ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「よっつ屋根の下」

2016年10月10日 | 書籍関連

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勤め先の大病院不祥事隠蔽を批判し、犬吠の地方病院に飛ばされた父。製薬会社に関係の深い実家を気にして、父に付いて行こうとしない母。都会暮らしが好きなのに、父を1人に出来なくて、付いて行った僕。「御母さんを責めないで!」と言い乍ら密かに自分を責めていた妹。仮令自分は離れても、何時迄其処に在って欲しい、僕達の「家」。其れは、我が儘だろうか。家族で居るのが大変な時代の、親子4人の物語。

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大崎梢さんの小説よっつ屋根の下」は、「家長正義感から勤め先の大病院の不祥事隠蔽を批判した事で、結果としてバラバラになってしまった家族の10年間。」を描いている。最初は「父と息子」、そして「母と娘」という“2つの屋根の下”で暮らす家族だったが、10年という時を経て、其れ其れが違う屋根の下、即ち“4つの屋根の下”で暮らしており、其れがタイトルになっている訳だ。

 

「普通の家庭に生まれた父」と「良い所の御嬢さんだった母」。あらゆる面で異なった環境の2人が結び付く事になった背景には、尊敬していた父(主人公の僕からすれば祖父。)に裏切られた母の“意趣返し”的な思いも在った。そういう複雑な思いを持ち乍らも、「愛する父に認められたい。期待に応えたい。」という思いも捨てられず、“形式”に拘泥してしまう。自分からすれば「下らない形式に捉われず、自分に素直に生きれば良いのに。」と思ってしまうのだが、そういう意味では不器用な人なのだろう。

 

「息子→父→母→娘→息子」と、が変わる其の視点が変わる。其れにより、“新しい事実”が見えて来たり、“別の角度からの見方”に触れたりし、作品世界にどんどん引き込まれて行く。

 

予定調和的な落ちを予想していたので、意外な結末では在った。でも、形式に拘泥されていた母が、其の形式から解放されたというのは、家族にとって喜ばしい事なのだろう。

 

総合評価は星3つ


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