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引くのも勇気、という言葉は「調査捕鯨」団の辞書にない?

2011-02-20 20:45:27 | 捕鯨騒動
一昨日、今シーズンの南極海における「調査捕鯨」を切り上げることを決めた日本政府。
これに関して、クジラ漁やイルカ漁に関わってる方々+α からは「今後、捕鯨はどうなるのか」との声が・・・。
・調査捕鯨中止「クジラの都」不安の声(2011年2月19日 YOMIURI ONLINE)

YOMIURI ONLINE の記事のように「調査捕鯨」の今後を懸念する記事は多い一方、「調査捕鯨」の現状に関して冷静に伝えてる記事は少ない。
その少ない例としては、毎日jp 2011年2月19日分の社説があるけど・・・。
・社説:調査捕鯨の中断 根本見直しの契機に(2011年2月19日 毎日jp)


話を戻す。
「調査捕鯨」の今後に懸念を示す人達について伝えてる一連の記事では、北太平洋や南極海での「調査捕鯨」が地元の捕鯨文化(あえてこの表記)として組み込まれてることを密かに語っていた。
以下に、その1つである 2011年2月19日分 YOMIURI ONLINE『調査捕鯨中止「クジラの都」不安の声』を全文(略

---- 以下引用 ----
 反捕鯨団体「シー・シェパード」の妨害を受け、農林水産省が南極海での今季の調査捕鯨の中止を決めた18日、南房総地区の捕鯨関係者や、捕鯨文化の継承に取り組む人たちからは今後の活動継続に向けて不安の声が上がった。

 「南極海の捕鯨船団には付き合いのある人も乗り組んでおり、複雑な思いだ」。
南房総市和田漁港に拠点を置く「外房捕鯨」の庄司義則社長(49)は厳しい表情を浮かべた。

 同社は、毎年6~8月は房総沖でツチクジラ漁、それ以外の時期は沿岸の調査捕鯨に参加。
庄司社長らは、地元の中学生らを対象に捕鯨文化を理解してもらうための教室などを開催している。
調査捕鯨中止のニュースに「遠洋に出れば、日本の海上保安部に守ってもらうこともできず、調査目的というのにまともな仕事ができない。もううんざりだ」。

 鋸南町勝山は、房総捕鯨発祥の地。
町商工会女性部が中心となって作る「鋸南食文化研究会」は、ミンククジラの粉末を使ったコロッケなど特産品開発に取り組んでいる。
「町クジラ食文化研究会」を構成する地元飲食店約40店も、メニューにクジラ料理を盛り込んで文化継承に協力する。

 町商工会は、調査捕鯨の副産物として出るミンククジラなど約300キロ、房総沖でとれるツチクジラ約500キロを仕入れ、文化継承の活動に提供している。
しかし今回の中止を機に、調査捕鯨を再開できなければ、クジラ肉の流通が減少し、将来的に単価が上がることが懸念されている。

 商工会経営指導員の早川博敏さん(60)は「クジラの都だったという地元の歴史文化を知ってもらう活動なのだが、影響は避けられないだろう」と心配している。
また、地元ですし店を経営し、クジラ食文化研究会の会長を務める福岡晴一さん(71)も反捕鯨団体に対し、「クジラの食用は日本の文化。それを分かってもらえないのは残念」と話した。
---- 引用以上 ----

上記事で触れられてる「調査捕鯨の副産物」ってのが、北太平洋での「調査捕鯨」か南極海での「調査捕鯨」なのかわからないけど・・・。
本来、房総沿海にある捕鯨文化のありようからすれば、「やるはずのない」手法で入手した鯨肉が「本来の」捕鯨文化として流通してることを物語っている。
これを精一杯ポジティブに捉えるなら、「房総の捕鯨文化存続のために房総地方の人達が自ら変化を受け入れた」ってことになる。
が、その変容の在り方については、当然疑問を抱く人も出てくると思われるが・・・。
いずれにしろ、(YOMIURI ONLINE の記事に従うと)房総地方で捕鯨文化に関わってる人達が、北太平洋での「調査捕鯨」か南極海での「調査捕鯨」を「自分達のモノ」として受け入れる素地はあったかと。
この辺の調査は、正直俺の手に余る話だけど・・・。


一方、「調査捕鯨」団の帰国を決めた件については、色々勇ましい意見が・・・。
・調査捕鯨、妨害で中止 下関、懸念の声(2011年2月19日 山口新聞)
・調査捕鯨中止に憤り(2011年2月19日 mytown.asahi.com)
・調査捕鯨:打ち切り 不安と歯がゆさ 鯨の町、山口・下関「動じず正当性訴えて」(2011年2月19日 毎日jp)
・調査捕鯨:打ち切り 「逃げ帰るな」 識者、合法性を強調(2011年2月19日 毎日jp)

まずは、2011年2月19日分山口新聞『調査捕鯨、妨害で中止~』から、『下関くじら館』の小島 純子店長のコメント部分を(略

---- 以下引用 ----
(中略) 創業34年の鯨料理専門店「下関くじら館」(同市豊前田町)の小島純子店長は「妨害行為はテロ活動だと思う。日本は正しいことをやっているので動じることはない。将来の食料事情を考えても捕鯨は続けるべきだと国民に訴えていかなければ」と指摘した。
(以下略)
---- 引用以上 ----

将来の食料事情、ね。
それって、日本だけでなく世界全体の食料事情のことを指してるんだろうか?
仮に後者だとしたら、割と強引な論理武装が必要だと思うが・・・(家畜の環境負荷を訴えるとか)。

次は、長年捕鯨に関わってきた岡村 昌幸氏と「下関くじら食文化を守る会」の和仁(わに) 皓明(こうめい)会長の発言。
以下、2011年2月19日 mytown.asahi.com『調査捕鯨中止に憤り』から、その部分を(略

---- 以下引用 ----
(中略)
水産会社で約30年にわたって捕鯨に従事してきた岡村 昌幸さん(85)=長門市=は「地団太を踏むような思い」と悔しがった。妨害活動は非常に危険で船が転覆する恐れもある行為と指摘。「政府の判断はやむを得ないかも知れないが、妨害活動が起きる前に外交活動で未然に防ぐべきだった」と政府の対応に不快感をにじませた。

  下関市の有志でつくる「下関くじら食文化を守る会」の和仁(わに) 皓明(こうめい)会長(80)も「違法なテロ行為に屈してしまったのは、外交的な敗北と言っていい。国際法上正しいことは世界に発信しないといけない」と語気を強めた。
(以下略)
---- 引用以上 ----

なんだろうな。
この両氏の発言からは、(屈折した形で)ナショナリズムに結びつく危険を感じるのだが・・・。

今度は、政策研究大学院大学で教授の職にある小松 正之氏。
以下、2011年2月19日分毎日jp 『調査捕鯨:打ち切り 「逃げ帰るな」~』からその部分を(略

---- 以下引用 ----
(中略)
元水産庁漁場資源課長で政策研究大学院大学の小松正之教授は「合法的な捕鯨なのに暴力で邪魔された。逃げ帰ってはいけない。日本は悪いことをしていると国際的に喧伝(けんでん)される。乗組員に生命の危機があるなら、海上保安庁に護衛を頼み、居続けることが大切だ」と強調した。
---- 引用以上 ----

いや、普通に考えて「調査捕鯨」を続けることにメリットはなくなりつつあるのだが・・・。
つーか、「逃げ帰ってはいけない」って言い方って Sea Shepherd の総帥こと Paul WATSON 船長の言い方を借りてる気がしないでもない(苦笑)

この辺りは、「調査捕鯨」団で実際に仕事をしてる人達も共有してる表現だったりする。
・「暴力に屈していいのか」「来期以降どうすれば」苦渋の選択 (2011年2月18日 MSN産経ニュース)

引くのも勇気なのに・・・。


それはそうと。
YOMIURI ONLINE によると、ニュージーランドとオーストラリア政府が南極海での「調査捕鯨」を完全に終わらせることを求めたとか。
・調査捕鯨中止、豪・NZが歓迎…完全廃止を要求(2011年2月19日 YOMIURI ONLINE)

実は、今月15日にも、アルゼンチン・ブラジル・チリなどラテンアメリカ9カ国(Grupo de Buenos Aires:GBA)が、「調査捕鯨」を完全に終わらせることを日本政府に求める声明を出していた。
・Latinoamérica exhorta a Japón a terminar caza científica de ballenas(2011年2月15日 estrellaconce.cl;スペイン語)
・PAÍSES LATINOAMERICANOS LAMENTAN
PROFUNDAMENTE LA CAMPAÑA BALLENERA JAPONESA EN EL SANTUARIO AUSTRAL Y EXHORTAN AL GOBIERNO DE JAPÓN A PONER FIN A LA “CAZA CIENTÍFICA”
(2011年2月15日 アルゼンチン外務省;スペイン語+.pdfファイル)

「日本の「調査捕鯨」に反対してるのは欧米諸国」との思い込みは避けた方がいいかと・・・。


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2 コメント

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Unknown (marburg_aromatics_chem)
2011-02-21 07:24:32
調査捕鯨中止には、様々な理由が推測されていますが、それを明かさないのが政治・外交戦略の一つです。宣伝用の映像を、もうこれ以上撮影させないというのが、有力な理由になりそうです。
ただ、鯨肉が欲しい人たちには、事前の根回しがなかったためか、短絡的に反応していますね。
他のマグロや温暖化対策などもそうですが、国内反対意見の説得の方が、官僚たちが一番いやがる仕事です。

それに乗員の安全確保という理由は疑問です。妨害行為と無関係の落水事故で行方不明となった乗組員がいましたが、調査は続行しました。また、怪我人発生時に、最寄りのニュージーランドではなく、フィジーから日本の漁船を呼び寄せて搬送したくらいですから、人命尊重の考えはないと思います。
marburg_aromatics_chem さんへ (flagburner)
2011-02-21 20:18:11
コメントありがとうございます。

>調査捕鯨中止には、様々な理由が推測されていますが、それを明かさないのが政治・外交戦略の一つです。
確かに、日本政府としてはそれを語るわけにはいきませんし(Sea Shepherd 対策を踏まえれば特に)。
ただ、語らな「すぎる」のも、逆に Sea Shepherd に攻撃材料を与えてしまうので、その辺りの見極めが難しいかもしれませんが・・・。

>他のマグロや温暖化対策などもそうですが、国内反対意見の説得の方が、官僚たちが一番いやがる仕事です。
確かに(苦笑)。
とりわけ、この件では強硬な意見を持つ人達を相手にするだけに、官僚たちの精神的な負担は相当大きいと思われます・・・。

>それに乗員の安全確保という理由は疑問です。
>妨害行為と無関係の落水事故で行方不明となった乗組員がいましたが、調査は続行しました。
2年前のことですね・・・。
そういえば、4年前に「調査捕鯨」を切り上げたのは、日新丸の機材が壊れたという理由からなんですよね。
今年度の調査捕鯨中止 日新丸火災で(2007年3月1日 日テレNews24)
http://www.news24.jp/articles/2007/03/01/0678396.html

ひょっとしたら、「調査捕鯨」団は『機材>人命』という判断基準で動いてるのかもしれません(苦笑)。
仮にそうであっては困るのですが・・・。

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