Entrance for Studies in Finance

企業年金と積立不足額

積立不足額と会計制度
目標利回り それより実績が低いと
資金追加拠出 あるいは 将来は給付水準(給付利率)引き下げ

年金会計に限定 連結決算に限定して国際会計基準を導入(共通化)することになった。
この結果 年金支払いに備えた資産の不足は一定期間で処理必要に。
2014年3月期より 積立不足の負債計上必要になった。
この問題は自己資本が大きい企業には影響が小さいものの
自己資本が小さい企業では自己資本比率が大きく下がるケースがある

1)まず負債について積立不足額分を増加させる。これで終わりではなく
2)資本について税効果分(税率×積立不足額)増加する必要がある。

portfolio
年度 四半期などの節目ごとに資産配分比率は本来見直すもの
 自己資本比率規制・・・・多額の評価損につながる株式は削減
 生保の支払余力比率・・・株式のリスクは債券に比べて高く見積もられている
 企業年金の平均的portfolio(2011末% R&I)
 国内債券35.4 国内株式15.9 外国株式15.7 外国債券8.6 代替投資6.8 短期資金など3.1 一般勘定14.5
 国内生保の運用資産の内訳(2013/01末 総額332兆円)
 国債145 外国証券51 貸出40 社債・地方債39 株式12 不動産6.5 その他
国債43.7% 外国証券15.4% 貸出12.0% 社債・地方債11.7%  株式3.6% 不動産2.0% その他11.6%
年金積立金管理運用独立行政法人Government Pension Investment Fund
2006年度発足 国民年金と厚生年金の剰余金の運用 規模は2012年9月末で107兆7231億円
 以下は目標構成比率(基本割合 5年に一度決定)の数値
 国内債券67% 国内株式11% 外国株式9% 外国債券8% 短期資産5%
資産の7割弱を占める国内債券に金利上昇リスク高まる
 この運用資産は2005年度末に150兆円あったが リーマンショックのあと運用損失と給付のための取り崩しで
 取り崩しが続き2011年12月末には108兆円となっている。
 給付費は2006年度が37兆円 2012年度は45兆円と増加。計算の前提は運用利回り4.1%と高い。
 2011年末の運用構成
 国内債券67.4% 国内株式11.1% 外国株式10.1% 外国債券8.4% 短期資産3.0%
2012年末の運用構成
 国内債券60% 国内株式13% 外国株式13% 外国債券10% 短期資産4%
現在の安倍政権は高リスク資産への運用を増やしたい考えとのこと。背景には円安・株高で構成比率が基本割合から
 かい離、戻すための売買が必要になっていることがある。
 国内債券買 国内株式売 外国株式売 外国債券売 ・・・・これが困るという論理ではないか
しかし政治家が運用に口出すことに
 批判的な意見も少なくない。  

運用比率が固定されていると株安・株高
株安局面で株式での運用比率を下げる理由
 株式の運用比率さがり 株式運用をふやすことになる
 国債・地方債:安全資産として人気
 生命保険一般勘定:1%程度の利回り保証 安定した利回りに人気
 株式:価格変動リスク大きい 下振れリスク大きい
 市場が小さいもの:流動性リスク高い
 規定に債券比率(上限下限あり)

株高局面では逆に運用比率さげるのは
規定守るなら 債券の運営比率上げる必要
 つまり 運用比率は本来は上下に動かすべきもの

金利上昇懸念と債券
債券が安全資産からリスク資産に変化
 つまり 環境に合わせて資産のリスク性も変化するもの

積立不足額と割引率の変更、あるいは金利低下との関係
 積立不足問題は海外の企業でもしばしば問題になる 金利の低下で
割引率が低下すると現時点での年金債務が大きくなり 年金積立不足額が
大きくなる関係にある(たとえば想定利回り8%に対して実績は2000-2011平均では5%といった
言い方が示唆するのは、不足額の増加である)。
 その結果 赤字に追い込まれる企業が増えることがしばしば報道されている。これは
不足額が企業の債務となり、その処理(債務の支払い処理)を行ったことを意味する。
 低金利など運用環境の悪化は 割引率を引き下げるが 結果は現時点での年金債務増加
積立不足額 が増加する関係にある。
 議論は日本と同じで、こうしたリスクから企業財務が解放されるには年金について
確定給付型から確定拠出型への移行が望ましいとされる。
 また運用のスタイルについては 株式投資を抑えて リスク資産のリスクを減らす
べきだという 指摘がある。(株式投資では、資産価値が減損するリスクが大きくなったり
得られる収益の大きさが大きく変動しやすい、などのリスクが高まる)

現在の企業年金制度は2つの旧制度 適格退職年金、厚生年金基金のうち 適格退職年金(企業負担が軽いことから
中小零細企業に普及)が2012年3月末で廃止。同制度にあった企業は、3割が中小企業退職金共済制度に移り、約2割が確定給付年金、
約1割は確定拠出年金にうつり、残りの4割ほどの企業は年金制度そのものを廃止している(退職一時金のみとした)。
 厚生年金制度については、大企業の多くは確定拠出型企業年金、確定給付型企業年金、さらには企業年金制度を廃止するか
の選択をしたので、厚生年金に残るものは制度切り替えの関門になる「代行返上」を行う余裕のない中小企業が多いとされる。
 適格退職年金(2012年3月末制度が廃止 3割ほどは中小企業退職金共済制度に移る
7割は企業年金自体を辞めることを選択)。年金制度を持たない企業が増えている。
生保の個人年金保険伸びている。(2012年10月末で100兆627億円)

厚生年金基金 
厚生年金基金(2012年3月末で基金数577 加入者440万人資産残高約27兆円
基金数6百近い。)給付額が企業が保証するので確定給付型年金の一つ。そのため株安などで運用成績が低迷すると、
不足分を企業が穴埋めする必要があった。年金の積み立て不足を財務諸表に反映させる新しい会計制度が
2014年3月期から導入されるため、制度の見直しを進める企業が増えている。
 大企業の多くは既に自社の厚生年金基金を解散している。
 大企業では2000年代前半 代行返上して 解散するか代行部分のない確定給付型企業年金に衣替え。
代行返上には損失の穴埋め必要。年金の保証利回りを2.5%程度に抑えて 年金の負担を小さくした。
 究極的には確定拠出型が運用リスクからの解放という点で財務担当者には魅力的。
 現在残る厚生年金は中小零細企業が集まる総合型が大半)
 改善のめどがたたず厚生年金基金の制度廃止論もでている。
 運用成績が悪く国から預かる厚生年金保険料で損失が生じるものを代行割れという。
577基金のうち2011年度末で287基金が代行割れ(多くが5.5%という非現実的利回り
この数値は1997年以前のもの 保証利回りを下げると不足額が拡大する関係)。

確定拠出型年金(日本版401k)の導入
 2001年以来、政府は確定給付・確定拠出の年金制度を整備して移行を進めたが
結果として企業年金を一切持たない企業(退職一時金だけの企業)が増加した。
 運用リスクにたえかねて 企業年金を持たない企業が増えている。

2001年10月 確定拠出導入。2011年3月末で資産総額5.3兆円まで増えている。
 2012年3月末では6兆円程度(加入者数は421万人 2013年2月末で437万人。団体数は4247件)。確定給付型が45兆円。
その規模は確定給付の10分の1以下。平均運用利回りは年0.63% 
後者の1.91%を大きく下回っている(2012年3月末)。
 導入は大企業で16% 中小企業で2% 加入者の4人のうち1人は元本割れ状態。
 確定拠出は運用リスクを従業員に追わせるもの しかし運用成績の悪化が
確定拠出の普及には障害になっている。
 2012年1月に施行された年金確保支援法で従業員が掛け金を上乗せできる
マッチング拠出ができるようになった。

年金をめぐる不正について
 運用を受注しようと年金運用責任者への接待など手数料以外の便益供与 が行われている
 接待攻勢 手数料のキックバック(運用側の担当者 あるいは担当者を紹介した人物に)
      また虚偽の運用説明 などの不正もよく知られている
 運用側 専門家がおらず運用実態を把握したりチェックできないことも 
 運用成果と無関係なところで、運用業者の選定が行われ、結果として年金基金に損失が生じ
加入者に被害が及ぶ。この問題に対処するには 年金基金と運用業者 双方への厳しい規制が必要で 
規制緩和論は不正を排除する観点からいえば 基本的な点で間違いがあるというべきだろう。

 年金側 組織的に政府の年金から不正に資金引き出し(たとえば障害者でないものに障害者年金など 米国で発覚している)など

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