胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

印環細胞癌、層構造

2009-06-04 | 胃未分化型癌
 きれいな層構造のみられる印環細胞癌です。ESDの適応拡大症例でみられたものです。「未分化型」とかdiffuse typeとされる印環細胞癌で、非腫瘍の胃腺管と同様の分化傾向(層構造)がみられることは、既に1980年代前半、伊賀流一門の先代当主が一流英文誌で発表し、受け継がれています。
 核異型が乏しく、この構造が保たれている限り、印環細胞癌は横方向へ広がり、深部浸潤傾向はあまり示しません。ESDの相対適応条件を拡大するために注目する所見のひとつであることを、現施設の先代当主のグループが報告しています。
コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 抗癌剤胃炎、再生異型 | トップ | 印環細胞様LEL, 胃MALTリンパ腫 »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
粘膜内分化 (Chie)
2009-06-06 23:49:06
綺麗なsignet ring cellの分化ですね。
私は類器官分化していると所見に記載しています。
粘膜内のsignet ring cellを浸潤とかく先生がおられますが、いかがなもんでしょう?
Unknown (ドクトル・クッシー)
2009-06-10 23:13:33
Chie先生、いつもご来室ありがとうございます。私はintramucosal spreadingと表現しています。
質問 (Neko)
2009-09-16 01:18:23
病理所学者です。ご教授いただけると幸甚です。層状分化の意味を理解できません。深層から表層に向かうにつれて胞体内粘液含有量が増えてN/C比が低くなる減少ですか?
層構造 (ドクトルQussie)
2009-09-16 12:28:59
Dr.Nekoさま。ご来室ありがとうございます。腫瘍は発生母地の形態・機能を模倣するのが腫瘍病理組織学の基本です。胃幽門腺粘膜を例にあげると腺頸部の増殖細胞帯から上部に粘液の豊富な腺窩上皮型細胞、深部に幽門腺型細胞などが生み出されます。同部に発生した印環細胞癌でおとなしい
(細胞異型の乏しい)ものは非腫瘍の幽門腺管を模倣するかのように上部に粘液の豊富な細胞(典型的な印環型の細胞:腺窩上皮型の粘液を持っている)が分布し、深部にはそれよりは小型の細胞(幽門腺型の粘液を持っている。少し赤みを帯びていることが多い)が分布します。この組織像を2層構造と言ったり、間にある未熟な細胞を含めて3層構造と言ったりします。MUC5AC, Ki67とMUC6の抗体を使って染めるときれいに描出されます。印環細胞癌でこのような構造が保持されているうちは、癌は水平方向に進展しますが、深部浸潤傾向には乏しいです。

コメントを投稿

胃未分化型癌」カテゴリの最新記事