日々礼讃日日是好日!

まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

寒の入りの日の出早まり、夕暮れ空は耀く

2016年01月17日 | グルメ
 小正月がすぎた今週末、故郷から取り寄せた新春の味覚セットが届いた。その中の珍しい「紅ちまき」というのがこの季節にふさわしくて、地元の自然水で打たれたという「彩翠うどん」との紅白の対でおめでたいのだという。ほかにはアスパラ菜と呼ばれる菜の花の一種らしい春先もの漬物に、おまけとして金箔入りの梅昆布茶が入っていた。
 若いころは、このような田舎からの食べ物をとくに気にとめることもなかったけれど、この年代になってみて季節の折々に縁起物や旬のものをいただけることが、本当に豊かでありがたく感じるようになってきた。美味しく味わうだけでなく、やや大げさにいえば連綿と続いてきた四季の暮らしの遺伝子のなかに、自分の存在も連なっていることを確かめて安心するような感覚なのかもしれない。こちらでの暮らしも十代までの故郷ですごした歳月よりも、はるかに長くなっているのだから。

 ここ数年のことになるが、年末に地元もの食材を買い出しにゆき、それをもって口にすることで新春を迎えることにしている。今年用に求めたものはというと、まずは伊勢原の農協市場まで車を走らせ、大山山麓の子易地域特産の「おおやま菜漬」を手に入れた。これは野沢菜よりも青臭くて歯ごたえがあり、何よりも野趣にあふれてピリッとした辛みがあるのが特徴で、この寒さが増す時期に元気になりたくて食べてみたくなるのだ。三袋求めたあとに店内を巡っていると、おとなり秦野市特産品を見つけ、そのシンプルなラベルにも惹かれた縁起物の落花生をラッキーとばかりに購入することにした。

 ちかくの太田道灌墓を参っての国道246号帰り道、屠蘇散を浸すための地酒を求めて、厚木郊外船子で県道にぬけ、相模川を渡るとふたたび246号高架下をクロス通過、右折してしばらく進んだ海老名下今泉の泉橋酒造へ。
 敷地内に入るとすぐに新酒寒仕込み時期特有のほのかなよい匂いが漂う。蔵造りの直売コーナーで新酒を一本購入。こちらの若主人は酒造りについての地産地消を徹底して、酒米を地元の田圃で育てることから始めている。相模原市内の望地新田や上大島にも栽培契約農地があるという。さらに自家製で精米も行い、仕込み水は丹沢山系伏流水を敷地内地下からくみ上げ、アルコール添加を行わない純米酒醸造生産を徹底しているのがすごい。かつては地酒では普通に行われていたことを、この時代に復活させる試みを実現させてきたのだという。
 海老名の今泉・上郷周辺はもともと“海老名耕地”と呼ばれる穀倉地帯で、旧国分寺史跡ちかくには天平時代の水路の遺構、逆川跡も残っていて、米作りの歴史そのものは随分と古くまで遡る。時間の流れを大きく捉えるとしごくまっとうな試みと納得するが、それにしてもこの効率化社会の時代、江戸安政年間創業のこの酒蔵元のドンキ・ホーテのような姿勢を応援したくなる。

  
 というわけで新春を迎えるあたって、地元で買い求めた品々を並べて記念写真。

 

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