医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

心臓血管系の健康とラクトバチルス.ローテリの効果について 栄養医学ブログ  日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2017-12-23 16:41:29 | 健康・病気

プロバイオテクスは、腸管の健康維持に重要で、いろんな疾患との関連も、近年、研究され、心臓血管系のリスクの抑制に関係していると、報告されています。プロバイオティクスは数多くありますが、どのプロバイオティクスが心臓血管系のリスクを抑制するか、研究が模索されています。

Celine thompson博士によると、コレステロール値が高い成人での研究では、通常のヨーグルトかラクトバチルス.ローテリ―(乳酸菌の一種)を6週間を超えて被験者が摂取し、総コレステロール値が5%ほど低下し、LDLコレステロール値が9%ほど低下しました。また、被験者は、心臓血管系疾患のリスク因子であるアポリポたんぱく質B-100の濃度がはっきりと低下しました。

他の研究では、ラクトバチルス.ローテリ(Lactobacillus reuteri30242)を9週間、カプセルで摂取した成人グループは、LDLコレステロール値が12%ほど低下し、総コレステロール値は、9%ほど低下し、非HDLコレステロール値は11%ほど低下し、アポリポたんぱく質B-100は8%ほど、LDL/HDLコレステロール値は14%ほど低下しました。

基準値での平均値、あるいは高リスクカテゴリーでのhs-CRP値(炎症バイオマーカー)の研究では、ラクトバチルス.ローテリ摂取成人グループはhs-CRP値が27.1%ほど低下し、コントロール被験者の1.7%に比べて、1つかもっと多いリスクカテゴリーが減っていました。そして、コントロールグループの2%に比べて、ラクトバチルス.ロ―テり摂取患者の22%では、hs-CRPのリスクカテゴリーが減少しました。

これらの研究結果から、ラクトバチルス.ローテリには心臓血管系疾患で死ぬリスクを制御する可能性があり、心臓血管系疾患の制御には、腸管の細菌フローラが関係している可能性が有り、いかに腸管を健康に保つことの重要性が言われている理由です。ほかの研究でも、プロバイオティクス(Lactobacillus plantarumCUL66)のコレステロール低下作用により、心臓血管系の健康への寄与が報告されていますが、ラクトバチルス.アシドフィルス(乳酸菌の一種)の摂取は、中心静脈カテーテルを行った人、人工心臓弁を装着した患者や人工心臓弁を装着する必要がある人は、まれに細菌感染のリスクがあるので、サプリメントでのその摂取は控える必要がある、との報告もあります。また、乳酸菌の中には、心臓弁脈症にはリスクとなる可能性が有るとの報告もあります。いずれにせよ、更なる研究により、プロバイオティクスが、心臓病患者の福音になることを期待しています。

References
Celine Thompson. Unique probiotic targets cardiovascular disease. Life Extension. Oct 2014
Cardiff University. Probiotics against heart disease. News Views.23 March 2016
Annelise C. costanza, et al.Probiotic therapy with Saccharomyces boulardi for heart patient. Inernational Journal of Cardiology. 179(2015) 348-350
Heart health benefits of probiotics. the drswolfson. 20M/3/21

 

 


ウイルスへのプロバイオティクスの抑制作用について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2017-12-15 10:07:26 | 健康・病気

突発性難聴、帯状疱疹、インフルエンザ、がんなど多くの疾患にウイルス感染が関係していると、報告されています。日頃、免疫能をベストにしておいてウイルスを抑制する対策が必要ですが、食生活の改善やストレス対策と共に、プロバイオティクスなどで腸管免疫能をベストの状態にしておくことが重要であることが、いろんな研究から見えてきます。

"Letters in Applied Microbiology"誌によると、マウスが感染したH1N1インフルエンザウイルスに及ぼすLactobacillus rhamnosusGG(プロバイオティクス)の効果では、ビ腔からのLactobacillus rhamnosusGGの投与では、呼吸器官での免疫反応を刺激することにより、マウス(宿主)を保護するのに効果的でした。また、2010年の"BMC Infectious Diseases"誌によると、幼児の感染したロタウイルス性下痢による下痢の期間に及ぼすLactobacillus acidophilus、Lactobacillus rhamnosus、Bifidobacterium longum、それにSacchromyces boulardiiなどのプロバイオティクスを混合して、上記、幼児に摂取いてもらい、プラセボに比べて、下痢の期間が短縮されました。また、Saccharomyces boulardiiの単独摂取グループでは、発熱の低下と共に下痢の期間の著しい短縮が認められました。別の研究でも同じような効果が見られる可能性が有り、現在、米国で研究されているようです。

なお、プロバイオティクスは、たいていのヒトには安全と考えられていますが、抗ガン剤などで免疫能が極度に低下したヒトやHIV/AIDS患者、それに自己免疫疾患患者など免疫系に極度のダメージを受けたヒトは、免疫系が適切に機能せず、プロバイオティクス摂取により、健康上の問題をもたらす可能性があるので、摂取を控える必要が有ると報告されているので、摂取については、プロバイオティクスに詳しい医師など専門家に相談する必要があります。

次にLiaskovs'ky TM博士らの研究によると、酪酸菌株の亜種L. plantarum とS. salivariusのin vivoの研究では、マウスに培養コロニ―の0.3mlを3×10(8)/CFUの一回投与量で経口投与し、抗インフルエンザ作用を認め、一回投与量0.3×10(9)/CFUでは抗ヘルペス作用を認めました。また、プロバイオティクスの効果は、モルモットの性器ヘルペスのモデルにおいて1×10(9)細胞/g.p.の濃度では、抗ヘルペス作用が認められ、これらの結果から、博士らは、酪酸菌(プロバイオティクス)は、0.1×10(9)/CFUmlの細胞数の一回の投与量では、HIVの増殖を阻害することが、統計学的に証明されたと、報告しています。

また最近、プロバイオティクスは、心臓病、自己免疫疾患、アレルギー、うつ病、大腸がんなど多くの疾患の抑制因子としての作用が、米国を初め、いろんな国々で研究され、報告されていますので、近々、薬剤で治らない疾患にもプロバイオティクスが助っ人になる可能性が出てきました。

References
Deborah Lundin. The effect of probiotics on viruses. LIVESTRONG. COM. Oct 03,2017
Liaskovs'kyi TM, et al. Effect of probiotic lactic acid bacteria strains on virus infection. Mikrobiol Z. 2007 Mar-Apr;69(2):55-63