越したら、自分の顔に責任を持て、とはよく言われることですが、この箴言のルーツは、あのリンカーン元大統領なのだそうです。

“It is said that Abraham Lincoln, when he was President of the U.S., was advised to include a certain man in his cabinet. When he refused, he was asked why he would not accept him. "I don't like his face," the President replied. "But the poor man isn't responsible for his face," responded his advocate. "Every man over forty is responsible for his face" countered Lincoln.”
(蛇足ながら):「以下のようなことが伝えられている。アブラハム・リンカーンが大統領だった時、ある男を政権内に入れるよう助言されたが、リンカーン大統領は断った。なぜかと問われて、顔が気に入らなかったからだと答えた。でも顔は彼のせいではない、と食い下がられて、男は40を過ぎたらその顔に責任をもつものだ、と反論した。」

40歳を過ぎれば、生まれつきの顔がどうであれ、それまでの人生がその顔に凝縮され、美男かどうかではなく、いい顔かどうかが問われるようになる・・・どれほど慰められたか分かりませんが、実は、生まれつきの容貌がその人の収入に影響しているという調査結果がアメリカで公表されました。公表されてしまったのです! Oh my God ! Mon Dieu !

どのような調査結果になっているのでしょうか。恐る恐る、16日の『ル・モンド』(電子版)を読んでみましょう。

貧しく病弱であるよりは、裕福で健康な方がいい。その通りだ。しかし、容貌が良ければ収入が増えるということを、厳密に経済上の観点から研究した人はいなかった。

それが、現れたのだ。テキサス大学オースティン校の経済学教授、ダニエル・ハマーメッシュ(Daniel Hamermesh)がその人だ。最近、“La beauté paie. Pourquoi les gens beaux ont plus de succès”(美しさは報いる。なぜ美しい人はより成功をするのか)というタイトルで、その研究成果を公表した。20年来、取り付かれたようにこのテーマに取り組んできたそうだ。

その著書はプリンストン大学出版(Princeton University Press)から出されたもので、男性であれ女性であれ、アメリカの勤労者のうち最も魅力的な容姿をした人たちは平凡な容姿をしたグループより生涯賃金で平均23万ドル(約1,750万円)も多く稼いでいると、語っている。

もちろん美醜のクラス分けはいたって主観的なものだが、ハマーメッシュ教授によれば、5段階にクラス分けをしてもらうとあまり個人差が出ないことが分かった。2,774人をその容姿から魅力的とは言えないクラス“1”から理想的な美しさだというクラス“5”までに分類してもらったそうだ。

すると、男性の1%、女性の2%がまったく魅力を感じないと判断され、男性の11%、女性の13%が平凡だ、男性の59%、女性の51%が平均的、男性の27%、女性の31%が魅力的、男性の2%、女性の3%だけがかなり魅力的だと判断されたそうだ。

クラス4あるいは5に分類されたイケメンは1や2に分類された男性よりも17%多い収入を得ている。同じように女性の場合は、12%だけ収入が多くなっている。17%と12%の差は、多くの人が、美しさは女性の問題だが、収入は男性の問題だと考えているからではないかと、ハマーメッシュ教授は“Time ”(タイム誌)8月22日号のインタビューで答えている(女性はきれいだ、で止まってしまい、収入に直結しにくく、一方、男性の場合はハンサムかどうかが収入に反映されやすいということのようです)。

ほっとさせてくれるのは、人種や皮膚の色による明確な差が調査結果には現れなかったことだ。

購買力を改善する究極の手段として美容整形に頼ることについては、ハマーメッシュ教授はまったく勧めようとはしない。「美容整形しても、あまり収入を向上させることはできない。それより、自分の長所をさらに伸ばすことだ」と語っている。実際、アメリカの勤労者の収入はその人が本来持っている善良さを反映する傾向も強い。

最近発表された韓国での調査結果も、このことを証明している。容姿を良くしようとして美容整形にお金を使っても、元を取れるだけの収入のアップにはつながっていない、ということだ。

では、ハマーメッシュ教授自身は、どのクラスに分類されるのだろうか。教授は、控え目にクラス“3”だと語っている。平均的な多数派に属していることになる。もし教授がよりハンサムだったら、その著書ももっと売れたことだろうに・・・

・・・ということで、アメリカでは容姿が収入に影響を与えているそうです。

しかし、実はこの調査結果、昨年公表されていたようで、“Newsweek”誌2010年9月9日号(電子版)が、次のように伝えていました。

「ほとんどの場合、美男美女のほうが容姿の劣る男女より好ましい結果を手にするというのは、経済学の世界で昔から指摘されていたことだ。ハンサムな男性はそうでない男性に比べて、収入が平均5%高い。美しい女性は、収入が平均4%高い。容姿のいい男女は先生や上司に目をかけてもらいやすい。赤ん坊でさえ、美しい人を長く見詰めることが知られている。
 アメリカの景気がもっとよく、(美容整形でセクシーボディーを作ったパリス・ヒルトンではなく)化粧っ気のないモデルのケイト・モスが美のシンボルだった20年ほど前なら、この種の統計は皮相的なものと切り捨てられたかもしれない。
 しかし2010年のアメリカでは、美容整形で肉感的な唇を手にしたハイディ・モンタグが雑誌のグラビアを飾り、少女たちの憧れの視線の先にあるのは、雑誌の中のモデルたちの(写真修整済みの)完璧ボディーだ。私たちが昔よりも、美を基準に人間を評価するようになったことを示す調査結果はいくつもある。特に職場では、実力や実績より容姿がものをいう場合が多いようだ。
 テキサス大学オースティン校のダニエル・ハマーメッシュ教授(経済学)の調査によれば、ハンサムな男性はそうでない男性に比べて、生涯を通じて得る収入が25万ドルも多い。全米形成外科学会によると、仕事で有利になるのであれば美容整形を検討したいという女性は全体の13%に上る(本誌の最近の調査によれば、男性も10%が同様の考えを持っている)。」

情報が大西洋を渡るのに1年近くもかからないでしょうから、本となって出版されたのが最近なのかもしれませんね。また、増える収入、23万ドルと25万ドルという違いがありますが、『ル・モンド』はよく細かい数字を間違えますから・・・

ところで、日本では、どうでしょうか。容姿が採用などに大きな影響を与えているのでしょうか。

日本では、美人美男かどうかよりも、「いい顔」かどうかにウエートが置かれているような気がします。CGで造られたような美しい顔ではなく、人間味を感じさせる「いい顔」。それこそ、40過ぎたら、の世界ですね。日本では、造形美よりも、にじみ出てくる人間性が大切にされる。確かに、人に可愛がられる顔って、ありますね。採用時だけでなく、その後のサラリーマン人生においても、上司や顧客から可愛がられる容姿って、確かにあります。でも、もって生まれた姿形や性格もありますし。どこまでが本人の責任なのか・・・

また、採用試験を受けることが多い20歳前後で、どこまで人間味が顔に出ているものなのでしょうか。いや、一部とはいえ、にじみ出て来ている人間性を見抜くのが、採用担当者の眼力だ、ということなのかもしれませんね。難しいものです。とても人事担当者は務まりそうにありません。
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