kouheiのへそ曲がり日記

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小説より奇なる事実と辻褄の合った嘘八百(10)

2012-03-31 05:09:43 | 日記
「kouheiさん! いままで何人の女と寝ました!?」
今度はクリスチャンの女の子(音楽の実習生、名前は失念)が立ち上がった。

「!? お前は何を言うとるんだ? なんでそんなことこんなところで言わなきゃならないんだ!?」
「ヌード写真もそうですけれど、女の裸見て喜んでるような人間は、人前で偉そうに言う資格はないと思うからです!」
「女の裸の何が悪いんだ? きれいな女性の肉体は美しいやないか!」

すると彼女は論理的脈絡を無視して、ヒステリックに叫んだ。

「だってkouheiさん、授業で『人殺せ』なんて言ったんでしょう!?」

教頭が僕をじろっと見て、下卑た笑みを浮かべた。

「お前はアホか! そんなこと言うはずないやろ! 常識で考えろ!!」
「だってkouheiさんは常識が通用しない人だから・・・」

僕は高校時代、前衛芸術に心血を注いでおり、高校一の変人と呼ばれていたのだ。

「じゃあお前は、俺が朝にはこんばんは、夜にはおはようございますと挨拶しているとでも思っとんのか!? 『僕は性的暴行するやつのことをニュースで見たりすると、腹が立って身体を切り刻んでやりたくなります、もちろんそんなことはしないけどね』と言っただけじゃ!!」

すると僕の左どなりに座っていたI鍵さん(政治・経済の実習生、社会人経験のある人で年上)が「その通りです、僕は授業を見学していました、kouheiさんは確かにそう言ったんです」と言ってくれた。

「当たり前やろが! しんどい思いして教職課程をとって、教育実習で『人殺せ』なんて言ったら、苦労がすべて水の泡やないか!」
「だって先生が嘘言うはずないと思うのが普通でしょ」
「教師なんてほとんどが嘘つきやないか! この世間知らずが!! お前、俺の言ってることが全部本当だったら大学やめなさいな、その『人殺せ』が嘘だと分かったら退学しなさいな! ええな! この約束が守れなかったら、お前はクリスチャン失格どころか、人間失格だからな!!」

のちにこの娘は実際に音楽大学を中退した。

先ほどから、『先生』という言葉が何度かでたことにお気づきであろう。
ご明察のとおり、これはすべてI教諭のことなのだ。
彼が僕を陥れるために罠を仕込んでいたのだ。
まぁ、そのことに気づいたのは、ずっとあとのことであるが。

さて、教頭が自暴自棄に陥ったかのような態度で「お前、大学にジーパンはいて行ってるんやろが!」と叫んだ。
「よく知ってますね」と僕は同じ大学のふたりの女の子の方をにらみ「・・・誰が言いふらしたのかな?」とわざと静かに言うと、ふたりの女の子は泣き声をあげた。

僕は「大学にジーパンはいて行ったらあかんのか! お前今どきジーパンが反抗の象徴だとでも思っているんちゃうやろな? ジーパンなんて今や普通のファッションですよ、この世間知らずのアホが!」と怒鳴ってやった。

教頭は今度は「お前、夜中に散歩しているんやろう! この嘘つきが!!」と喚いた。
「夜中の散歩なんてしてへんわい!」と僕が返すと、T井が「お前、文化祭のときウチへ来て、夜中に散歩していると言うてたやないか!」と大声を出した。

「は~、T井、お前か、俺が嘘つきだと告げ口したのは、高校時代俺がどんな嘘ついた? 言うてみい!」
「・・・本人の前では言えません」
「本人がええ言うてるんやからええやないか、俺はどんな小さな嘘もついたことないなんて、そんなアホなことは言いませんよ、俺も人並みに小さな嘘はついてきたよ、でも、とんでもない大嘘つきだなんて言われるような嘘はついた覚えがないんだよ、高校時代・・・って、その前もその後もやけれど」
「お前、高校時代、わけが分らん芝居やってたやないか!」
「なんや!? これは実際にあった話ですと言って芝居してたわけちゃうやろが! これは自由××団の創作した芝居ですと言ってやってたんやろが!」

芸術のげの字も分からない低俗な凡人というものは、芝居をやっている人間は嘘つきであると考える、一種の心理的法則のようなものがあるようだ。
とりわけ、僕のような前衛的芝居をやっていたような人間については。

「まぁ、結婚詐欺師に3回連続でだまされた女性が男というものを一切信じられなくなったという気持ちは理解できるわな、論理的にはすべての男が信用できない存在だということにはならないよ、でも心理的には、そんな目にあわされたらすっかり男性不信に陥ったとしても同情できるわな、おいT井! お前、前衛的な芝居をやっている人間からだまされたことあるんか?」
「・・・」
「どや、あるんか、ないんか?」
「もうええわ!」
「よくないわ! お前、I先生にkouheiはとんでもない嘘つきですと言ったんやろが! そしたらI先生は俺が具体的にどんな嘘をついたか、お訊きになったはずや、抽象的に嘘つきですと言われ、それを信じ込むなんて小学生や、I先生は大学でてはんねんから、お前はそれに対してどう答えたんや?」
「・・・」
「だいたい俺はとんでもない嘘つきで、俺の言うことはすべて嘘ちゃうんか? だったら夜中に散歩していると言った俺は散歩していないということになるやないか? なんでその言葉だけ信じるんや?」
「・・・」

T井はそれ以上言うべき言葉を失ってしまった。

さて、今まで静観の構えをみせていた校長がやおら口を開き、僕に問いかけた。

「(老若男女と板書して)これ何と読みます?」
「ろうにゃくなんにょですね」

するとN大学のSが大声で嗤った。

「わははは、舌まわらないでやんの、それはろうじゃくだんじょと読むんじゃ!」
「ただ今校長先生が老人の老と若い、そして男女と書いて何と読むとおっしゃったので、不肖私めが『ろうにゃくなんにょですね』とお答えしましたところ、N大学前衛国語研究所主任研究員S助教授が『それはろうじゃくだんじょと読むんじゃ』とおっしゃいました(笑)」

ここから、校長主催の国語クイズ番組が幕を開けたのである。(つづく)
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小説より奇なる事実と辻褄の合った嘘八百(9)

2012-03-30 07:18:14 | 日記
その瞬間、T本教諭の「おいkouhei、入れといたからな、教頭も知ってるで!」という言葉が僕の脳裏にフラッシュバックした。
僕の脳神経には、<教頭=敵>という方程式がプログラムされた。

「なぜSには何も言わないんですか? あいつも高校時代タバコ吸うてましたよ」
「(にやにやしながら)・・・」
「なぜSには・・・」
「(なおもにやつきながら)・・・」

しかしそのとき、僕の良心が疼いた。

「まぁ、Sが吸うていようといまいと僕が喫煙していたことに間違いはないから、そのことは僕が悪いんです」

すると教頭は深くうなずいた。
ここで終わりにしとけばよかったのかもしれない。
だが僕が次に「これでよろしいですか?」といった瞬間、教頭の表情が一変した。

「『よろしいですか』とは何だ!」
「なんや!? そっちがケンカを売ってきたんやろが!! 俺は売られたケンカを買っただけや!!」

ここから壮絶な言い争いになった。
教師がそんなに公平性を欠いていいと思っとんのか? それでも教育者か!? などと僕はぶちぎれて口走った。
そして言い争いが途切れたある一瞬、ある実習生が「ヌード写真見たことありますか?」と人をバカにしきったような声で言ったのである。

「へ~、あんたはその歳になるまでヌード写真を観たことないんですか? あんたホモですか? まぁ、アメリカでは同性愛者も市民権を得ているっちゅうからええんでしょうな」

僕の脳細胞のなかで起爆のスイッチがONになった。

「しかし、人が教育について真面目に語っているときに、『ヌード写真見たことありますか?』なんてよう言えたもんやな! バカもあそこまでいくと芸術やな!!」
「先生にそう言えと言われたんじゃ!(涙)」
「じゃあお前は、先生に死ねと言われたら死ぬんか!? 死なへんやろ! 先生の命令に背くのが怖くて言ったんではなく、先生公認で人を傷つけるのが面白くて面白くてたまらなかったんだろうが! そんなやつが教師になれるか!! 教師をバカにするのもええ加減にせい!!」

この実習生は泣き崩れた。
すると青白い顔をした別の実習生が立ち上がり、「社会科の実習生の方はご立派なことおっしゃっていますが、現実には大学受験というものがあるんです、僕らはひとりでも多くの教え子を大学に入れなければならないんです」と述べたのである。

つまり、人間教育などというのは青臭い理想論であり、大学受験というハードルをクリアするためには、そんなことしている暇はないと言いたかったようだ。

「校長先生、今大学への進学率はどれくらいですか?」
「40%弱です」
「つまり60%強の高校生は大学に行かないんですね?」
「その通りです」

僕は青白い男にたたみかけた。

「お前が誰も進学しないような、いわゆる底辺校の教師になったらどうするんだ? 『お前ら進学しないような者は勉強しなくてもいいんじゃ、赤点とって落第さえしないようにしとったらええんじゃ』とでも言うのか?・・・お前が在校生の半分が進学希望で残りの半分が就職希望の高校の教師になったらどうするんだ? 進学希望の生徒には一所懸命勉強教えて、就職希望の生徒はほっておくんかい!?」
「・・・分かりました」
「何が分かったんだ? 自分が自分のことを賢いと思っているアホであるということが分かったということか?」
「そうじゃない!」
「じゃあ何が分かったんだ? お前今『分かりました』と言うたではないか!!」(つづく)
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小説より奇なる事実と辻褄の合った嘘八百(8)

2012-03-29 07:28:32 | 日記
ついに教育実習の最終日がやってきた。
その朝、僕は廊下でI教諭に呼び止められた。

「kouhei君、君は今晩の懇親会に出席するの?」
「いいえ、出ないつもりです」
「なら私の家へ来なさい、夕飯でも食べようよ」
「はぁ・・・それならおじゃまします」

I教諭は満面に笑みを浮かべ、(何かあったんだろうか?)と思うほど上機嫌だった。

午前10時から実習生全員と、校長・教頭の総計45名での反省会が始まった。
2階の会議室の机を矩形に並べ、その外周をとり囲むように僕らは着席した。
もちろん校長と教頭は黒板の中央付近に座り、僕は窓側の前から4人目の位置に座った。

ひとりずつ簡単に実習の反省を述べることになった。
やがて僕の番がまわってき、僕は起立した。

「知識の詰め込みは教育ではありません、もちろん知識の伝授も必要でしょう、それは当り前のことです、でもそれだけでは教育にはならない、プラスアルファとして人間教育が必要なのです、知識の詰め込みだけしとったらいいんじゃという人は塾の先生になったらよろしい、学校の教師は授業を行うだけでなく、クラスを担任するわけですから、人間教育が不可欠になるのだと僕は思います」

僕は自分の発言が終わったら気が抜けてしまい、他の実習生の話はろくすっぽ聞かず、タバコを吸っていた。
現在僕は喫煙していないが、当時の僕はヘビースモーカーだったのだ。

すると突然教頭が「kouhei君」と僕の名を呼んだ。

「!・・・はい?」
「今のどう思います?」
「・・・どうと言いますと?」
「今のは君に対する反論ですよ、君はどう答えますか?」
「すいません、聞いてなかったもんで、もう一度言ってください」

するとある男が発言した。

「知識の伝達を軽視してはいけないと言ったんです」
「誰が軽視してるんですか!? 僕はそれは当り前だと言ったんです! その上での人間教育の必要性について僕は語ったんです! ったく、人の話を聞いてないんかい!」
「それなら訊きますけど、人間教育ってどうするんですか?」
「お前は人間教育も知らんで教育実習に来たんか!? 恥を知れ!!」
「・・・そんな・・・じゃあ、僕はどうすればいいんですか?」
「どうすればいいんですかって、そんなことも分からんで教師になろうっちゅうんかい!? そんなこと自分で考えろ!!」

この男はおいおい泣きだした。

すると廊下側に座っていた高校時代のクラスメートN大学のS(生物の実習生)が「あいつタバコ吸っててん!」と僕を指さして喚いた。
僕は「お前も吸うてたやないか!」と返した。

「S、お前は高校生の頃からうじうじしたコンプレックスの塊のようなやつだったな、まぁ、5年も経てば人間変わるもんやけど、お前は昔とちょっとも変わってへんな! お前はこの5年間何しとってん!?」

いま考えると僕は完全に「躁状態」だったようだ。
躁状態になると喧嘩っ早くなるものだ。

教頭がにやにやしながら「高校時代タバコ吸ってたんですか?」と質したので、興奮しながらも「ええ、吸っていました」と僕は答えた。(つづく)
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小説より奇なる事実と辻褄の合った嘘八百(7)

2012-03-28 04:13:58 | 日記
教育実習も終わりに近づいたある日、僕が授業を終え控室に戻ってくると、授業を見物していたT井が口を開いた。

「おいkouhei、さっき言ってた、マルクスが『私はマルクス主義者ではない』と言ったことも理解できないマスターって誰のことや?」
「お前のお兄さんやないから心配すな」
「ということはZか?」
「じつを言えばそうやけどな」

またT井は次のようにも訊いてきた。

「それから、おならをした生徒の頭を思い切り強く竹刀でどついた体育の教師って誰や?・・・俺全然記憶がないで」
「お前は高校時代ボーっと生きてたんやな、U本や、どつかれたのはT中」

じつはその日ぐらいから、I教諭とUの授業妨害はなりをひそめていた。
生徒たちの僕に対する態度も、わけが分からなかったが、非常に軟化していた。
根が大甘な僕は、あまりのいじましさにI教諭も自己嫌悪に陥ったのかな、などと考えていた。
だがI教諭は、実習最終日の実習生全員による反省会で、僕を血祭りにあげるブービートラップを着々としかけていたのである。

そんなこととはつゆ知らない僕は、いよいよ最後の授業をすることになった。
そのときの僕は自分でも不思議なほど落ちついていた。
僕は史的唯物論を中心にマルクス主義について可能なかぎり分かりやすく説明をして、次のように授業をしめくくったのである。

「青春は美しいなどと言いますけれど、それは年寄りが昔を思い出していいことばかり思い出すからでね、青春はホントいやったらしいものなのです、大人から見たらへどがでるようなもんです、芋虫みたいなものやで・・・だけど芋虫の今、葉っぱをもりもり食べとかんと美しい蝶にはなれないわけで、いまのうちから恰好つけて蝶のふりしていると、しょうもない蛾みたいなもんにしかなれませんから、しばらくは芋虫として頑張ってください、僕も頑張ります」

その日の実習日誌にI教諭は次のように記している。

「教材の整理・展開は2週間の教育実習中最もよかったと思います。当然といえるかもしれませんが、えてして最終を意識しすぎて失敗することが多いことを考えるとき、最後に成果を収められたのは何よりでした。本当にごくろうさまでした」

終わりよければすべてよしというが、僕はいびられたことも意識から遠のき、満足感でいっぱいだった。
6月13日の反省会で、血みどろの闘いが勃発することなど全く知らないで・・・。(つづく)
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小説より奇なる事実と辻褄の合った嘘八百(6)

2012-03-27 03:59:41 | 日記
普通ならこのへんで刀折れ矢尽き、教育実習を放棄してしまうだろう。
だが僕は子供の頃から、逆境に立たされれば立たされるほど、反逆心が太陽フレア―のように爆発する性質だったのだ。
ある日の休み時間、僕は意を決して英語科の準備室へと向かった、T本教諭に問いただすために。

「T本先生!」
「ん?」
「この間『入れといたからな、教頭も知ってるで』とおっしゃいましたが、あれはなんのことだったんでしょうか?」
「へっ! 知らんと苦しめ!!、わはははは」

その瞬間、T本教諭のとなりに座っていたK畑教諭がびっくりしたような面持でT本教諭の顔をまじまじと見つめた。

僕はT本教諭が記録を書き換え、2回停学になったU田のどちらか一方を僕が停学になったことにしたんだな、I先生はその偽造文書を見て僕が嘘をついてると思いこみ、僕に辛くあたっているんだな、と結論づけてしまった。
これが最初のボタンの掛け違いになり、事件がややこしくなったのである。

僕がいびられ始めると、社会科の他の実習生たちの多くが僕の授業を見学(見物と言うべきか)するようになった。
彼らにすれば面白くてたまらなかったのであろう。

違うクラスで授業をするたび、タバコ吸うてたか? 停学になったことは? 嘘つけ記録に残ってるぞ、を繰り返しやられたが、僕は決して社会正義について語るのをやめなかった。

そんなある日、I教諭が厳しい顔つきで控室に来て、「おいkouhei君! ちょっと来い」と僕にとなりの社会科の準備室へ来るよう命じた。
行ってみると、怒りを隠しもせずI教諭は次のように僕に詰問をした、

「お前、なんで言いふらした?」
「?・・・何をですか?」
「しらばっくれるな! おまえが大学で言いふらしたんだろうが!」
「だから僕が何を言いふらしたっていうんですか!?」
「教育実習のことや!」
「?・・・僕は毎日家と高校を往復するだけで、大学なんか一度も行ってないのに、何をどうやって言いふらすというんですか!?」
「まったく、盗人猛々しいとはお前のこっちゃ! もうええわ、控室へ戻れ!」

あとで分かったことだが、(といっても)どういうつながりなのかは今もって謎なのだが、僕がいびられていることが大学に伝わり、それが僕の同級生のNの耳に入り、人の不幸を心の底から面白がったNが言いふらしたのだ。
そしてそのことを、これまたどういう経路かは分からないが、O大学のUが聞きつけ、「I先生、kouheiが先生のことK大学中に言いふらしてますよ」と告口したのだ。

O大学のUもまた、生まれてから一度も親や教師から怒られたことがない、典型的な「早期完了型」の男であった。
僕はいつも「早期完了型」の人間と齟齬をきたす運命にあるようだ。(つづく)
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