髭を剃るとT字カミソリに詰まる 「髭人ブログ」

「口の周りに毛が生える」という呪いを受けたオッサンがファミコンレビューやら小説やら好きな事をほざくしょ―――もないブログ

自転車旅行日記 ~九十九里編~ 3日目(最終回)

2013-08-13 19:00:08 | 自転車旅行日記
起床。薄暗い公園。その日は晴れておらず曇っていたからだ。周りには誰もいない。

髭人「さて朝飯でも食べるか?」

と、コンビニに向かい歩き出した。
コンビニに着くとそこにあった置時計は5時を差していた。

髭人「5時か…ならm出発は5時半かな?」

適当にパンやおにぎりを購入し、公園に戻って一人寂しい朝食。力を付ける為、無言で黙々と食べる。

→→→→独り言をブツブツ言いながら食べていたら気持ち悪いわな(笑)

しかし、案外、食欲が無く朝食を買いすぎてしまったが為に食べきれなかった。

髭人「今、食わず、昼飯にこれを食えばいいか?」

パンなら、バッグに入れるから問題ない。シートなど使った物をバッグに入れ出発である。
髭人のタオルを頭に巻き、気合を入れてペダルを漕ぎ出した。

→→→→今でも続いているかな。グッと絞める事でハチマキのように気合を入れるわけだ。

髭人「昨日のホームレスのおっちゃんの事はただの俺の取り越し苦労だったか…」

おじさんを疑った事を反省しながら相棒と漕いだ。その疑いの心が神の逆鱗に触れたのか雨が降り始めた。

→→→→関係ない。関係ない。

しかしその時の俺は

髭人「ちっくしょ~!!俺が何したってんだ!!」

ほぼ切れそうになりながらペダルを漕ぎ続けた。

髭人「ど~せにわか雨だろう。出発前の(天気予報の)週間予報は晴ればっかりだったからな」

→→→→テレビに一切触れてないし、携帯も持っていなかったので、周囲の情報はまるで分からない。

軽く考えていたが雨は時間が経つにつれどんどん強くなって来た。
あまりに強くなってきたので濡れながらという訳にもいかずカッパを着た。
うちのオッサンは蒸れないカッパを俺に渡してくれたのだがやはり完全に蒸れをカットする事はできなかった。

→→→→無茶、言うな。

髭人「ぐぅ~!!なんか蒸れているような蒸れていないような曖昧な感覚だな~」

腹を立てた。

→→→→既に軽く濡れていたからな。その状態なら蒸れやすいのは当然のこと。

んでカッパを着始た途端、すぐに雨が弱くなる。

髭人「何だよ!!俺が何の為にカッパを着たと思ってんだ!!」

→→→→カッパ着たときあるあるって感じだよね(笑)

天気にぶちキレた所で何の足しにもならないのでそのまま走り続ける。
ちょいと休憩という事でコンビニでトイレに入り上半身のカッパを脱ぐ。
雨は完全に止みきってなかったからズボンのカッパだけを履き続けた。
んでトイレだけ借りておいて何も買わないのは気が引けたからお茶を買って飲んだ。

→→→→当時の俺はやさしいな。今の俺はトイレを使って平然と出ていくが…
そうだ。トイレの話が出た以上この話はしておかなければなるまい。
1日中、自転車に乗っていると、肛門が体の中に潜り込んでしまう。肛門がどこにあるか自分で指を突っ込んで確認したほどだもの。
それに、おしっこすると気にチンコが異様に痛くなる。別におしっこをしようとしなければ痛みはないのだがしようとすると痛みが出る。
尿管に痛みが走るって所かな。

髭人「おしっこしたい…」
チョロロ…
髭人「痛い!痛い!痛い!でも、おしっこはしないと…イタタタタ!!」

このように書き出してみると何かコミカルだが、実際は結構、辛かった…


再出発。

髭人「こんな道、一昨日通ったんだよな」

と、思いつつ走る。

→→→→当たり前だが行きと帰りでは目に入ってくる景色が違ってみえるからな。
別の意味で新鮮。


後は、ただひたすら家に帰る事だけを考えて走る。昨日と一昨日の出来事を思い出しながら走る。
走る以外に何もする事がなかったから…
走らなければ帰ってみんなに無事帰って来たと伝える事が出来ないからただ走り続けた。

→→→→ちょっと心に余裕がなくなってきたわな。

「次の休憩でエネルギーを取らなくては…」

初日の教訓を生かすため、意識してエネルギーを摂取ろうと考えた。
ゼリー飲料(?)を買って飲む。
その時はまだ7時ぐらいだったかもしかしたら友達は起きているかも知れないと
電話を掛けるがほとんど10時起きの友達が起きているはずもない

「やっぱり寝ているか」

→→→→ただ単に非通知電話(公衆電話)が俺だと分かっているから面倒くさがっていただけかもしれない・

とまた相棒を再発進させた。
9時ごろだったか?10時ごろだったか良く覚えてはいないがやっと千葉から東京に入った。
その頃になると雨もほとんど小雨になっていたので

「もうカッパは不要だな」

と下半身のカッパも脱いだ。休憩とジュースを買って一人飲んでいる。
「そろそろ起きただろう」と友達に電話を掛けるが出ない。

んで一応俺の道の行き方は要所要所で現在地を考えていた。

→→→→地図を見ながら走り続けるって訳にもいかないからな。
A地点についたら次の通路はBを右に曲がって…という要領

次は日本橋だなと行き先を決めた。
東京の地図は10万分の1でかなり大雑把。ではなく縮尺が大きいのでよくわからない。
何度か通っているけどあそこは似たようなビルばっかだし気候とかで

「ここ通ったか?」

というので道がよくわからなくなった。再度雨もまた降り出してカッパをまた面倒と思いながらも着た。
んで俺は日本橋を何とか見つけたが「越えてしまった」と思っていた
本来なら日本橋をくぐってそれから次の交差点を右に曲がると考えていたんだが…

髭人「越えてしまったからここの交差点で右に曲がるんだな…」

と交差点を右に曲がるのだがそこに行くと見た事も無い道にぶち当たった。流石の俺も

髭人「こんな所来た覚えはない!」

と思いまた道の基準となる日本橋を目指す。
そして再発見し。

髭人「一つ目の交差点を右じゃなかったっけか?じゃ二つ目の交差点を右に曲がってみよう」

と次は二つ目の交差点を曲がるのだが見た事がない道にまた出る。

髭人「はぁ?何だぁ?ここは迷路か?」とわかりにくい地図を取り出すのだが全く現在地が掴めない。

→→→→完全に方向感覚が狂っていた。
当時の自分としては昔のゲームによくあった。無限回廊に入ってしまったんじゃないかという心境だ。

都心の方なので人も結構いるのだが極力人の力は借りたくないと意地になって探した。
そして日本橋を見つけ、交差点を曲がりわからなくなるというのを3~4回ぐらい繰り返した。

髭人「はぁ?ここはどこなんだよ!!あっちに日本橋が有るって事はこっちでいいんだよな」

もはや混乱状態。その状況は理解し始めていたから少し冷静になってみた。

髭人「ん?もしかしたら日本橋を越えてないかも知れない。日本橋を越えていると思い込んでいたから交差点を右に行っても何もわからなかったのかもしれない」

と逆の発想みたいな事を考え出した。

髭人「まずは日本橋をくぐってみるか?これで何もわからなかったら国道沿いを行くか?」

というわけで感覚的に違和感はあったものの、まずは日本橋をくぐった。
すると見た事のある場所に出くわす。

髭人「おお~!!ここは!!」

今まで解けなかった問題が一気に解けていくが如く道がわかっている。
霧が晴れたて視界がクリアになったという所だろうか?

髭人「そもそも日本橋を越えていたという考えが間違えだったんだな。それを越えていないという逆転の発想に転換する事によって場所を把握する事ができた...コペルニクス的転回だな」

一人頷きながら走っていた。

→→→→「コペルニクス的転回」180度視点を変えるという意味だったかな?当時の髭人の流行り(笑)

すると東京駅が見えて来た。

髭人「やっと見つけた」

喜びと共に安堵感に心が揺れた。
しかし東京駅に着いたとはいえまだ自宅には数時間かかる。
ハッキリ言って日本橋から東京駅まで行くのに30分はかかったと思う。
通常に自転車で移動したのならば5分もかからなかったろうに。そして友達に電話をするがまだ出なかった。
だからうちに電話して今東京駅という事をうちのオバサンに伝える。

オバサン「(うちは)雨降ってない」

東京駅はめちゃめちゃ降っていた。場所によって細かく異なるようだ。

髭人「まだ家まで距離があるんだな」

再認識した。

「次は新宿駅向かって快走だぁ!!」

雨が降りしきる中相棒を走らせた。
前、高校の行事で舞台を見た劇場の脇を通り国会議事堂を写真に収め走る。

→→→→この舞台。まるで知らないし、興味がなく、前日に夜ふかししていたから寝ていたな(苦笑)

現状それなりに走っていたが昨日のような股関節の痛みはない。
だけど硬いサドルにずっと座っていた為お尻が凄まじい程に痛かった
サドルにタオルを乗せてお尻にかかる負担を少しでも軽減させようとしたのだが3日間も座っていればほとんどその効果も薄れてくる
しかも雨で濡れたおかげで柔らかさも消えペタッとサドルにくっついていた。
ちょっとした丘のような坂さえも上り切る事もできず歩いた。
しかし、一歩一歩新宿に向け前進している事は確かである
そして新宿の辺りで一息つこうとコンビニでジュースを買い雨に打たれながらジュースを一気に飲む。

→→→→こうやってみてみると休んでばっかだな(笑)

新宿を越えた所で11時ぐらいだったろうか?

髭人「そろそろ友達も起きている事だろう」

電話ボックスでまた電話を掛けた。するとやっと「ガチャ」と出たような感じの音がする

髭人「もしもし」

という前にプツと切れた音がする。
始めのうちは何が起きたのか全く理解できなかったがその内に今起きた出来事がわかってくる。
テレカの度数が1減っている...そしてその内なるツ~ツ~という音
ようするに出て、声も聞く前に切ったという事である
俺は肩をガクンと落としガタン!と重力に体を身を任せ受話器を勢いよく電話に置いた。
10秒ぐらい電話ボックスにその場で呆然と立ち尽くしていた。
そして帰るという気を取り戻した俺は相棒に跨りペダルをこぎ始めた。
しかし俺の心は怒りの心で震えていた。

髭人「全くみんな自分の事しか考えていない!!人が苦労しているってのに少しは話そうという気はないのか?電話がうるさくて自分が寝られないのなら多少は「頼むから寝させてくれ」って言う事ぐらいできるのではないのか?なぜ?畜生!!俺は何の為に走っているんだ!!」

と自問自答を始めた。

→→→→まさにブーメラン。自分のことしか考えてない当時の俺。
「俺は何のために走っているんだ」って?そりゃお前自身のためだろうが。
過酷な状況で苦労していればみんな注目してくれるという思い込みがそのように思わせたのだろう。
ただ、肉体的とか精神的に辛い状況に置かれていると、自分だけが不幸とかって嘆くことあるよね。

その怒りから天気も大泣き。しかも向かい風、最悪の天候である。

髭人「みんな俺の敵となる。みんな…みんな…」

雨はなお強くなりはっきり言ってその場は修羅場と化した。
人間だけじゃなく天気さえもだった。
今考えればホームレスのおじさんの疑いの念から来ているのかも知れないがその時はずっと俺以外のも全てが嫌になった。
その怒りの念から俺のスピードはかなり加速していた。もう完全に自暴自棄に入っていた
そんな爆走している中信号が赤になって車が止まり始める。

髭人「そこは交差点では無いので自転車が止まる必要は無い。このスピードを緩めてはまた上げるのが面倒だ」

→→→→道交法違反です。自転車は軽二輪車扱い。赤信号では止まりましょう。

スピードを全く減速させずに進む。そんな中、自転車に乗った。親と子供が横断歩道を渡り始めた。

髭人「ヤバ!」

気がついたときにはもう遅い。急ブレーキを掛けるが道路は雨に濡れている為相棒は滑って全く止まろうとしない。
そして「ドン!」と多少減速した相棒に子供が接触してしまった。
その子は自転車に乗っていた為自転車の重量も重なってかそんなに吹っ飛ばなかった。

髭人「大丈夫?」

と、声を掛けたがそんな事の前に親が歩み寄っていて俺が立ち入る事は出来なかった。
しかしその子は強いのか大した接触ではなかったのか全く平然としていた。
その子が乗っていた自転車も損傷は見られない。

髭人「これならいいか?」

とまた相棒を走らせた。

→→→→「これならいいか」って良くないよ。
まぁ、その母親もこっちを責めようとしていなかったのもあるがな。
ただ、実質、自転車で轢き逃げしたという事には変わるまい。

髭人「俺は人を轢いてしまった。しかも相棒で…基本的に自転車は二輪車扱いだから信号では止まらなければならないんだよな?だとするのなら止まれば今のような事は回避する事が可能だった。しかし止まるのが面倒と拒んだ俺の判断が…結局俺も(自分勝手な奴等と)同類か」

と、自己嫌悪に陥った。

→→→→気持ち悪いぐらい自己嫌悪になりまくりだな(笑)

スピードは伸びるものの精神的には全く意気消沈状態の俺。
そのうちサドルに乗っけていたタオルも落ちてかなりの激痛が俺のケツを襲っていた。タオルのありがたみがわかった。
大きな国道から狭い道に入る、後少しという証拠である。
小腹も空いてきた俺は自販機でジュースを買ってコンビニで朝残したパンを食べ出発。
いつまでも気にしていても仕方ないからな。それで通報されて捕まるというのも覚悟の上。
雨にすっかり上がり、カッパも脱いで走る。
それでやっと何度も見た事もある道に出て

髭人「もう(家まで)目前だ」

と走った。
初日の朝歩いて登った坂を帰り一歩一歩踏みしめて登った。
登り終わり一気に駆け下り長い道を走り家路に着いたのであった。

この日、PM8:00ぐらいに眠って次の日、AM7:00ぐらいまで目覚めなかった。






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3 コメント

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Unknown (Dotama)
2013-08-14 20:52:22
長旅と、長文 お疲れさまでした。

今年は 本当に、とても暑い日が続いており
もはや 「暑い=夏」 であることすら 日中、忘れるかのような日々を過ごしておりますので、
「夏」をテーマにした今回の文章、非常に楽しませて頂きました。
ばっちり、夏を感じさせて頂きましたよ。( ´-`)


思えば個人的に「夏」は、 過去の情景が甦らせる季節のような感じがします。
…文章で説明するのは なかなか難しいのですが…(ー ー;)

暑さのせいで余裕が無いのか、その場で夏という季節感を 感じることは少ないのですが、
何年か経って、「夏の」思い出として じんわりと甦ってくることの方が多いです。

夏休み、花火大会、小川のせせらぎなど…


今回の自転車の旅も、そんな夏の情景が伝わってきて

「あ、俺こういう経験してないなぁ」

と ろくに、夏の思い出を作ってこなかったことを痛感しました。( ;∀;)


大人になって、自動車を使うようになった訳ですが、
自転車で旅行っていうのも 大変そうですけれど、
何だかいいものだな、と思いました。


願わくば、これから少しずつでも「夏の思い出」を作れればいいな…と。

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 (髭人)
2013-08-15 21:59:43
Dotama殿
読んでいただき誠に感謝の言葉もありません。
自分としてはこの自転車旅行は人生の中で「財産」と言っても過言ではありません。最も密な3日間でした。

夏の思い出なら今からも作れますよ。
別に自転車旅行みたいに肉体を酷使しなくても、例えば電車で鈍行に乗って見知らぬ所に着いて宿を探して泊まったりとかご飯を食べに行ったりとか、行き当たりばったりの旅をするのもまた楽しいかもしれませんよ。
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Unknown (Dotama)
2013-08-17 02:38:28
ありがとうございます。

良い思い出を 少しでも多く、作っていけるようにしたいと思います。(^ _ ^)
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