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マイナーな話題を扱うことが多いかもしれません。
 



色んな意味で頭の痛い話が出てきた。
なんでも、演出家の蜷川 幸雄氏がイスラエルで『トロイアの女たち(The Trojan Women:Τρῳάδες)』というギリシア悲劇を上演する、と発表したらしいが・・・。
・蜷川氏、イスラエル公演へ 紛争地で「演劇を希望に」(2012年1月13日 47news.jp;共同)
・蜷川 幸雄さん:ギリシャ悲劇上演へ イスラエルと共同制作(2012年1月13日 毎日jp)
・שיתוף פעולה בינ"ל בקאמרי: המחזה "נשות טרויה" יועלה בעברית, ערבית ויפאנית(2012年1月13日 Haaretz.co.il;ヘブライ語)

危険なにほひしかしないこの話。
以下、2012年1月13日分 47news.jp『蜷川氏、イスラエル公演へ~』を全文(略

---- 以下引用 ----
 【テルアビブ共同】
演出家の蜷川 幸雄氏が12日、イスラエル中部テルアビブで記者会見し、12月に東京とテルアビブで上演予定のギリシャ悲劇「トロイアの女たち」[おまけ参照]について、パレスチナ紛争が続く地域の人々に「間接的にでも演劇が希望をもたらすことができればと思う」と意気込みを語った。

 日本人とアラブ系イスラエル人(パレスチナ人)、ユダヤ系イスラエル人の俳優が、それぞれ日本語、アラビア語、ヘブライ語の3言語で演じる。
蜷川氏は「異なる歴史、文化を持つ人間たちが深く他者に到達することは演劇の力だ」と述べ、相互理解を深める演劇の役割を強調した。
---- 引用以上 ----

ちなみに、この企画、2010年からこっそりと進んでいた模様。
・Grapevine: Yes, Prime Minister…(2012年1月10日 jpost.com)

以下、2012年1月10日分 jpost.com『Grapevine~』から、その部分を(略

---- 以下引用 ----
(中略)
■ THERE WILL be several Japanese cultural events in Israel this year within the framework of the celebrations of 60 years of diplomatic ties between the two countries.
One of the most ambitious will be a joint Japanese-Israeli production of “Women of Troy” at the Cameri Theater in Tel Aviv, which will be directed by one of Japan’s most eminent directors, Yukio Ninagawa, who has already arrived in Israel to begin auditions.
The production has been in the planning stages since 2010, with people from the Cameri Theater initially participating in a workshop in Japan in order to learn Japanese theater techniques.
The Israeli actors in the production will include both Jews and Arabs.
(以下略)
---- 引用以上 ----

そもそも、蜷川氏に例の一件を依頼した理由がイマイチ不明なのだが(苦笑)

つか、この件、余裕でイスラエルに対する BDS(Boycott, Divestment and Sanction)運動の対象になる模様。
実は、毎日jp と Haaretz.co.il の記事によると、この件は日本政府とイスラエル政府が(資金面などでの)支援を行うため。
・Guidelines for Applying the International Cultural Boycott of Israel(2009年7月20日 pacbi.org)

PACBI(palestinian Campaign for the Academic & Cultural Boycott of Israel)に掲載されてる、イスラエルに対する文化・芸術活動での BDS運動の定義ってのは以下の5つ。
以下、2009年7月20日分 pacbi.org『Guidelines for Applying~』から、その部分を(略

---- 以下引用 ---
(1) Cultural product is commissioned by an official Israeli body
(2) Product is funded by an official Israeli body, but not commissioned (no political strings)
(3) Event is partially or fully sponsored or funded by an official Israeli body
(4) Product is not funded or sponsored by an official Israeli body
(5) Event or project promotes false symmetry or “balance”</psna>
---- 引用以上 ----

蜷川氏が絡む例の一件だと、(1)(2)(3)のどれかと(5)に当てはまる可能性大ってことになる。
とりわけ重要なのは、(5)の定義かと。
以下、2009年7月20日分 pacbi.org『Guidelines for Applying~』から、(5)『Event or project~』の定義を(略

---- 以下引用 ----
(中略)
(5) Event or project promotes false symmetry or “balance”

Cultural events and projects involving Palestinians and/or Arabs and Israelis that promote “balance” between the “two sides” in presenting their respective narratives, as if on par, or are otherwise based on the false premise that the colonizers and the colonized, the oppressors and the oppressed, are equally responsible for the “conflict,” are intentionally deceptive, intellectually dishonest and morally reprehensible.
Such events and projects, often seeking to encourage dialogue or “reconciliation between the two sides” without addressing the requirements of justice, promote the normalization of oppression and injustice.
All such events and projects that bring Palestinians and/or Arabs and Israelis together, unless framed within the explicit context of opposition to occupation and other forms of Israeli oppression of the Palestinians, are strong candidates for boycott.
Other factors that PACBI takes into consideration in evaluating such events and projects are the sources of funding, the design of the program, the objectives of the sponsoring organization(s), the participants, and similar relevant factors.
---- 引用以上 ----

蜷川氏が、イスラエルによるパレスチナの人達(やイスラエルに住んでる人達)に対する数々の人権侵害についてどこまで知ってるのか疑問だが・・・。
蜷川氏には、例の一件を受ける前に、こうした事情について調べて欲しかったわな。
まぁ、仮にそうしてたとしても、例の一件を蜷川氏が受けなかったという確信は持てないのが辛い所。


にしても。
蜷川氏は一体何を考えて例の一件を受けたのやら。


おまけ:『トロイアの女たち』は反戦劇的傾向が強いというが・・・。
・アトリエ60 トロイアの女たち(bungakuza.com)

以下、bungakuza.com『アトリエ60~』から、『トロイアの女たち』のあらすじを(略

---- 以下引用 ----
(中略)
紀元前、ギリシャとの苛酷な戦争は終わった。

トロイアはスパルタ王メネラウスの軍門に下った。
ギリシャ軍の天幕の中には捕虜となった敗軍トロイアの女たちが収容されていた。
その中に王妃ヘカベの姿もあった。
女たちには奴隷としての運命が待ち受けている。
ヘカベの娘カッサンドラ、予言者として評判の高かったカッサンドラも連れ去られて行く。
さらに、ヘカベの息子ヘクトルの未亡人アンドラマケとその息子アスティアヌス。
幼いアスティアヌスには死が宣告された。夫、息子、娘、そして孫までも・・・。

ヘカベの憎しみはヘレネに向けられた。
この苛酷な戦いは、ヘレネにその原因があった。

メネラウスの后であったへレネは、なんとトロイア王プリアムの息子パリスと駆け落ちしたのである。
そして今、のうのうとメネラウスの元に戻ろうとするヘレネ。

ヘレネを殺すよう懇願するヘカベ。
そこへ孫アスティアヌスの亡骸が・・・。
メネラウスはヘレネの要求を拒み、祖国へヘレネを連れ去った。
全ての希望を奪い去られたヘカベ。
この時、すさまじい音とともに城壁が崩れ落ちた。
あとはただ、隷属の日々の待ち受ける敵国へ向かうだけであった。
---- 引用以上 ----

蜷川氏にしてみたら、この物語で描かれてるトロイアの女性をパレスチナの人達に重ね合わせたのだろうか?

ちなみに、ヘレネ(Helen)の描写については、映画などの作品ごとに異なるとかなんとか。
もっとも、(エウリピデスも描いてたけど)「ヘレネは悪女」という説が有名だけど・・・。


2012年2月5日追記:
この件に関しては以下を参照(手抜き)
・対イスラエル文化ボイコットはなぜ必要か? ~アパルトヘイト国家に利用される「蜷川ブランド」(2012年2月5日 薔薇、または陽だまりの猫)
・公開書簡:テルアヴィヴのカメリ劇場での上演に反対を表明して(2012年1月29日 boycottil)

蜷川氏は、自分の活動が政治利用される危険をどこまで認識してるんだろうか?

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