素晴らしき仲間たち


 1970年代後半のパリには、日本全国から若い料理人たちが、自分の目で、自分の腕でという妥協を許さない個性派たちを惹きつけた料理の国に集まっていた。フランス各地に点在する有名レストランに修業の場を求めて、発っては帰ってくる。仲間との再会、飲んでは騒ぎ、料理談義に花を咲かせ、唄を口ずさみ、親や恋人からの手紙を読みふけては泣き笑う。そんな料理人たちのロマンと挫折が、このパリには交錯していた。
 この国の自由なうまい空気を、深く吸い込んだ日本の若者に、おおらかにフランス人シェフたちはその門を開いてくれた。
 あれから30年近くの年月が過ぎ去った。きっとみんな、日本のどこかでオーナーシェフとなり、料理を志す若者に、その奥の深さを伝えて、理想にのめり込んでゆく。あの修業時代の姿と重ねあわせては、厳しく、激しく、そしてやさしく、「それじゃ、できやしない」と。
 フランス料理に魅せられ、虜になったわけでもなく、ただ純粋に料理そのものが好きなシェフたちの情熱は、決して衰えることはない。
 私も1985年9月26日に札幌で、静かにひっそりと『イル・ド・フランス』を誕生させた。

 
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