川上弘美の短編連作集『ニシノユキヒコの恋と冒険』。
その中の『パフェー』より・・・
『 恋とはなんだろうか。人は人を恋する権利を持つが、人は人に恋される権利は持たない。
わたしはニシノさんに恋をしたが、だからといってニシノさんがわたしに恋をしなければならないということにはならない。
そんなことは知っていたが、わたしがニシノさんを好きであるほどはニシノさんはわたしを好きでないことがつらかった。
つらかったので、ますますニシノさんを恋しくおもった。』・・・
↑ by:夏美さん
おなじく『おやすみ』より・・・
『 ユキヒコがわたしに傾斜したのは、どのくらいの期間だったろう。
「マナミがいないと、僕は困る」と、ユキヒコは言った。ぜんぜん嬉しくなさそうに。しんそこ困惑して。
「いつもわたしはユキヒコのそばにいるよ」わたしは答えた。』 ・・・
・・・・中略。
『 答えながら、わたしは鼻をかんだ。涙がひとつぶかふたつぶ、出たのである。
ユキヒコがもうわたしに傾斜していない、ということがわかって、わたしはパニックに陥っていた。』・・・
↑ by:マナミさん
するり、と女性たちのこころに入り込んでしまうニシノユキヒコ。数多くの恋をしながらも常に「なめらかな上の空」で
やさしく、無邪気で、残酷で、淋しい。ほんとうの愛をおそれて、なのにほんとうの愛をもとめるオトコ、ニシノ。
なんとも微妙でかつ、魅力的な小説 さすがは川上女史。
おなじく『しんしん』より・・・
『 ・・・ニシノくんのことを私は愛しかけていた。今にも愛してしまいそうだった。
けれど、ニシノくんのことは愛さない。絶対に、愛さない。そう、私は決めていた。』
・・・・中略。
『 「もしかして、ちょっと、本気」私が聞くと、ニシノくんは目を伏せた。
「よくわからないんだ」ニシノくんは答えた。
「僕は、これまでそういうことにならないように、気をつけてきたから」
気をつけてきた、というニシノくんの言葉に、私は笑った。こんどはニシノくんも笑った。
私はそろそろとニシノくんから身を離した。今ニシノくんに近づいてはいけない。
本能が私にそう警告していた。今ニシノくんに近づくと、そのままほんとうにニシノくんを愛してしまう。
そして、もしかしたらニシノくんも、私のことをほんとうに愛してしまうかもしれない。』・・・
↑ by:エリ子さん
岩井志麻子『チャイ・コイ』。
非常に官能的であり、同時に淡々とした筆で性愛が書かれている。とてもやらしいのだが、またある意味やらしくない。
ベトナム、サイゴン川の熱気とどこか乾いた心情とエロスとが混じり合う、オトナの女性向けの小説。
以下 備忘録。(2010.11~2011.04)
*『ズームデイズ』/ 井上荒野
*『ひどい感じ 父・井上光晴』 / 井上荒野
*『眼の皮膚・遊園地にて』 / 井上光晴
*『不格好な朝の馬』 / 井上荒野
*『ヌルイコイ』 / 井上荒野
*『贖罪』 / 湊かなえ
*『永遠の朝の暗闇』 / 岩井志麻子
*『自由恋愛』 / 岩井志麻子
*『ルームメイト』 / 今邑彩
*『場所』 / 瀬戸内寂聴
*『夏の終わり』 / 瀬戸内寂聴
*『花芯』 / 瀬戸内寂聴
*『学園のパーシモン』 / 井上荒野
*『ひそやかな花園』 / 角田光代
*『雉猫心中』 / 井上荒野
*『空中庭園』 / 角田光代
*『女ともだち』 / 角田光代、井上荒野、栗田有起、唯野未歩子、川上弘美
*『蜜と毒』 / 瀬戸内寂聴
*『龍宮』 / 川上弘美
*『女徳』 / 瀬戸内寂聴
*『もう切るわ』 / 井上荒野
*『いつか陽のあたる場所で』 / 乃南 アサ
*『コトリトマラズ』 / 栗田 有起
*『蛇を踏む』 / 川上弘美
*『溺レる』 / 川上弘美
*『Nのために』 / 湊かなえ
*『ベッドの下のNADA』 / 井上荒野
*『対岸の彼女』 / 角田光代
*『東京ゲスト・ハウス』 / 角田光代
*『無傷の愛』 / 岩井志麻子
*『予定日はジミー・ペイジ』 / 角田光代
見事に女流作家ばかり。