本とは意外な出会い方をするものである。
この本とは仕事の帰りの新幹線の中で出会った。
新幹線の中で発売していたわけではない。隣の座席の人が読んでいたわけでもない。
実は、隣の人が読んでいた「朝日新聞」の日曜の書評に掲載されていたのだ。
書名はかの有名なフランソワーズ・アルディのシャンソンと同一である。 私は目が悪いので、隣の人の書評を読むなんてことはできない。しかし、書評に載っている鮮明ではない白黒写真は、なぜか強く私を呼ぶのである。
駅で降りるとすぐに、書評を読むために朝日新聞を購入してみた。まず、「えっ」と思ったのは、日曜日の書評欄の書評なのにもかかわらず作品の問い合わせ電話番号が掲載されているのである。実は、この写真集、自費出版のようだ。(リコシェという販売会社を経由しているので書店でも購入できる)。落ち着いて書評に目を通してみるが、読者の購買心理をくすぐるような絶妙な文章なのだ。
私はすぐに注文した!
本は、いかにもアートといった装丁である。1枚1枚の写真そのもののレベルは、あまり高いものには思えないが、処理やレイアウトすると、写真集として不思議なトーンを放つものに仕上がっている。今でもたまに本棚から取り出してページをめくってみることがある。感動系でも、癒し系でもない。やはり不思議なトーンを放ち続けている。
不思議な出会いをした1冊だったが、これだけでは終わらなかった。
朝日新聞の日曜日の書評に掲載されるということは、著作者にとっても発行元出版社にとっても一種のステータスである。
現に本著は朝日新聞の書評のおかげでそれなりに売れているようである。 しかし、インターネットで検索してみると、著者以外に2人の名前がクレジットされていたのである。(本書奥付にも2人の名前はたしかにクレジットされている)。その中の1人が実は、朝日の書評を書いた評者なのである。
これって反則じゃないかな? 朝日新聞さん!
(個人的評価:★★★)
(おすすめ度:写真というものとアートというものの違いを知ることのできる1冊)