Entrance for Studies in Finance

日本のヤフーと米グーグルの提携(2010年7月27日)

 日本ヤフー(ソフトバンクが4割 米ヤフーが3割出資)と米グーグルが2010年7月27日提携を発表した(日本での2010年4月現在検索シェアは53.2%、37.3%とされる)。これは少しおどろきだった。アメリカでは2008年に表面化した米ヤフー、グーグル間の提携にマイクロソフトが激しく反発して破談になった記憶がある。そのうえで米マイクロソフトは、2009年7月に米ヤフーと提携。
 だから日本のヤフーは米グーグルと組まないと勝手に思っていた。しかし日本のヤフーはマイクロソフトの検索技術の日本語対応が不十分と判断。米ヤフーから米グーグルに検索エンジンシステムと検索連動型広告システムを乗り換えると判断をしたとされる。
(以下の渡辺さんの記事によればヤフーの現行検索システムには検索結果の表示のされかた、スピードなどに多くの問題があったようだ。米ヤフーの供与していた技術が多くの問題を抱えていたこと、またマイクロソフトとグーグルの検索技術を十分比較したうえでグーグルに軍配をあげたものといえる。それだけにマイクロソフトとすれば立つ瀬がない、敗北感漂う話である。
 渡辺隆弘, ヤフーがGoogleの検索技術を採用, Ascii Web Professional, July 27, 2010

 なお提携といっても表示結果の違いがのこり、広告営業も別々と説明している。そして2010年春の相談開始から3ケ月ほどで公正取引委員会が容認の判断を示したことを受けて提携を公表した。しかし公正取引委員会の判断に対して、独禁法関係の学者には疑問を示すものが少なくないようだ。その後 公正取引委員会は独占禁止法上の問題はないとの報告書を2010年12月2日に発表。とはいえ検索シェアが9割になっても問題がないという判断は常識では理解しにくいところだ。(欧州では欧州連合が2010年11月 グーグルが独占的な地位を利用して集客をはかっている疑いで調査を開始。2011年6月には米連邦取引委員会が同様の調査を開始した。その後2011年3月末にMSが欧州委員会にグーグルを支配的地位の乱用で調査要求。)

 日本のヤフーは中国のネット通販最大手の淘宝(タオパオ)(アリババグループ)との提携を実現している(2010年5月10日正式発表 2010年6月1日開始)。
 日本のヤフーは2009年2月にソフトバンクIDCソリューションズ(データセンター子会社)を450億円かかけて買収している。日本のヤフーにおけるクラウドサービスの強化と説明されたが、同じソフトバンクグループの中での買収は、ヤフーの資金をソフトバンクに移すためととられかねないリスクはある。(2010年6月30日付けロイターニュースによれば、ヤフーはこの件で東京国税局から約540億円の申告漏れの指摘を受けたとのこと。IDCには約220億円の繰越欠損があり、買収によりヤフーの所得を圧縮する効果が生じたことも背景にあるようだ。他方、ヤフーは指摘を不当として争う方針だとされる。
 2010年6月30日ロイターニュース
 日本のヤフーは2006年9月29日にジャパンネット銀行(三井住友銀行系)に対して第三者引受方式で258億円、40%の出資(258億円中、212億円は取得条項付き無議決権株、残りは普通株式)を行い業務提携している。
 ヤフー 三井住友銀行 ジャパンネット銀行の記者発表文2006年6月29日

 ソフトバンクはすでにみたように米ヤフーとともに日本のヤフーに共同出資。他方でかつては米ヤフーに出資してきた(1996年のピークには37%)。ところが2000年頃から米ヤフー株を順次売却。2004年には出資比率が4%にまで低下。このほとんどをソフトバンクは2011年8月米シテイに譲渡した(これは2004年の借入の返済代わりで当初の契約によるとの説明)。ソフトバンクは、中国のアリババグループに出資するなどアジアに目を向けているようだ。そのアリババは、米ヤフーの買収に向けて交渉中であることを隠していない(2011年10月から11月)。

 他方、マイクロソフトは富士通(ほかには米デル、米イーベイ、米HP)との間でクラウドコンピューテイング事業で共同展開を発表した(2010年7月10日日本経済新聞朝刊および朝日新聞朝刊 7月12日記者発表 データセンターの共同利用など)
富士通の記者発表文 2010年7月13日付け
 この2ケ月前にはソニーとグーグルの提携が報道されている(2010年5月21日日経朝刊 なお同日正式に発表)。テレビのネット化が一気に進むとも。グーグルの基本ソフト、アンドロイド、クロームを採用したインターネットテレビを2010年秋にも実現する。スマートフォンなどにもグーグルソフトの搭載を進める。

 2010年後半に入ってパソコン販売が減速したときに、多機能情報端末の製造販売やクラウドコンピューテングにかかわるメーカーが高収益を維持した。マイクロソフトのようにパソコンソフトの販売で成長してきたメーカーにとっては危機である。マイクロソフトでもクラウドへの対応(オフィスをクラウド経由で提供するなど 日本ではNTTコミュニケーションズと提携)、ウインドウズセブン搭載の多機能携帯端末の市場投入(これもデータ保存などクラウドサービスを利用できる)を急いだ。クラウドでは複雑な情報処理は、データセンター内の高性能コンピューターが処理。ソフトもネット経由で利用可能。そのソフトの販売でまさに成長してきたMSはビジネスモデルの転換を進めざるを得ない。MSは2009年10月にウインドウズセブンを発売。2012年に投入予定のウインドウズエイト(仮称)は、タブレット(多機能情報端末)を強く意識したものとのこと。

 なおクラウドサービスは東日本大震災を契機に、サーバーを複数持つ効果(データの分割保存)という安全性でも評価されるようになったとのこと。

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