ブログはなやさい

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思索

2015年06月29日 17時13分34秒 | Weblog
少しでも気を抜くと

退屈な本になってしまう


物語に動きはあまりない

ある人物を見張る探偵

それを依頼する男性

見張られる男性

基本的に何も起こらない

主人公である探偵の

何も起こらないが故の思考のスパイラルが延々と綴られているという、

ちょっとしんどい構成である

思索することを目的に読む本なのかもしれない




安倍公房の『燃えつきた地図』を思いだした

ある女性より蒸発した夫の捜索依頼を請け負った探偵が

なかなかたどり着かない焦燥もあり

徐々に自分自身を見失っていく


『幽霊たち』も『燃えつきた地図』も

都市に棲む者の孤独を描いているような気がする


人ごとじゃないな、と思う


異論なし

2015年06月29日 16時32分30秒 | Weblog
漸く観れた

今更ながらの映画ではあるが





娯楽映画の傑作というが

正にその通りである


まず脚本が面白い

キャラクター設定も気が利いてる

三船敏郎の個性的な演技は

最初は些かうっとうしいが

次第に胸に沁みてくる

そして迫力の映像

多くのスタッフが手間暇かけて作ったのだろうと

容易に想像できる

現場の緊迫感のようなものが

観ている方まで伝わってくる

そして何より

絵がいい

構図というのだろうか

あらゆるシーン、そのそれぞれが

絵として完成されている

全部そのままポスターになる

とにかくうっとりわくわくする映画だった


そしてその次の日のことだ

何気なくニュースを観ていたら

突然、昨日観た『7人の侍』の映像が流れてきた

何事かと思ったら

三船敏郎がハリウッドの殿堂入りを果たしたとのニュースだった


大変タイムリー

私も全く異論はない




警鐘

2015年06月28日 10時54分03秒 | Weblog
ハッとさせられた





ナチスの大物戦犯アイヒマンの

エルサレムでの裁判を傍聴したハンナは

この裁判におけるアイヒマンのがっかりするほどの凡人ぶりの中に

悪の本質を発見する


事の善悪を考えず

盲目的に組織に従う

そんな思考停止状態は道徳観念をもおかしくする

結果、平凡な人間でも残虐な行為をするようになる


この『悪の凡庸』と言われる、哲学者らしい真理を衝く考えはしかし、

時のユダヤ人社会には逆に作用する

悪の権化、アイヒマンを擁護するのか、と。


自身収容所経験もあるハンナである

そんなことを言いたいわけじゃない

だが、ヒステリーを起こした大衆からは

猛烈な攻撃を受けることになる

真理に行きつくまでには感情という厄介なものがある



この映画を観てつくづく思う

ハンナの言う『悪の凡庸』は

現代社会にもいたるところにも存在している

奇跡

2015年06月21日 14時15分27秒 | Weblog
まず驚いたのがその職業である

そしてそのシステム

数人の人間を介するアナログな仕組みなのに

間違える確率は600万分の1とかなんとかいわれている

ハーバード大も研究するほどの驚異のシステム

ここまで言うとわかる方もいると思う


『ダッチワーラー』

インドの弁当配達人である

家庭や店から弁当を預かり、職場まで届ける


この600万分の1ともいわれる奇跡の誤配送がもたらす物語である





男寡と夫に相手にされない主婦の間に湧き起こる静かで淡いロマンスではあるが

それぞれの寂しい暮らしもあってか映画全体の色は灰色である

そういう意味では上記の画像は映画を正確には伝えていない


弁当の誤配送を機にメモでの文通を始めた二人は

お互いの身の上話を伝えあう

ある時は妻の想い出

ある時は夫婦の悩み

次第に微妙な感情を抱き始める主人公役イルファン・カーンの抑えた演技がなかなかである


二人の行き末については

印象的なエンディングが静かに語ってくれる


細かい配慮が行き届いた映画である


奇跡なのはこの二人の出会いではなくて

こんなキメ細やかな映画を作ったインドじゃないか

なんて思ったりもする


登場するお弁当の美味しそうなことこの上ない

ここのところカレーばかり食っている





とてもいい映画である



狙い通り

2015年06月21日 13時17分59秒 | Weblog
絵本も数多く手掛けている作家だそうだ

なるほどファンタジックな物語でもある





時代設定は明治あたりだろうか


だがそれは物語の時代設定、

というよりも

著者の執筆時の時代設定というほうがいいのかもしれない


どこか明治あたりの文豪の書き方を意識した文章である

だがそれは影響、というのではなく

遊んでる、といった感じだった


意思を持った草木や不思議ないきものが登場する、

ゆったりした物語である


この世界観を好きな方は多いと思う

私にはちょっと作為的に思えたが