GLAY Story

GLAY関連の書籍を一つにまとめてみました。今まで知らなかったGLAYがみえてくる――。

YOSHIKI来訪①

2009-09-15 | YOSHIKI来訪






 GLAYが天国へと登る階段。それはある晩突然、目の前に降ろされた。

 それは、忘れもしない1993年10月17日。場所は市川のCLUB GIO。千葉県市川市、総武線市川駅前にある地下のライブハウスだ。その客席に、X JAPANのYOSHIKIが登場したのだ――。


●気合入るメンバー

 10月2日の新宿LOFTでのライブを終えると、次のライブは10月17日の市川CLUB GIOのライブが待っていた。その間、通常なら3回のスタジオ入りだったが、5回もスタジオ入りした。

 「気合入れていこうよ。これがメジャーデビューできるかどうかの境目なんだから」 エクスタシーの関係者が見に来ることを知ってから、メンバーそれぞれのテンションが高くなっていた。

 この日のライブはメディアユース、ビジョリーピックルス、キルスレイドといった派閥に属さないバンドとのシリーズギグのひとつで、40人くらいは客が入っていた。

 「今日はキメてやろうぜ!」と、メンバー全員が興奮していた。当然、曲順も前日の練習スタジオで決めた。その日のライブに関しては、完全な形で迎えることができた。

 一人ひとりがメイクも丹念にして臨んだ。「どうだ、今日の俺は?」とお互いに確認し合い、やる気満々だ。

 この日のライブは『LOVE SLAVE』から始まった。ドラムのAKIRAは、曲に合わせて力強いビートを刻みながら、ライブハウスの入り口からの人の出入りをチェックしていた。


●YOSHIKI登場

 3曲ほど終えた時だ。

 ライブハウスのドアが開き、金髪を肩までおろしてサングラスを掛けた長身の男が入ってきた。その周りをSPと思われる男が囲んでいる。そして、ファンの間にダークスーツの男が6人ほど並んで座り、そのど真ん中に鮮やかな金髪の男が座った。

 その人は、紛れも無くX JAPANのYOSHIKIだった。

 YOSHIKIが海外から帰国して成田に着いた時、たまたま日程とタイミングがいいということで、スタッフから渡されたデモテープを聴いて気になっていたGLAYのライブを見に来たのだ。

 YOSHIKI主宰のインディーズレーベル「エクスタシーレコード」はGLAYにとって夢の入り口、憧れのレーベルだった。LUNA SEAも、もちろんXも、このレーベルから世に羽ばたいた。

 ライブハウスの人気バンドが軒並み参加していたレーベルだ。アマチュア仲間の間では、「エクスタシーに誘われたらデビューは間違いない」ということになっていた。

 インディーズレーベルでも、名門中の名門である。

 その市川CLUB GIOでのライブの少し前、GLAYは谷口さんというスポークスマンから「君たちのライブ見せてもらったよ。良いね、なかなか」という感じで声はかけられていた。

 接触はそれだけだったが、GLAYのメンバーとしては、とりあえずエクスタシーレコードに声だけでもかけられたということで大喜びしていたところではあった。

 でも、まさかYOSHIKI本人が来るとは、メンバーの誰もが思っていなかった。


●YOSHIKIの待つ楽屋へ

 その日の予定の8曲を終えると、全員が楽屋に飛び込むことなく舞台のソデで落ち合い、タバコを一服しながら深呼吸した。

 「来てる、来てるよね。どんな話になるのかな」 AKIRAがそう言うと、TAKUROが「大丈夫だよ。普通にしてればいいよ。YOSHIKIさんにちゃんとした挨拶をすることからスタートだからさ」

 TERUはTERUで、「大丈夫かなぁ。俺、ちゃんと挨拶できるかな」などと頼りないことを言っている。

 通常、ステージが終わると自分たちの機材を片付けて次のバンドに舞台を引き継ぐが、YOSHIKIが楽屋に来ていることを伝えられたメンバーは、機材を残したまま楽屋に行ってしまった。

 そのため、スタッフの由貴さんとHISASHIの兄の薫さんが急遽、ステージの後片付けをすることになった。

 しかし、楽器のことやギターの配線などわからずチンプンカンプン。それを見かねたキルスレイドのメンバーたちが「いいよいいよ、俺たちが手伝ってやるから」と手を貸してくれた。

 GLAYのメンバーがステージから楽屋へと続く細くて長い通路を通って楽屋に向かっていると、その途中にダークスーツの男たちに囲まれるようにしてYOSHIKIが立っていた。

 「なんだか怖いなぁ」と思いながら、GLAYのメンバーはゆっくりと近づいて行った。


●エクスタシーの事務所へ

 「はじめまして」 YOSHIKIは、GLAYのメンバーにフレンドリーに声をかけた。

 YOSHIKIはニコニコしながら、「話は聞いてるよね。事務所で待ってるから」と言った。そして、歩きながら振り向いて再び「事務所で待ってるからね。来てくれるよね」と言って立ち去った。

 そこに、ようやく舞台を片付け終わった由貴さんと薫さんがやってきた。

 TAKUROは彼らに緊張した面持ちで、「YOSHIKIさんが俺たちと契約したいって言うんだよ。今からすぐ代官山の本社に行って来るから、とにかく後はよろしく」と言って、機材車へと向かった。

 AKIRAも「俺たち、ひょっとしたら契約できるかもしれないから、行っちゃうけど頼むね。キルスレイドのボーカルのTOKIさんにはよろしく伝えておいてよ」 そう言って、メンバーとともに機材車に乗り込んだ。

 そして、GLAYはエクスタシーレコード関係者の車の後について、代官山へと向かった。


●打ち上げで祝杯

 残された由貴さんと菫さんで全部の後片付けをし、その日の出演料やチケットの精算を済ませてCLUB GIOを出た。

 そして、ジョリーピックルスやキルスレイドのメンバーに「すいません。YOSHIKIさんにうちのメンバーを連れてかれちゃったんです。申し訳ないんだけど、打ち上げには出られるかどうかわからないんです」と謝った。

 でも、キルスレイドのメンバーが「おめでたい話じゃない。いいよ、気にすることないよ。俺たちの車で一緒に行こうよ」と声をかけてくれたので、由貴さんはキルスレイドの車に乗り、打ち上げ場所の高円寺の赤ちょうちんへと向かった。

 いつもなら17歳という自分の年齢のことも忘れ、「今日のライブは最高だったわ。じゃんじゃん飲んじゃうぞ!」 こう言ってガブガブ飲んでしまう由貴さんだったが、その日は妙に落ちつかない。

 「GLAYも良かったよね。エクスタシーレコードと契約できれば、もうメジャーデビューしたも同然だよ。おめでとう!」 他のバンドのメンバーたちがお祝いの言葉を言ってくれる。

 由貴さんは、嬉しさと驚きで舞い上がっていた。

 冷静さを取り戻そうと「でも、まだ決まったわけじゃないですから」と言うと、「だって、YOSHIKIさんから来た話なら絶対に断れるわけないし、断る理由もないよ」というメンバーたち。

 赤ちょうちんではまるで、GLAYのデビューがすでに決まったかのように乾杯が繰り返され、祝杯が続いた――。





【記事引用】 「胸懐/TAKURO・著/幻冬舎
         「Beat of GLAY/上島明(インディーズ時代のドラマー)・著/コアハウス
         「私の中のGLAY/清水由貴・著(インディーズ時代のスタッフ)/コアハウス
         「Message for GLAY ~GLAYへの伝言~/アース出版局


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