風 雑記

建築とその周辺で感じたこと、思ったこと

沖新の家

2020-04-13 11:46:46 | 日記

4月のはじめに引き渡した住宅です。

一年前の4月頃に相談に見えられて、設計に取り掛かったノリ養殖をされている方の住まいです。

敷地は熊本新港に近く、海岸から500m程の所で見に行った時「空が広いなあ」と感じました。風も強いですが爽快感があり気持ちの良い処でした。北東の方に金峰山の山並みが見え「この眺めを見て暮らしたい」と思ったのが設計のポイントになりました。

金峰山が見える写真には手前の道と一段上がった道が並行しており、一段上がった石垣部分は昔の堤防跡です。ここは以前海だった所を干拓した所でした。設計のもう一つのポイントは干拓の軟弱地盤に対する地震対策と海から吹き寄せる台風の強風対策です。

昔の海岸線であったことから、幸いに6.0M程の所に堆積した礫層がありその層まで地盤改良を行いました。建て主が打ち放しコンクリートと木が好きなことから、木造に一部分にコンクリート壁を挿入し地震対策と強風対策にも役立つように工夫しました。基本構造は木造で成り立つようにし、コンクリート壁はあくまで木造にプラスαの構造体ですが、建物強度は基準の2倍近く強くしました。コンクリートを垂直壁だけにしたのは建物重量を少なくする為です。

建物形状はシンプルにし、2階部分は大屋根の一部とし、西側は寄棟にして強い西風を受け流すようにしました。北東の金峰山を眺める場所は半屋内デッキを設け、テラスサッシを斜めに設けてこちらも風を受け流しています。東側コーナーにはコの字型にコンクリート壁を配置、構造補強と薪ストーブの防火対策に役立てました。

太陽熱空気集熱システム「そよ風」も採用しています。普段も海風が強く外は寒いのですが、家の中は温かくとても喜ばれました。施工者が「そよ風」施工が初めてだったこともあり、私も屋根に登り職人さんと一緒に設置を指導、手伝うことが多かったので、性能には自信がありました。集熱温度は天気が良いと60度を超え、室温も20度以上に保っています。

ノリ養殖は10月頃から4月初めまでが繁期で、朝早くから夜遅くまで続くキツイ作業で、海から戻ってしばらく仮眠する時にこの家の温もりはとても嬉しいと喜ばれまています。

ノリ養殖も高齢化が進み、年々担い手が減っているとのことですが、新しい家が暮らしの楽しさと体を休めてくれ、永く美味しい海苔を作ってほしい願いながら設計しました。


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