年末ともなれば、さまざまなメディアが今年の顔を選定して、公表していますね。有名なところでは、『タイム』誌が選ぶ“Person of The Year”。2010年の顔は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス・サイト“Facebook”の創設者にしてCEOのザッカーバーグ氏。弱冠26歳ですが、『フォーブス』誌の選定する「世界で最も若い10人の億万長者」の一人に選ばれるほどのビリオネアー(billionaire)。ここ数年、“Facebook”の文字がメディアに踊らない日はないくらいですから、まあ順当なところなのでしょうが・・・
目を日本に転じると、オリコン(oricon style)が芸能人・スポーツ選手を対象に選ぶ今年の顔があり、2010年は福山雅治。やはり『龍馬伝』の好演もありましたし、その影響か、特に秋以降、多くのCMで見かけますね。顔ではないですが、今年の漢字は、「暑」。(財)日本漢字能力検定協会の選定ですね。確かに、猛暑でした。心を熱くしたものも、サッカー・ワールドカップや冬季オリンピックなどのスポーツを中心に、日本人のノーベル賞受賞など色々ありましたからね。でも、経済・景気はなかなか熱くならないですね。困ったものです。
さて、フランスのメディアは今年の顔に誰を選ぶのか・・・『ル・モンド』が公表しました。クリスマス・プレゼントじゃないでしょうが、24日の発表。
“Le Monde”の選ぶ2010年、今年の顔は・・・Julian Assange ! 『タイム』誌がたぶん敢えて選ばなかった内部告発サイト“WikiLeaks”の共同創設者、ジュリアン・アサンジ氏です。『タイム』誌でも読者投票部門ではパーソン・オブ・ザ・イヤーの1位に選ばれています。それだけ、世界的に大きな衝撃を与えたということなのでしょうね。アメリカにとっては、大きな悪影響だったのでしょうが。
24日の『ル・モンド』(電子版)は今年の顔(homme de l’année)に選んだアサンジ氏の横顔を簡略に紹介しています。広く知られていることも多いのですが、フランス・メディアがどのように記しているか、ちょっとご紹介しましょう。
背は大きく、痩せ形、そしてエレガントな雰囲気をまとう「ウィキリークス」の創設者であり代表であるジュリアン・アサンジは、相手にすこぶる話術のうまい人物であるという印象を与える。低くよく通る声で、正確さ、ユーモア、情緒、皮肉、こうしたニュアンスを見事に操ることができる。彼の仕事ぶりを見れば、彼が知能指数が高く、素晴らしいパフォーマンスを行うことができることが分かる。ひとたびプロジェクトに着手するや、全身全霊で取り組み、昼夜を分かたず、疲労困憊するまで突き進む。
仕事は何かと問われれば、その答えは長いが至って正確だ。活動家でジャーナリスト、そして、人権擁護に携わる人々を保護するための情報の暗号化を専門とするプログラマーである、という答えが返ってくる。内部告発サイトである「ウィキリークス」は、自己紹介にあるようにいくつかの分野での才能が絶妙に混じり合ったユニークな人物によって始められたわけだが、この人物の人生もまた常識の埒外にある。
1971年にオーストラリアの小さな町で生まれたが、子ども時代は国中を絶えず移動する母親に連れられ、移動に次ぐ移動の非定住生活を送った。成長するに従い、情報ネットワークに興味を持ち、やがてハッカーとなる。そしてネット上での表現の自由を守る活動家となる。活動に熱中するあまり、あまりにも危険を冒し、ついには逮捕され取り調べを受けることになるが、罰金を支払い窮地を切り抜ける。
プライベート面も、波乱に富んでいる。18歳にして所帯を持ち、一人の子どもをもうけるが、すぐに別れてしまう。その後、長期にわたる親権闘争を繰り広げたが、その戦いはやがて国の社会サービスに対する「十字軍」となった。
プライベートの波乱にもかかわらず、数学と物理を学び始めるが、やはり情報工学へと戻っていく。その後はプログラマーとなり、オーストラリアで最初のネット・プロバイダーのひとつを立ち上げる。また、この当時、世界中を旅してまわり、言論の自由のない国が多いことにショックを受ける。そうした体験から、情報の完全な透明化こそ圧政と戦う最も効率的な手段だと確信するようになる。
2006年に「ウィキリークス」を創設。これは、暗号化によって内部情報を提供する人たちがあくまで匿名のままでいられる、内部告発者にとって安全なサイトだ。創設後すぐに、彼の周りにはちょっと世間の規範からずれた人たちやボランティアのジャーナリストたちが集って来た。
2007年初頭、「ウィキリークス」が情報を公表し始めた。するとすぐに、思ってもいなかったほどの世界的な話題となり、彼の人生も大きく変化することになる。つねに世界を飛び回る生活となり、メディアの寵児となった。そして2010年、アメリカの軍事外交機密を暴露するに及んで、彼の戦いはさらに大規模なものになった。世界の覇権国家を攻撃することにより、彼の人生はより波瀾に富んだものへと変わってきた・・・
ということで、『ル・モンド』によれば、言論の自由を実現し守ることが、「ウィキリークス」の機密情報の暴露という活動の背景にある哲学だということですね。特定の個人に被害が及ばないよう、事前のチェックで固有名詞などは削除しているようですが、国家にとっては大きな問題となる情報も多い。国益か、普遍的な知る権利か。国家とは、個人の権利とは、自由とは・・・考えさせられることがたくさんあります。単なるキワモノ、変人の起こした突拍子もない事件で済ませられない大きな問題提起になっているのではないでしょうか。
目を日本に転じると、オリコン(oricon style)が芸能人・スポーツ選手を対象に選ぶ今年の顔があり、2010年は福山雅治。やはり『龍馬伝』の好演もありましたし、その影響か、特に秋以降、多くのCMで見かけますね。顔ではないですが、今年の漢字は、「暑」。(財)日本漢字能力検定協会の選定ですね。確かに、猛暑でした。心を熱くしたものも、サッカー・ワールドカップや冬季オリンピックなどのスポーツを中心に、日本人のノーベル賞受賞など色々ありましたからね。でも、経済・景気はなかなか熱くならないですね。困ったものです。
さて、フランスのメディアは今年の顔に誰を選ぶのか・・・『ル・モンド』が公表しました。クリスマス・プレゼントじゃないでしょうが、24日の発表。
“Le Monde”の選ぶ2010年、今年の顔は・・・Julian Assange ! 『タイム』誌がたぶん敢えて選ばなかった内部告発サイト“WikiLeaks”の共同創設者、ジュリアン・アサンジ氏です。『タイム』誌でも読者投票部門ではパーソン・オブ・ザ・イヤーの1位に選ばれています。それだけ、世界的に大きな衝撃を与えたということなのでしょうね。アメリカにとっては、大きな悪影響だったのでしょうが。
24日の『ル・モンド』(電子版)は今年の顔(homme de l’année)に選んだアサンジ氏の横顔を簡略に紹介しています。広く知られていることも多いのですが、フランス・メディアがどのように記しているか、ちょっとご紹介しましょう。
背は大きく、痩せ形、そしてエレガントな雰囲気をまとう「ウィキリークス」の創設者であり代表であるジュリアン・アサンジは、相手にすこぶる話術のうまい人物であるという印象を与える。低くよく通る声で、正確さ、ユーモア、情緒、皮肉、こうしたニュアンスを見事に操ることができる。彼の仕事ぶりを見れば、彼が知能指数が高く、素晴らしいパフォーマンスを行うことができることが分かる。ひとたびプロジェクトに着手するや、全身全霊で取り組み、昼夜を分かたず、疲労困憊するまで突き進む。
仕事は何かと問われれば、その答えは長いが至って正確だ。活動家でジャーナリスト、そして、人権擁護に携わる人々を保護するための情報の暗号化を専門とするプログラマーである、という答えが返ってくる。内部告発サイトである「ウィキリークス」は、自己紹介にあるようにいくつかの分野での才能が絶妙に混じり合ったユニークな人物によって始められたわけだが、この人物の人生もまた常識の埒外にある。
1971年にオーストラリアの小さな町で生まれたが、子ども時代は国中を絶えず移動する母親に連れられ、移動に次ぐ移動の非定住生活を送った。成長するに従い、情報ネットワークに興味を持ち、やがてハッカーとなる。そしてネット上での表現の自由を守る活動家となる。活動に熱中するあまり、あまりにも危険を冒し、ついには逮捕され取り調べを受けることになるが、罰金を支払い窮地を切り抜ける。
プライベート面も、波乱に富んでいる。18歳にして所帯を持ち、一人の子どもをもうけるが、すぐに別れてしまう。その後、長期にわたる親権闘争を繰り広げたが、その戦いはやがて国の社会サービスに対する「十字軍」となった。
プライベートの波乱にもかかわらず、数学と物理を学び始めるが、やはり情報工学へと戻っていく。その後はプログラマーとなり、オーストラリアで最初のネット・プロバイダーのひとつを立ち上げる。また、この当時、世界中を旅してまわり、言論の自由のない国が多いことにショックを受ける。そうした体験から、情報の完全な透明化こそ圧政と戦う最も効率的な手段だと確信するようになる。
2006年に「ウィキリークス」を創設。これは、暗号化によって内部情報を提供する人たちがあくまで匿名のままでいられる、内部告発者にとって安全なサイトだ。創設後すぐに、彼の周りにはちょっと世間の規範からずれた人たちやボランティアのジャーナリストたちが集って来た。
2007年初頭、「ウィキリークス」が情報を公表し始めた。するとすぐに、思ってもいなかったほどの世界的な話題となり、彼の人生も大きく変化することになる。つねに世界を飛び回る生活となり、メディアの寵児となった。そして2010年、アメリカの軍事外交機密を暴露するに及んで、彼の戦いはさらに大規模なものになった。世界の覇権国家を攻撃することにより、彼の人生はより波瀾に富んだものへと変わってきた・・・
ということで、『ル・モンド』によれば、言論の自由を実現し守ることが、「ウィキリークス」の機密情報の暴露という活動の背景にある哲学だということですね。特定の個人に被害が及ばないよう、事前のチェックで固有名詞などは削除しているようですが、国家にとっては大きな問題となる情報も多い。国益か、普遍的な知る権利か。国家とは、個人の権利とは、自由とは・・・考えさせられることがたくさんあります。単なるキワモノ、変人の起こした突拍子もない事件で済ませられない大きな問題提起になっているのではないでしょうか。