日々雑感

変化の激しい世の中です。日々思うこと、感じたことの雑記張です。

TPP問題(2)

2011年01月17日 | 日記
しかし政府は、あくまでもTPP加盟を進めるようです。TPP加盟の条件整備のた
めに、農業の「強化」を言っています。「ベンチャー企業のような企業家精神
を持った人が自由に参画できるようになれば、日本農業の再生は可能だ」「自
由に参加できるように農地法などを見直す必要がある」ということです。

政府はこれまでも「国境措置に依存しない競争力のある農業の確立」を掲げ、
関税ゼロでも生きていける農業を目指すべきだとしてきました。そのために
は農業に企業が参入できるようにし、儲かる農業を推進しなければならない、
といってきました。財界もこれを後押ししています。

農水省は、関税ゼロとなった場合、米は新潟コシヒカリや有機米等が生き残る
のみで、現在の生産量の10%に過ぎない、としています。つまり90%の農地が耕
作放棄地になるのだから、ここへ企業が参入しようと言うわけです。

政府も財界も、株式会社による農業は競争力があり、国際競争にも生き残れる、
との考えを持っているようです。しかし、農業法人のアンケートで経営課題と
して上げられているのが「農畜産物の価格の低下」「農産物の輸入増加、自由
化」です。つまり家族経営と同じ悩みを抱えており、近年の米価下落は大規模
農家ほど赤字が膨らむ、という状況も生まれています。

企業は利益至上ですが、農業は儲けが最も見えにくい産業です。規模が大きく
なればそれだけ被害も大きくなります。日本の農業をいくら大規模化したとし
てもアメリカ、オーストラリアの規模には及びもつきません。しかも農業には
自然保護、災害予防、地域文化の伝承等々、様々な効果があります。儲け至上
とは一線を画した農業政策が求められています。

確かに全国各地に、競争力を持った農業をしている人たちがいます。米、野菜、
果実、花等々、輸出で稼ぐ農家もあります。しかし、それらは誰もができるも
のではないし、皆がやれば、その人たちの先進性も失われるでしょう。スーパ
ーやレストランと組んで安定生産・安定供給を、すべての農家ができるわけは
ありません。起業家精神は大切ですが、農業を産業として育てるには、個人的
努力だけに頼るのでは不可能でしょう。

ヨーロッパでは1958年、欧州経済共同体(EEC)の結成に際し、各国農業保護の
ために共通農業政策(CAP)を作りました。加盟国の負担で、
(1)関税によるアメリカとの国際競争の遮断。
(2)生産コストを償える生産者価格の保障。を掲げています。

穀物では、小麦、大麦、ライ麦、コメについて、収益格差をなくすために、同
じ価格水準とし、適地適作ができるようにしました。価格は、小規模農家が多く、
生産費のかかるドイツとイタリアを基準に決めています。このような政策がヨー
ロッパの食料自給率を高めてきた最大の要因でしょう。

2010年、世界の飢餓人口は9億2500万人にも及びます。飢餓人口が最も多いのが
アジア太平洋地域で、5億7800万人、62%を占めます。国連食糧農業機関(FAO)
は「子供が6秒に1人、飢えで死んでおり、飢餓問題は世界で最大の悲劇であり、
不名誉である」と訴えています。

農水省の「海外食糧需給レポート」によると、穀物の国際価格は昨年7月以降上
昇。06年秋ごろに比べると、米が1.7倍、大豆が2.3倍、小麦が1.7倍、トウモロ
コシが2.4倍となっており、過去最高値を記録した08年の水準に迫っています。

FAOは、食料価格が高騰したことで、「国際食料輸入代金は2010年に1兆ドルを
超える可能性がある」と警告しており、「世界の最も貧しい国々の食料輸入代金
は、2010年に11%、低所得食料不足国においては20%増加する」と指摘しています。

さらに「海外食糧需給レポート」は、世界の食糧消費量は生産量を上回っており、
2010年度の期末在庫量は19%に落ち込むと予測され、2019年度には13.3%と安全水
準(17~18%)を下回ると予測される、と指摘します。

FAOによれば、2050年には世界の人口は90億人を超えると予測されており、その
ための食糧確保には、開発途上国の農業へ、年間830億ドルの援助が必要だとし
ています。東アジアは経済成長と人口増加、生活水準の向上につれて、食料は
ますます必要になります。経済低迷が続く日本が生き残るためには、自給率の
向上しかありません。

農水省の調査によると、2009年農家所得は457万円(農産物販売104万円、農外
所得169万円、年金収入183万円)でした。農業の総産出額は8兆491億円で、前
年比4.9%減少。その内訳は畜産31.2%、野菜25.3%、米22.3%でした。米価の暴落
で米の収入が1位から3位に落ちています。

田畑に作物を植えつけた面積は424万4000ヘクタール、前年比2万1000ヘクタール
(田が7000ヘクタール)減っています。田畑合わせた耕地利用率は92.1%で、7年
連続減少。総耕地面積459万3000ヘクタールで、前年より16000ヘクタール減って
います。数字を見るまでもなく、担い手もなく、生活の見通しも立たず、日本の
農業が衰退しているのが分かります。しかし、政策次第では生き返らせることが
可能であるのは、ヨーロッパを見れば明らかです。

日本は気候は温暖で、水も豊富、勤勉な農民、農業技術の蓄積等々、農業生産
の条件に恵まれた国です。食料自給率を高め、他国からの輸入に依存せず、他
国の食料を奪わないことが、国際社会に貢献する道でもあるでしょう。

TPP問題には、日本医師会が加盟に懸念を表明していることを知りました。
医療が自由化されることで、日本の皆保険制度の崩壊の危険性が増す、とのこと
のようです。

菅総理は、TPPも消費税も6月までには結論を出すと、意気込んでいます。
やることはもっと他にありそうなものですが・・・・


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