さいごのかぎ / Quest for grandmaster key

「TYPE-MOON」「うみねこのなく頃に」その他フィクションの読解です。
まずは記事冒頭の目次などからどうぞ。

【Twitterから】信用できない相手との「交渉」

2011年01月08日 07時06分51秒 | ep8
※初めての方はこちらもどうぞ→ ■うみねこ推理 目次■ ■トピック別 目次■


【Twitterから】信用できない相手との「交渉」
 筆者-初出●Townmemory -(初出後述)

 http://twilog.org/TowMemo/date-110106/asc http://twilog.org/TowMemo/date-110107/asc


●再掲にあたっての筆者注

 せかしてくださる人もいますが、まとまった文章を書く時間がしばらくとれません。Ep8のお話については、ちょっと時間をおきます(書く予定はあります)。頭の中でしばらく熟成させたいですしね。熟成がなかったら、Ep7のときもああいう推理はできなかったでしょう。

 間のつなぎに、ツイッターでの思いつき発言を拾って掲示しておきます。われながら、ちょっとだいじなことを言っているような気もします。元がツイートですから舌が足りていませんが、これはのちほどまとめなおす予定があります。


     ☆



2011年01月06日(木)

TowMemo Tow-Memo
例えば筒井康隆の「朝のガスパール」か……。「ガスパール・セッション」とあわせて、再読したくなりました。
posted at 05:19:56

TowMemo Tow-Memo
いちおう最低限の言及だけしておきますと、Ep7時点の推理を修正する必要は一カ所もありませんでした。
posted at 05:28:11

TowMemo Tow-Memo
ガスパールセッションをamazonでまとめ注文してみた。「作品は読者を批評しうるのだ」なんて、よく考えてみれば当たり前のことですね。一方通行だったらフェアじゃないもの。(でも初めて直面したらそりゃ確かにビックリはするだろう)
posted at 05:40:01

TowMemo Tow-Memo
「うみねこ」にはすごく新しい要素がいくつもあるが、アンチミステリの手法や、あからさまな批評性や、メタフィクションの部分は、全然新しくない。それらは「~系」といってくくれる程度の、すでに手法として確立されている要素です。今時それに驚いていては、本当に新しい部分が見逃されるでしょう。
posted at 06:08:27

TowMemo Tow-Memo
ひとつ一般論をつぶやいておくと、「公開されたテキストは批評に対して開かれている」という原則を、「ユーザは作者に対して無制限に失礼なことを言ってもいいのだ」という意味だと勘違いする人がたいへん多いのです。しかも「自分は批評をしている」という自意識がある人ほど、この陥穽にはまる。
posted at 06:08:37

TowMemo Tow-Memo
文脈を散らすために別のことも。たぶん「自分はミステリに詳しくない、あまり読んでない」というひぐらし当時の竜騎士さんの発言を、額面通りに受け取ってしまっている人が多いのでしょう。それは当然「一年に300冊も読むようなミステリプロパーを基準とすれば」という意味に決まっているのです。
posted at 06:29:38

TowMemo Tow-Memo
(続き)だってわたしだって聞かれれば「いや、そんなに沢山読んでいるとはいえませんね」と答えます。けれども、基準値をもっと別のところに置いたら、違う評価になるはずです。幼少時からのミステリ体験で、竜騎士さんより蓄積が多い人は、全ユーザ中で推定100人程度だろうと感覚的に思います。
posted at 06:29:43

TowMemo Tow-Memo
(続き)というわけで「当初はミステリ素人のように印象づけられていた戦人が、実はそうではなかった」というポイントは、わたしは重視している。「それは何と比べてそう言えるのか」という留保を常に持っていないと、これ系のトラップにかかる。
posted at 06:29:52

TowMemo Tow-Memo
うーん、それにしても「朝のガスパール」……。あの人は読んでない可能性もあるよね。その場合、「このカタチをやったら、自然にこうなる」という、とてつもない大実験結果が得られたことになるのでは……。
posted at 06:45:38


     *


2011年01月07日(金)

TowMemo Tow-Memo
(1)竜騎士さんはミステリーを信じてはいないし、自分自身の言葉を信じてはいないし、まして読者なんてものを信じてはいません。それは一見、良くないことのように聞こえるかもしれないが、そうではないのです。「そういったものを軽々しく信じない」ことが物語作家の最低限の条件なのです。(2へ)
posted at 04:51:56

TowMemo Tow-Memo
(2)逆に言えば「それらを軽々しく信じない」ことが出来ているから彼は「作家」なのです。それはごく卑近な言い方をすれば、「ミステリの約束事」であるとか「自分の言葉は意図された通り相手に伝わるだろう」とかいった「安易なもたれかかり」を排除しているということなのです。(3へ)
posted at 04:52:10

TowMemo Tow-Memo
(3)自分が信じてはいないミステリーという枠組みを用い、信用するに足りない読者に対して、自分自身で信用できない自分の言葉というツールだけでそれでも何かを伝えることができるのか。できるのです。その激しい摩擦、シリアスな交渉があるから、あれだけ大きな「世界」が描ける。(4へ)
posted at 04:52:21

TowMemo Tow-Memo
(4)さらに卑近に例示するならば、だからこそ「信じられない相手との交渉」というモチーフが描けるし、その中から「赤字システム」という魅力的なアイデアを思いつくことができ、なおかつそれを最後には自分自身で軽やかに裏切って見せることすらできるのです。(5へ)
posted at 04:52:35

TowMemo Tow-Memo
(5)当然のことながら、ミステリーを信じていない竜騎士さんは、ファンタジーを信じていません。さまざまなものを「信じよう」という頻出メッセージが、「不信」を前提としたとき初めて出てくるものであることに注目します。これは全部「信用できないものとの交渉」なんだ。(6へ)
posted at 04:52:47

TowMemo Tow-Memo
(6)信用できない読者との間に、信用できないミステリーというものを俎上に乗せて交渉するとき、「信じようじゃないか」という提案が出るのは当然なのですね。でもそれは「信じて欲しい」からではなくて、「信じるというアプローチをいったん取ってみよう」という「交渉」なのです。(7へ)
posted at 04:53:03

TowMemo Tow-Memo
(7)ですから、「信じよう」という言葉は、竜騎士さん自身によって信じられてはいないし、「いったん信じてみた結果、そうではなかった」という結論はもちろんありうる。ウィルが言ってるのは「とりあえずテーブルにつけ」ということであって、それ以上のことではない。(8へ)
posted at 04:53:23

TowMemo Tow-Memo
(8)このことは赤字と響き合う関係にある。ドラノールが「作者と読者の信頼」と言い、ウィルが「まず信じろ」というのは、「信用ならない相手が対面に座っているテーブルに、それでもつけ」という意味。Ep2で赤字が提案されたのは、テーブルにつくのを拒否する戦人をつかせるためだった。(9へ)
posted at 04:53:35

TowMemo Tow-Memo
(9)当然のことながら、「いったん信じるというアプローチを取って検討した結果、信じるに足りないことがわかった」という結論はあるのです。その結論を得ることも「交渉の成果」なのです。そして当然「いったん赤字を信じた結果、赤字は疑わしいことがわかった」りもするでしょう。(10へ)
posted at 04:53:49

TowMemo Tow-Memo
(10)「信じる」というのは「判断を、相手や枠組みに委ねてしまう」ことではない。という認識に立った者は、「自分の言葉や読者を信じはしない」という言葉を、必ずしもマイナスには受け取らないはずです。「安易なもたれかかり」をしない、というのはそういうことでもあります。(11へ)
posted at 04:54:02

TowMemo Tow-Memo
(11)ちょっと話をずらす。最後の二択、「ミステリーを選ぶかファンタジーを選ぶか」という形で認識した人と、「アンチファンタジーを選ぶかアンチミステリーを選ぶか」という形で認識した人では、やはり読みがおのずと違っているはずです。(12へ)
posted at 04:54:22

TowMemo Tow-Memo
(12)そして「既定路線の二択を選ばされた」と認識している人と、そうでない人も、かなり読みが変わっているはずだ。一方を選んで、他方のバージョンを確認しなかった(セーブから戻って選ばなかった)人ってどのくらいいるのかな?(13へ)
posted at 04:54:36

TowMemo Tow-Memo
(13)ほとんどの人が、両方の結末を都合良く見たはず。本来できるはずのないことを。みんなの中では、両方が併存している。「両方が併存」? つまり、両方を見たことで「猫箱は閉じてるのと同じ状態」になった。両方を見て両方をその手に持っているあなたは、いわば「猫箱の中にいる」。(14へ)
posted at 04:55:00

TowMemo Tow-Memo
(14)話を戻す。ミステリーもファンタジーも、別段信じられてはいないのです。それを「信頼の喪失」としてマイナスのニュアンスで受け取るのは受け手の勝手ですが、竜騎士さんは別段そのことに困ってはいないし、「それを回復したい」という思いはまったくないでしょう。と想像します。(15へ)
posted at 04:55:14

TowMemo Tow-Memo
(15)「作者と読者の間に信頼がある」という「幻想」があるのです。それが幻想にすぎないことに直面して、それでもなお何かを語ることができるのか。そこに直面させられた読者が、なお何かをつかむことができるのか。信頼できないミステリーで、何かを語ることができるのか。(16へ)
posted at 04:55:26

TowMemo Tow-Memo
(16)「信頼してくれるはずだ」とか「とにかく信用しよう」という「もたれかかり」を、どれだけ廃することができるのか。これは「うみねこ」に限らず受け手の存在する全創作に関わることです。それを意識出来るか否かが、「作家」と「お話らしいまとまった文章を書ける人」の差です。(17へ)
posted at 04:55:39

TowMemo Tow-Memo
(17)ですから竜騎士さんはその「信用できなさ」に全く苦しんでなどいません。その「信用できなさ」は自明のことであるからです。それは自意識のある作り手にとっては大前提なんだ。その「信用できない要素の習合」に魔法をかけて「信じさせてしまう」のが作家という能力なのです。(18へ)
posted at 04:55:51

TowMemo Tow-Memo
(18)ところが彼の恐ろしいところは、それが実は「魔法」であって、個々のパーツは信頼できないものにすぎないことを、全ユーザーに開示してしまうことなのです。彼が解明してみせたのは実は「物語の正体」なんだ。(19へ)
posted at 04:56:04

TowMemo Tow-Memo
(19)書いたことが本当になるというフィーチャー。これは「書いたからってそれが本当になるのか?」という問いと表裏一体であることは論をまたない。「書いたからって本当にはならないよ」という認識があって初めて、この能力は驚きにつながる。(20へ)
posted at 04:56:17

TowMemo Tow-Memo
(20)「右代宮戦人という人がいる」と書いたからって、右代宮戦人がいることにはならないし、いるとは思ってもらえない。それが「自分の言葉を信じない」ということであり、「読者を信じない」ということ(もたれかからないこと)の、ごくわかりやすい卑近すぎる例。(21へ)
posted at 04:56:29

TowMemo Tow-Memo
(21)それを、本当にいるかのように思わせてしまうのが、作家という能力であり、筆ひとつで世界を作るということであり、つまり「魔法」であって、それができるから彼は大魔女なのです。軽々しく信じてしまう人間にはそれは決してできないのだ。(1へ戻る)
posted at 04:56:45



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 Ep7をほどく(11)・そしてアンチミステリーへ

■目次1(犯人・ルール・世界設定)■
■目次2(碑文・赤字・勝利条件)■
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3 コメント

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駄文ですが。 (案山子)
2011-01-08 17:17:31
このサイトを見ると毎回毎回驚きます。そして満足します。管理者さんの言葉はどれ一つをとっても物語をさらに美味しくしてくれるのです。信用できるところも疑ってしまうところも全てです。

私はEP4までやった時うみねこは卑怯だズルいなと思いました。一人で公式板も見ずチクチク推理紛いをしていました。その後このサイトを見つけEP8・翼をやった今そんな事は思わなくなりました。管理者さんの言葉に本当にワクワクしたからです。

管理者さんは海猫箱から真実(と思われる一つの仮定、もしくは唯一かもしれない真実の過程)を見つけるのがとても上手です。そんな管理者さんを私は航海者の魔女のように見えて仕方ありません。

4年かけて読んだ物語もこれで終わり(礼があると思いますが)で、今私の気持ちは混沌としています。寂しい物足りない、という気持ちより私はうみねこを読んで果たして何を見つける事が出来たのかという変な自問自答の日々を送っています。管理者さんのEP8へのお言葉を是非楽しみにしています。今ならどんな言葉でも楽しめると思っています。


長々と下手くそな駄文、大変失礼しました。
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Unknown (鉄釘)
2011-01-09 01:01:34
EPを読み終わった後、この場所に来て頭を冷やし、コメントしてしまうのが最早習慣なので、お許しください。この連休でのんびり楽しもうと思っていたら、結局いつも通り一日で終わってしまいました。クイズがあったので歩みは多少鈍りましたが。

物語の流れの中で、戦人や縁寿をはじめとする各キャラクターの立ち位置が変遷していく過程は、たしかにTownmemory様の考察通り、「ミステリー対ファンタジー」の二極構造で捉えるのが困難な描写であるように思います。「アンチファンタジー対アンチミステリー」という対立軸を加えることによってより立体的な把握が可能になる。EP8を開く前に整理しておけたので大変助かりました。

上の例にもあるように、Townmemory様の考察において、もっとも素晴らしいのは各EPの事象に対し、一段上からの視点で、物語を分解し、自身の体系の中に組み込んでいくその姿勢であるように思います。
Twitterのつぶやきは端的にそれを表しています。すなわち、物語を構築していく人間の視点。各部品が有する意義、それらを組み合わせたときの効果。適用される諸条件。そういう観点から考察することによって、各事象や各EPへのその場限りの反応とは確実に一線を画する言説を展開している。EPを重ねるごとに、「朱志香犯人説」を中心とした言説の体系は厚さを増しているように思います。
そういった議論の仕方を「我田引水」と形容し、批判する向きもありますが、およそ体系化とはある程度そういうものであるし、その体系化によって誰かを攻撃するというスタンスをTownmemory様は採っていないのだから、姿勢としてフェアです。
そしてなにしろ、何度かコメントしたことではありますが、この「朱志香犯人説」は、単なるスプラッターな惨劇ではなく、一つのドラマとして十分に味わえるものだと思うのです。これはあくまで、私という読み手個人の感想ですが。

長く、拙い文でのコメントではありますが、本日の魔女称賛を終わらせていただきます。EP8をいかに取り込んで考察なさるのか、楽しみにしております。
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初めてコメントさせていただきます (frnb)
2011-01-10 00:30:25
そういった意味ではベルンカステルがつごう3回も「いい人のフリ(改心したフリ)」をさせられていたのは、そういううかつに信用させない仕掛けのひとつでもあったのですね
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