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3年毎に開催される芳ヶ江国際ピアノ・コンクール。「此処を制した者は、世界最高峰のS国際ピアノ・コンクールで優勝する。」というジンクスが在り、近年、覇者で在る新たな才能の出現は、音楽界の事件となっていた。
養蜂家の父と共に各地を転々とし、自宅にピアノを持たない少年・風間塵(かざま じん)15歳。嘗て天才少女として国内外のジュニア・コンクールを制覇し、CDデビューもし乍ら、13歳の時の母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜(えいでん あや)20歳。音大出身だが、今は楽器店勤務のサラリーマンで、コンクール年齢制限限り限りの高島明石(たかしま あかし)28歳。完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される、名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。
彼等以外にも、数多の天才達が繰り広げる競争という名の自らとの闘い。第1次から3次予選、そして本選を勝ち抜き、優勝するのは誰なのか?
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第156回(2016年下半期)直木賞 を受賞した、恩田陸さんの小説「蜜蜂と遠雷」を読了。恩田さんと言えば、1992年にデビューし、今年で作家として25年目を迎えたヴェテラン・クラス。彼女の名前は当然知っていたし、其の作品を手に取った事も在る。でも、途中迄読んで惹かれる物が無かったので、読むのを断念。詰まり、恩田作品を読了したのは、今回が初めてという事になる。
世間から注目を集めている「芳ヶ江国際ピアノ・コンクール」に出場する人物達の姿を描いた作品。風間塵、栄伝亜夜、高島明石、そしてマサル・C・レヴィ=アナトールという、キャラクターや経歴が大きく異なる4人のコンテスタント達の目を通してストーリーは展開して行くのだが、音楽に興味が薄い自分からすると、「ピアニスト達は、こういう“思い”を持ったり、又、“風景”を思い浮かべたりし乍ら、鍵盤を叩いているのかなあ。」と、とても興味深く思ったり。
4人を含めた登場人物達が皆、見事にキャラ立ちしている。コンテスタント達が思い浮かべる風景の描写にくどさを感じないでも無いが、ストーリー展開の巧みさがそういった“欠点”をカヴァーしている。直木賞受賞も納得の作品。
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人間の呼吸は「吸って、吐く」のではなく、「吐いて、吸う」のが基本なのだそうだ。赤ちゃんはこの世に生まれてくる時、大声で泣き叫ぶ。出てくる時にまず「吐く」のだ。そして、人生の最期には、すっと「息を引き取る」。最期には「吸う」のだ。
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総合評価は、星4.5個とさせて貰う。