「青山ホークス計画」から全ては始まっていたのか？

ホークスの井口資仁選手が自由契約選手となり、メジャーリーグ移籍を目指す事となった。昨年、小久保裕紀選手が、”無償トレード”でジャイアンツに移籍しており、２年連続でチームの主力選手を失った事となる。この事だけでも尋常ではないが、２人とも”無償”、つまりホークスからすれば、「金銭的にも戦力的にも、全く見返りが無い。」形で移籍を認めた訳で、実に異常な事態で有ると言える。

小久保選手の無償トレードの背景には、ホークスの温情的措置が在ると言われた。再三の故障により年俸に見合った活躍が期待出来ない彼を、移籍金ゼロでジャイアンツに引き取って貰い、その代わりに彼の年俸は維持して貰える様、ホークスが願い出たというものだった。

今回の井口選手の場合は、昨年オフに彼が結んだ契約で、「オーナー或いはオーナー代行が退任した場合は、自由契約選手になる事を認める」という条件が含まれており、高塚前オーナー代行が９月に辞職した為に、自由契約を求めた彼の要求をチームとして呑まざるを得なかったという事である。

選手に寛大なチームと言ってしまえば聞こえは良いが、自分の知る限りでは他のチームでこの様な例を聞いた事も無く、ホークスでも選手の言い分がこれだけ通して貰えたのは、この２人以外には無かったと思う。この”特別待遇”は何に起因しているのだろうか？

ここからはあくまでも推測の域を出ないのだが、自分はこう考える。この２選手の共通点は、共に青山学院大学出身という事。そして、中内正オーナーも同大学の出身である。思い返せば、井口選手をドラフトで獲得した時だったと思うが、当時オーナー代行という肩書だったこの二世ぼんぼんは、入団会見という公式の場で次の様に言い放ったのを今でもハッキリと覚えている。

「（小久保選手、そして今回の井口選手の獲得で）将来的に”青山ホークス”を目指したい。」

こいつアホか！と思った。中内正氏と言えば、当時オーナーだった中内功氏の次男であり、将来的にオーナー職に就く事は誰しも疑う余地が無かった立場。謂わば次期社長の人間である。一般企業に置き換えてみれば、「私は○○大学の出身だから、将来的にはこの会社を○○大学出身者で埋め尽くしたい！」と社長が公の場で明言したのも同然で、こんな発言をすれば他大学出身社員のモチベーションは下がってしまうのは自明の理ではないだろうか。

実際に、入団以降も中内Ｊｒ．はこの両選手にかなり目をかけていたという話を良く耳にした。他の選手達にとっては、決して面白い状況ではなかっただろうし、チーム内がこの事で分裂してもおかしくないと思えた。

しかし、Ｊｒ．の”アホ発言”にも拘らず、ホークスは強いチームと成り上がっていった。”不条理”をも跳ね返すだけの精神と理性を持った選手が多かったと言えるのかもしれない。勿論、王監督の地道なチーム作りも在っただろう。ホークスは福岡県民から熱烈に愛されるチームとなったのである。

ところが、この様な熱烈なファンを、チームは「２年連続で主力選手を無償で放出」という形で裏切った。当該両選手と中内Ｊｒ．との過去からの経緯を考えると、この不可解で大甘な放出の根っこには、過度な「先輩＆後輩の馴れ合い」が在った気がしてならない。結局は、入団から今に到る迄、脈々と「青山ホークス計画」の呪縛がチームを取り巻いていたのではないかと。ファンに対する中内Ｊｒ．の説明責任が問われていると思う。

アホな首脳にチームをかき回されている王監督や選手達、そしてファンが気の毒でならない。