ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

マドモアゼルが消える。パリジェンヌは残る。

2012-02-25 21:38:39 | 社会
Vienne la nuit sonne l’heure
Les jours s’en vont je demeure

ご存知、アポリネール(Guillaume Apollinaire)の『ミラボー橋』(Le pont Mirabeau)の一節ですが、この詩に倣って言えば、

男性中心主義の時代よ暮れよ、女性の時代の鐘よ鳴れ。
「マドモアゼル」は過ぎ去り、「パリジェンヌ」は残る

と言ったところでしょうか、ずいぶんと字余りですが。

そうです、フランスの行政書類から“Mademoiselle”が消えることになりました。英語では、かなり前、25年前か30年前頃に、“Miss”と“Mrs.”の別がなくなり、“Ms.”に統一されましたが、“machisme”の強いフランスでは、“Mademoiselle”と“Madame”の使い分けが執拗に続いてきました。しかし、時代の流れに抗することは、さすがのフランス男にも難しいのか、今年から行政上の書類では未婚・既婚の別なく“Madame”に統一されることになりました。

ついでに名詞の男性形、女性形もなくなってくれれば、フランス語の勉強がどれほど楽になることか、と思いますが、それではフランス語でなくなってしまうというご批判も受けそうで・・・それに、英語にしても“Mr.”と“Ms.”という敬称の男女差はあり、フランス語にも“Monsieur”と“Madame”という差があっても特に問題とはならないのでしょう。その点、「さん」、「様」など敬称に男女の別がない日本語は、実は進んだ男女同権社会なのではないか・・・などと言えば、何を寝ぼけていると、これまたお叱りを受けそうです。

というわけで、今後も“Monsieur”と“Madame”や“Parisien”と“Parisienne”は引き続き存在します。そして、消えゆく“Mademoiselle”・・・詳しくは21日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

“Les mademoiselles”は、生きてきた。しかし、旧姓や配偶者の姓と同様に、この「マドモアゼル」という言葉は、行政書類から消え去ることになると、21日の首相通達が述べている。「以前にも、いくつかの通達が未婚か既婚かを示す呼称の使用を止めるよう役所に呼びかけていた」ことを再確認した上で、「今回の首相通達は法改正が行われるまで継続して実施される」ことを強調している。

首相府は関係閣僚と知事たちを集め、行政上の文書や通達からできる限り“mademoiselle”(未婚女性)や“nom de jeune fille”(旧姓)、“nom patronymique”(父の名)、“nom d’ épouse”・“nom d’époux”(配偶者の姓)という言葉を削除するよう指示をした。その内“mademoiselle”は、未婚・既婚に関わりなく男性に付けられる敬称“monsieur”と同じように“madame”という敬称に、それ以外も、2002年から民法で規定している“nom de famille”(家族の姓)、そして“nom d’usage”(通称名)に取って代わられることになる。特に「配偶者の姓」では、配偶者に先立たれた寡婦や離婚してもそれ以前の配偶者の姓を名乗っている人たちを考慮に入れることができないためだ。

また通達は、“madame”や“mademoiselle”は戸籍に記載されることはなく、他の敬称を法律や規則が求めることもないと述べている。なお、すでに印刷されている書類はストックがなくなるまでは使用することができると明記してある。

昨年9月、性差別と戦う二つの団体、“Osez le féminisme”(2009年に設立)と“les Chiennes de garde”(1999年から活動を始め、略語CGDで一般的に知られています)は、公的書類から“mademoiselle”の欄を削除するよう訴えるキャンペーンを行った。“mademoiselle”は女性に対する差別であり、婚姻状況について語ることを余儀なくさせていると、二団体は説明している。

11月、連帯大臣で女性の権利担当でもあるロズリーヌ・バシュロ(Roselyne Bachelot)は、フィヨン(François Fillon)首相に“mademoiselle”という語を削除するよう頼んだことを明かしている。21日、バシュロ連帯相は、男女差別の一つのカタチの終焉を示す通達を歓迎した。その喜びを示すコミュニケで大臣は、家族手当基金(la Caisse nationale des allocations familiales)から家族の姓と通称名を混同しないように受給者に連絡が入ることを紹介している。

21日に公開した談話で、上記の二団体は今回の首相通達を歓迎し、具体的な成果を示すよう求めている。二団体はまた、企業や民間団体もすべての書類から「マドモアゼル」という語を削除する運動に加わるよう強く勧めている。

・・・ということで、“mademoiselle”が少なくとも公式文書から消えて、女性はすべて“madame”に。こうした措置が一般化すれば、微妙な年齢の女性に、「マダム」と呼びかけようか、「マドモアゼル」と言おうか、悩む必要がなくなります。個人的には、女性差別がまた一つなくなるとういう大義以上に、瑣末な点で大歓迎です。

ところで、敬称と言えば、中国語。男性には「先生」、女性には「小姐」。未婚、既婚の別なく、このような敬称を付けますが、少なくとも10年や15年くらい前までは、中国人から「先生」と呼ばれて、嬉しさのあまりすべての警戒を解いてしまう日本人ビジネスマンや観光客が多くいました。最近でもいるのでしょうか。単なる敬称、「さん」と同じなのですが・・・同じ漢字文化圏でありながら、微妙な違いがある東アジアの国々。それだけに、違いをしっかりと理解したうえで、付き合いたいものです。

その点、ユーラシア大陸の西の端の国々とは、違うことが当たり前と思われていますから、違いをことさら強調することもないのですが、遠いだけに憧れが見る目を曇らせてしまうこともあり、この点は注意ですね。
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