ブログ「風の谷」  再エネは原発体制を補完する新利権構造

原発事故は放射能による公害。追加被曝阻止⇒放射性廃棄物は拡散してはいけない⇒再エネは放射能拡散につながる⇒検証を!

【追悼】アレクセイ・ヤブロコフ博士 日本の人々へのメッセージ「皆さんは真実のためにたたかわなくてはならない」

2017-01-12 | ヤブロコフ講演文字おこし

(管理人より)昨日、アレクセイヤブロコフ博士の訃報が伝えられました。

日本でも著名なロシア人生物学者、アレクセイ・ヤブロコフ氏が死去 2017年01月11日  より

放射能被害の専門家として原発に反対しつづけ、日本でも有名なロシア人生物学者のアレクセイ・ヤブロコフ氏(83)がモスクワで死去した。ヤブロコフ氏は晩年、長く苦しい闘病生活を送っていた。

喪失感が大きくて言葉になりませんが、ヤブロコフ博士は福島原発事故の後、日本で2回講演会をされたと思います。おそらく体調が良くない中、日本の人のために大切なことを伝えてくださったのだと思います。2度の来日の講演会に関しては、当ブログで両方とも文字起こししました☟ので、ぜひ読んで頂きたいと思います。 

2012年 【再掲】2012/12/14 ヤブロコフ博士東京講演会低線量被曝の健康影響(文字おこし)

2013年 『チェルノブイリ被害の全貌』出版で来日 

5/18 『チェルノブイリ被害の全貌』刊行記念ヤブロコフ博士講演会(東京) 文字おこし(講演部分)

5/20ふくしま集団疎開裁判の会 ヤブロコフ博士 郡山講演会 文字おこし(講演部分)


2012年の来日時(『チェルノブイリ被害の全貌』出版前)の様子が動画になっているものを、今回文字起こししました。編集されて字幕がありますが、通訳があるところに関しては 通訳の言葉を入れています。その他は画面上の字幕からです。私に出来ることはブログで発信することだと思い、感謝の気持ちを込めて今回記事にしました。

調査報告 チェルノブイリ被害の全貌
アレクセイ・ヤブロコフ著
岩波書店

 


アレクセイ・ヤブロコフ博士「チェルノブイリの教訓」

脱原発世界会議2でのアレクセイ・ヤブロコフ博士(ロシア科学アカデミー、生物学者)の発言より、チェルノブイリ原発事故の健康被害に話を絞って再構成した。

撮影、編集、荒川俊児 制作 映像ドキュメント

動画【文字起こし】 

私たちがいま議論すべきは、何がいま危険なのかということです。私たちの役割は安全な状況をいまつくりだすことです。私は(チェルノブイリ原発事故後の)影響を研究してきました。チェルノブイリ原発事故から25年、26年たって本当のこと偽りのないデータを得ることができました。偽りのないデータというのは1キュリー/k㎡に住むすべての人々に何らかの健康被害が出ていることです。

※1キュリー/k㎡=3万7000ベクレル/㎡(空間線量に換算すると自然放射線も含めて年約1ミリシーベルト)

5キュリー/k㎡に住む人々ではさらに増大します。

※5キュリー/k㎡=18万5000ベクレル/㎡

健康被害は汚染レベルが高くなるにつれ明確に増大します。このことを考えるべきです。今考えなくてはならない最も重要なことはどうしたら福島原発事故の影響を最小化できるかということです。

Nuclear Free Now 脱原発世界会議2
アレクセイ・ヤブロコフ博士「チェルノブイリの教訓」
2012年12月15日〜16日 東商ホール、日比谷公園 「チェルノブイリから学ぶ」と題した2つのセッションでの発言より原発事故の影響に話を絞って再構成したものです。

(チェルノブイリ原発事故の影響について)本日お話しするのは、そのごく一部になります。討論の時に追加の話ができればと思います。 

お話しするのは「市民社会にとってチェルノブイリの教訓とは」ということです。これは日本にとっても重要なことだと思います。

この本ははじめロシアで、のちに米国で出版され昨年ウクライナ版が出ました。現在日本語訳が進められています。来年(2013年)には出版されると思います。

この本はチェルノブイリ原発事故の影響について独立した立場から行われた最大かつ最新の研究成果と言えます。そのなかから紹介します。

これはチェルノブイリ後のガン発生率で、上の線が高汚染地域、下の線が低汚染地域です。

ガン発生率は汚染が高くなるにしたがい、明確に高くなります。5年あるいは数年すると、ここ日本においても同様のことが起こります。

様々な疾患、障害がチェルノブイリの放射線被曝により起こりました。これは福島の放射線被曝でも起こりうることです。

血液、循環器系の疾患、内分泌系の疾患、免疫系疾患、呼吸器系疾患、泌尿生殖路、生殖障害、骨格系、骨減少症や骨粗鬆症、中枢神経系の障害(前頭・側頭・後頭・頭頂葉の変化)

低い線量であっても被曝が何年にもわたると頭脳に変化が起こります。チェルノブイリの放射線が頭脳を破壊したはっきりした証拠があります。

白内障だけでなく硝子体破壊など様々な眼球の異常。消化管の疾患、先天性奇形、異常。数百、数千という通常では生じない追加的な症例があって、典型的な放射線障害です。

この他、チェルノブイリの大惨事による影響としては、早期老化があります。放射線被曝に典型的にあらわれる症状です。子どもが歳をとった人にようになり、大人も実年齢以上に歳をとってみえます。

突然変異もあります。突然変異は重要で、個々人の被曝レベルを把握するうえで鍵にもなります。

突然変異は血液検査によって(どれだけ突然変異が起こっているか)数えることができます。

これは高被曝したリクビダートルと呼ばれる事故処理・除染作業労働者の家庭と汚染のなかった地域とで比較したものです。

 

事故処理作業労働者の家庭の流産発生率を見るとチェルノブイリ後、2~3年で減ってはきますが、1年後は妊娠してもほぼ半数が流産する事態となりました。

これは子どもの水晶体の混濁を示したものです。典型的な放射線障害で、放射線は眼球の水晶体を痛めます。ベラルーシの子どもの水晶体の混濁と体内セシウム量を示したものでご覧のように関連しています。

これは甲状腺ガンの発症率を示したものです。

 

 

これは乳ガンの発症率です。乳ガンはチェルノブイリ後10年たってから増大しました。特に15キュリー/k㎡以上の高汚染地域では10年後から急激に上昇しているのがわかります。

日本においても同じ状況になると思います。

原子力の専門家、IAEA(国際原子力機関)の専門家や当局者は人々に対して「放射線恐怖症」だと語ります。そんなのは被曝による病気ではなく心理的要因によるものだと主張します。「放射線恐怖症」だと言うのです。しかしそれが心理的要因によるものなら、なぜカエル、ツバメ、野ネズミ、松の木に人と同じように健康障害や突然変異があらわれるのでしょうか。

原子力の専門家や業界紙は本当のデータを出しません。そこで私たちは公式統計をもとに本当のデータを導き出すしかありません。

これがそのひとつの例です。

乳幼児死亡率は、チェルノブイリ後数年にわたって上昇しています。これはドイツとポーランドの乳幼児死亡率について標準値からの偏差を示したものです。ロシアやベラルーシ、ウクライナのような高汚染地域ではありません。にもかかわらずこのように統計的にも明確な影響が乳幼児死亡率に出ています。

1986年以降、予期しない乳幼児死亡率の上昇がみられます。

チェルノブイリ以外に、ノルウェー、フィンランド、スイス、ドイツなどで乳幼児死亡率が上昇した理由が見つかりません。

 

これは日本です。2週間前に発表されたもので、日本の厚労省の公式統計を集計したものです。ごらんのように福島原発事故2か月後と9か月後に新生児死亡率が明らかに上がっています。

これは福島原発事故による影響なのですが、興味深いのは、この統計は日本全国のもので、福島に近いところだけではなく全国レベルで福島原発事故の影響が出ていることです。

東京やその他の地域、北の地方、南の地方と注意深く調べるべきです。通常ではないデータが出てくると思います。

これはロシアの6つの高汚染州と、その近くの6つの低汚染州の死亡率です。15年間にわたる死亡率の推移は見た目からも統計学的にも差異を示しています。

汚染があるかないかによって死亡率には劇的な違いがあります。なぜこれが起こったのかその理由を証明するのは不可能です。しかしこれはもちろんチェルノブイリ事故の結果なのです。

チェルノブイリ地域で植物、動物、微生物を調査すると、そのほとんどで高いレベルの突然変異を示しています。

これは明らかにチェルノブイリの結果です。ここ日本でも同じです。私はチェルノブイリ周辺のチョウや鳥などの調査結果を知っていますが、これは福島原発周辺にもあてはまります。

福島原発事故でも同じ影響が出ます。それは生物多様性の減少、高い突然変異率、ゲノム不安定性といった動植物への被害です。

チェルノブイリ・ゾーンにはじめて訪れると一見すると動植物がなんと繁茂しているんだと思うかもしれません。

人はいないけれどたくさんの動物がいて植物が茂っています。しかし、すべての植物は染色体になんらかの損傷をもっています。すべての動物はチェルノブイリゾーンではあまり繁殖しません。ほとんどは他の地域から移入してきたのです。チェルノブイリ・ゾーンは「ブラックホール」のようなものです。繁茂しているのではなく、動物が引き寄せられ入り込むブラックホールなのです。

チェルノブイリの大惨事が明らかにしたのは、原子力産業は原子力発電によって地球を危機に陥れることもいとわないということです。

そして理論的にも実際にも原子力発電は核兵器に匹敵する危険を人類と地球にもたらすということです。

ご清聴ありがとうございました。

 

質疑での発言から 

Q:「ガン以外の病気について」

A:私は事故の影響という点から言うと、ガンはその10分の1の意味しか持っていないと思います。放射線を被曝したあらゆる人体の組織・器官は、異常をあらわしますので、これについてはそれぞれの器官について、どういった異常があらわれるかということをみなければなりません。言葉を変えて言えば、放射線被曝して、なんの影響も被らないような器官というものはありません。それから影響の程度に関して言いますと、大量の放射線を短期間に浴びるか、あるいは低線量の放射線を長期間に渡って浴び続けるかという違いがあります。

Q:「事故の影響を減らすためには」

A:チェルノブイリの経験では、事故の悪影響というのは5年以内にあらわれます。そして平均的な被曝線量は基準といったものは、何も意味を持ちませんから、個人的な、個人に対する健康調査が必要です。二つの方法で検査を行わなければなりませんが、まず第一は血液検査で、血液を調べることによって、染色体の突然変異がどの程度起こっているか調べることができます。それからもう一つはホールボディーカウンターによる個々人の検査で、放射線核種を多く取り込んでいる人に対しては、緊急に措置をこうじなくてはいけませんが、そのための方法はいろいろあります。

 

日本の人々へのメッセージ

私からの短いメッセージです。皆さんは真実のためにたたかわなくてはならない。健康のためにたたかわなくてはならない。原子力をなくすためにたたかわなくてはならない。

政府とたたかわなくてはならない。なぜなら政府と原子力産業はあらゆるところで、私の国だけでなく、すべての国で、米国で、ここ日本で、データを隠蔽しようとするからです。

原子力産業と政府は、人々を恐れています。真実を恐れています。

なぜなら真実はとても不愉快なものだからです。

真実は原子力技術は恐ろしく危険であり、コストは異常に高く、プラスよりもマイナスばかりだということです。

これが私からのメッセージです。

 

 

市民ひろばワークショップテント 2012年12月16日 日比谷公園  より

ヤブロコフ博士

私たちがいま、議論すべきは「何がいま危険なのか」ということです。私たちの役割は、安全な状況をいまつくりだすことです。

私は(チェルノブイリ原発事故の)影響を研究してきました。チェルノブイリ原発事故から25年、26年たって本当のこと偽りのないデータを得ることができました。

偽りのないデータというのは1キュリー/k㎡に住むすべての人々に何らかの健康被害が出ていることです。

危険な放射線のレベルとはチェルノブイリの経験から明白なのは、もし毎日浴びて、それが何年にもわたるなら 1キュリー/k㎡以上の場所で危険です。特に子どもは危険です。

チェルノブイリ事故の直後からソ連内だけでなく、周辺諸国も含めて乳幼児死亡率が上昇しました。流産も増えました。

ヨーロッパでは出生の男女比が変わるということも起こりました。ここ日本でも同じ影響が出ることになります。

(汚染地域では)2年のあいだに白血病が増えました。先天性奇形・異常の比率も上昇しました。様々な種類の奇形が起こりました。

ダウン症も増加しました。こうしたことは最初の2年のあいだに起こりました。

その後、4年経つとガンが出はじめました。甲状腺ガンです。6年とか10年たつと肺ガンやその他のガンが増えました。

皆さんも近い将来、同じ問題に直面することになります。

今考えなくてはならない最も重要なことは、どうしたら福島原発事故の影響を最小化できるかということです。



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