MATTのひとりごと

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ピアノ曲をウクレレで(2013年5月19日)

2013年05月19日 | ウクレレ・タブ譜

この記事はNUAの2013年5月例会でお話をした内容に基づいています。

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ジェイク・シマブクロがソリストとしてデビューする前に属していた「Pure Heart」というグループがありました。
このグループはジェイクとパーカッションのロパカ・コロンそして最近はハーブ・オオタ・ジュニアと良く組んで演奏活動をしているジョン・ヤマサトの三名で構成されていて、アルバムを3枚出したのちメンバーが一人入れ替わった「COLON」というグループになりましたが、このグループが一枚のアルバムを出しただけで解散し、それに伴ってジェイクがソロ活動を開始して現在に至っています。
余談ですがピュア・ハート時代からこれらグループのマネージャーを務めていたカズサ・フラナガン氏はジェイクの独立に伴い彼のマネージング会社を設立したのですが、10数年を経た昨年この会社を離れました。

私のサイト「ジャム・セレクションズ」内のジェイク・インタビュー記事で触れていますが、Pure Heartのセカンド・アルバムPure Heart 2にただ一曲日本語のタイトル曲が含まれていました。この曲は「とかだ」と平仮名で書かれていたのですが、英語圏の人たちがこの文字を読めるとは思えないので、インタビューでいろいろと訊ねた次第です。

それによりますと彼がヨハン・セバスチャン・バッハのオルガン曲「トッカータとフーガ ニ短調」にヒントを得て書いたオリジナル曲とのこと。(たしかに彼が発音すると「トッカータ」は「とかだ」と聞こえます。)

クラシック曲、セミクラシック曲には美しいメロディーの曲が数多く存在しますので、それらをポピュラー曲として演奏したり歌ったりするケースがこれまた数多く見受けられ、古くは(!)「舞踏への勧誘」が「レッツ・ダンス」に、「ある晴れた日に」が「恋は素晴らしきもの」に、等々オリジナルのクラシック曲を超越した作品も生まれています。

そしてこの「とかだ」もオリジナルとは全くことなるジェイクの作品として皆が演奏していますし、おそらくほとんど誰も元になった曲のことは知らないと思います。

このようにオリジナルのクラシック曲をヒントにして生まれて、別のタイトルをつけている曲は問題ないのですが、オリジナル曲のタイトルをつけながらオソマツな内容を持つアレンジもたくさん見受けられます。

あるウクレレ雑誌に「ベートーベンの第九交響曲を弾こう」という見出しがあったので覗いてみてガッカリしました。
ウクレレで交響曲を弾く、となればいくつかのパートに分かれてアレンジされた交響曲のコンポーネントを弾くことによって総合して「交響曲」のイメージを生んでいるのではと期待して覗いたのですが・・・
ご存じのように「交響曲」は基本的に四つの「楽章」をもち、それぞれが特長を持つ楽章であるので、期待するのは間違っていたのですが、なんと「第九交響曲」の第4楽章の、それもシラーの歌詞の付いた「歓喜の歌」のしかも冒頭の部分のみがわずか二部のウクレレ合奏アレンジとして掲載されているだけなのです。

これをもって「ベートーベンの第九交響曲を弾こう」と謳うのはあまりにも読者をバカにした記事ではないでしょうか。

その意味からもジェイクが「とかだ」と名づけたのは正解ですね。

さて、クラシック曲やセミクラシック曲をウクレレに弾く場合、私の場合は交響曲や協奏曲からのアレンジはなかなか手ごわいので(汗)、ピアノ曲を対象としています。

先ほどのヨハン・セバスチャン・バッハは「平均律クラヴィア曲集」を出しています。「クラヴィア」というのは「チェンバロ」や「ピアノ」などの鍵盤楽器を指しますが、「平均律」というのはちょっと誤訳に近いもので、もともとは「良く調律された」すなわちどの調子(キー)でも弾けるように良く調律されていることを意味しますので、十二平均律以外の調律法もあるのです。
そしてこの曲集はハ長調、ハ短調から始まってイ長調、イ短調までの24のキーに対応した「前奏曲」と「フーガ」で構成されていてその第一曲「ハ長調の前奏曲」が最も有名で、グノーの「アベ・マリア」の伴奏にも転用されています。

このピアノ演奏用の楽譜と

演奏をご紹介しましょう。

一方2009年に亡くなったウクレレ歴史研究家で演奏者でもあるジョン・キングのアレンジによるクラシック曲集が出版されています。

彼の曲集には「なるほど!」と納得させられるアレンジがたくさん含まれているのですが、この曲についてはちょっと「???」と感じます。
何よりもハイG楽器という制約のもとにアレンジしているために下の楽譜でもお分かりいただけるように音の折り返しが馴染みのある流れとは違うのです。

従ってこれの「」も曲の雰囲気は感じられますがちょっと違和感を覚えます。

ご存じのようにピアノ鍵数はふつう88個すなわち7オクターブ以上の音域を持っています。
これに対しウクレレの場合ですとハイG調弦では2オクターブ程度、ローG調弦のものでも2オクターブ半程度の音域しか有りません。

もちろんすべてのピアノ曲が7オクターブの音域で演奏するように作られているわけではないので、曲を選ぶことである程度ウクレレでのアレンジも可能になります。

「音域を拡張する」手段として以前ERUすなわち「超音域ウクレレ」というものを開発?いたしました。

これはバリトンウクレレにクラシック・ギターの1,2,5,6弦を張り、1弦からA-E-C-Gすなわち普通のウクレレと同じ音名ですが実際にはCとGが1オクターブ低くなるように調弦することで低音側を1オクターブ低くすることを目的としたものです。

従来より1オクターブ広がったという利点を生かし、さらに三台のウクレレによるアンサンブルの形にすることで、ピアノ曲の特長をできるだけ再現するアレンジをして見ました。

クラシック曲ではないのですがピアニストのスコット・ジョプリンが作曲したラグタイムの名曲「ジ・エンタテイナー」です。
まず、オリジナルの楽譜の一部です。

冒頭から音域の広い様子が分かると思いますが、これをERUを含めた3パートにアレンジいたしました。ERUのパートの五線譜は直感的に理解しやすいように1オクターブ高く表記しています。

まず作曲者自身のピアノ演奏をお聴きください。

次は私たちのユニットRYMです。動画では4名写っていますが左の3名による演奏です。

いかがでしょう?ある程度オリジナルの雰囲気が得られたのではないでしょうか。

一方、このようなアンサンブルではなくソロの場合ですとたとえ簡単なピアノ曲だとしてもアレンジに苦しみます。

例としてショパンのエチュード作品10の第3番の冒頭部分で「別れの曲」という別名のついている小品があります。
これをウクレレ演奏用にアレンジするにはまず「移調」をする必要がありそうです。
どんな曲でもオリジナルの調で演奏できれば最高なのですが、残念ながら音域の限られているウクレレの場合はその「音域」を考慮した転調が必要です。
この曲の原調はホ長調で書かれています。も聴いてください。このyoutubeは「別れの曲」の部分だけでなく最後まで演奏しています。

残念ながらウクレレではこれだけシャープやフラットの付く調は苦手なので、移調することにします。
一番近い調が半音高いヘ長調なのでこれに移調してピアノ譜自体を書き直しました。おそらくヘ長調による「別れの曲」のピアノ譜は他には存在しないかもしれませんね。

さてここからが問題です。
右手のメロディーだけをウクレレ用に置き換えるのでしたら比較的簡単なのですが、できれば右手の低音側による分散和音の音も欲しいところです。

この音を無事に加えることができたところで、次の問題はタブ譜の書き方なのです。
いちばん愛用者の多いパワータブ(PTB)でこのアレンジを記載すると、4/4拍子で書いた場合の二分音符と八分音符の書き分けがむずかしく、「タイ」記号」で音符を結んだり二段の楽譜にすればできないことはないのですが演奏が難しくなります。

そこでこのような記譜法を考えました。

すなわちメロディー部分を黒色、分散和音部分を赤で表記することで、二分音符も八分音符も明確になります。(そのとおり演奏できるかは別として・・・汗)
カラー表記ですとコピーする場合に高価になるのでグレイスケールで表記する方法もあります。これですと一枚10円でコピーできることになります。

さて、このタブ譜でうまく弾けるでしょうか?プアプアのインストラクターであるジーナ嬢に挑戦してもらいました。


2013年5月の一時帰国の際にNUA例会に出席させていただく連絡をしたところ、何か話をして欲しいというご希望がありましたのでこの「クラシックをウクレレで」というテーマでお話をさせていただこうと思ったのですが、ご存じの通りNUAでは畑中さんが何回にも渡ってこの分野のレクチャーをされていて、ここでご紹介した「別れの曲」もすでにご紹介いただいているので


別な曲を選ぶことにいたしました。

実は日本に居るときにはピアノの楽譜が山のように(というか山積みのまま放置されて)あったのですが、こちらハワイには全く置いていなかったので、急遽ネットでいろいろなピアノ曲集を購入しました。

この写真にある10冊を含めて全11冊602曲のピアノ曲(右下だけはフルスコアのオーケストラ曲ですが・・・)を集めて「あーでもない、こーでもない」と検討した結果一番表面に載せたシューマンの「子供の情景」から2曲選ぶことにしました。

1曲は有名な「トロイメライ」で


もう1曲は「見知らぬ土地と人々」です。

当日はまず曲の紹介をしてから

みるき~さんに「ピアノ譜」の演奏をしていただき

NUA会員の皆様にはウクレレタブ譜による演奏に挑戦して頂きました。

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話は80年以上前に飛びますが私の母は一風変わった人物でした。(お前の母親だから当然だ、なんて言わないでくださいね。)
女学校時代に音楽の教師から「歌が上手」と誉められたのに気を良くして、嫁入り道具として普通であれば箪笥や鏡台を希望するところなのに、なんと「ピアノを一台」と希望したとのこと。

本人が少しでもピアノが弾ければともかく、全く弾けないということは生まれてくる子供にその夢を託すことになった、というシナリオに私が気づいたのは私が結婚して子供ができてからのことでした。
私自身が期待したほどの腕前でなかったことからでしょうか、今度はわたしの子供すなわち母から見ると孫に夢を託し始めたのです。もっともそれもすぐに挫折したようですが。

ともかく母親の夢を託された小学生の私は小学校の音楽の先生のところに毎週レッスンに通い、小学校を卒業してからは地元に住んでいた「偉い作曲家の先生」のところに通わされました。
その頃は全然知らなかったのですが、なんとわが国でも有数の作曲家であったことが後日わかりました。
とにかく八つの交響曲をはじめ協奏曲、ピアノ曲、声楽曲など多数の作品を遺した作曲家で、門下生には指揮者の大町陽一郎、作曲家の石井歓金井喜久子、編曲家であり、クラシック・ギタリストの小松素臣らがいるという「偉い先生」だったのです。
なんでも東京音楽学校在任中に上司と合わずその職を投げ打ったという信念の持ち主だったようで、ロクに予習もしていかない私が相手にされないことも無理からぬところです。
・・・といったいきさつで私のピアノのレッスンは「卒業(笑)」いたしました。

社会人になってからはヤマハのエレクトーン教室に通い無事「指導グレード5級」を取得しましたが、自宅には母親が持ってきたアップライトのピアノに加えてヤマハのグランド・ピアノも増えて、時々ポツンポツンと弾いていました。


ハワイに来てみるとウクレレはどこにもあるのですが、ピアノは滅多に見かけません。
たまに見かけても自由に弾ける状態ではないので諦めていました。

昨年の一時帰国時に楽器店でミニサイズのグランドピアノを見かけました。
そして「囲む会」でも人気を博しました。

できればハワイにつれて帰りたかったのですが、ミニとは言っても結構大きく重たいのでみるき~さん宅に留学させていただきました。

今回のNUA例会でみるき~さんにウクレレアレンジ曲の原曲であるピアノ曲を演奏していただくために、当日は重たい楽器をわざわざ会場まで運んでいただいたのですが、なんと会場にフルスケール鍵盤の電子ピアノがあったことをそのときまで知りませんでした。
この写真はみるき~さんがそれを弾いているところです。

でも、折角運んでいただいたので「親睦会」ではミニに登場してもらい、

最後の「森の小径」ではみるき~さんにミニでソロまで取っていただきました。

この「ミニ・グランド・ピアノ」と「ウクレレ・フェスティバルに向けた練習」



がこの例会の思い出になりました。

最後にさきほどのジーナ嬢が弾く「トロイメライ」をお聴きください。いずれの曲もアレンジした本人がマトモに弾けないので頼んだ次第で・・・・(汗)

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コメント欄でyonakaさんに誉めていただいたジーナ嬢の演奏をもう一つだけご紹介します。
曲は「ザ・クリスマス・ソング」です。彼女のスゴイところはほとんど初見で弾いてしまうことで、他の曲もそうですがもっと時間を掛けて練習すれば完璧になること間違いなしでしょう。

(2013年

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12 コメント

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内容盛りだくさんですね。 (モリパパ)
2013-08-18 05:53:43
ウクレレで、クラシック曲等演奏すると一つ間違えると際物になりますね。
そういう意味で、RYMの演奏は低音を入れたためよくできていますね。
ジーナ嬢の演奏は、目をつぶるとウクレレの音と思えない気がします。
以前、ギターの高音の音をピアノの音かと勘違いしてしまう私なので当てになりませんですが・・・。
Pure Heart、再度結成してもらいたいバンドですね。
若さ溢れるCDはその当時よく聞いていました。
今ならどんな音楽をしてくれるのか楽しみです。
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美しいクラシック曲を (MATT)
2013-08-18 06:41:17
ウクレレで弾きたいという気持ちは当然ですが、「テキトー」なアレンジでその曲名を名乗るのは作曲者に対する冒涜だと思います。(それだったら題名を変えるべきです)

ウクレレの持つ制約のなかででもできるだけの努力が必要ですね。

オータサンが「Song For Anna」をはじめて演奏したときには多くの人たちがハープの音と思ったようですね。

(だから「ハープ・オータ」と名乗ったのです・・・ウソ)
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ありゃ・・・ (あたごウクレレ)
2013-08-18 17:09:42
シャトーでのRYMさんの演奏でしたね。素晴らしかったです。
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会場が異常に静かになったことを (MATT)
2013-08-18 18:34:10
思い出しました。

おそらく今まで経験されたことのないアンサンブルだったためではないでしょうか。演奏の中身はともかくとして・・・・
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そうそう (蘭子)
2013-08-19 21:22:23
静かなのでふと会場を見ると・・・皆さんの目、目、目で焦ったのを思い出しました。
一瞬、手が震えたらどうしようかと思いましたけど大丈夫でした。

緊張しましたけど、過ぎてしまえば楽しく素敵な体験でした。
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この曲を何箇所かで演奏した中で (MATT)
2013-08-20 02:23:43
ここでの演奏が一番まとまっていたのでアップいたしました。

やはり客席との一体感が有ったのでしょうね。
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余裕の表情で・・・・ (あたごウクレレ)
2013-08-22 06:24:46
蘭子さん 余裕の表情でしたよ。笑みを浮かべながら・・・・RYMは素晴らしいユニットですね。またどこかでご一緒できるといいですね。
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日本に居たときには (MATT)
2013-08-22 08:46:03
私が結構うるさかったのでお二人が辟易されたと思いますが、移住してからはお二人のほうがしっかりと練習される(・・・・というか私が全く練習しない)ので、私がオタオタしています。
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そうでしたか (蘭子)
2013-08-22 21:45:22
余裕の表情の陰にはMATTさんの厳しいご指導が。
・・・その割には出だしがズッコケてますね、私。

MATTさんとのRYMの練習は毎回楽しみでした。
やっぱりMATTさんがいらっしゃらないと!
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オハナのときには (MATT)
2013-08-23 01:40:39
お二人が順番に弾くイントロに聞き惚れてしまい、自分の出番を忘れてすっかり忘れていました。

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