今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

ITと情報(知識)の共有

2007-12-21 00:02:27 | Faculty Development
道草大好き人間の項目で書きましたが、三つ葉在宅クリニックの非常勤としてお世話になり始めました

若手の医師ばかりで集まってつくった在宅クリニックです

現在常勤は6名で、在宅のみを行っています

中心となる舩木先生は、医者になってからMBAを取得すべく勉強中です(もう一人、姜先生もMBA取得済み)

「単に在宅をしている」というだけでなく、現在の日本の医療の閉塞感を打ち破るべく、ニーズの高い在宅をフィールドとして、色々な新しいことに彼らはチャレンジしています

まだ数日顔を出しただけの現段階で、わたしがびっくりしていることは

「独自に開発した情報共有システム」です

これは、電子カルテにとどまらず、診療に関わる全ての情報(彼らは意図的に「知識」と呼んでいます)を、ITを駆使したシステムによって共有しています。

情報(知識)の共有の仕方は、まさに昨年のHANDSの課題で読んだ、あるIT企業での手法に近い形で実践されています

全ての情報(知識)が全ての職員によって共有されており、その情報(知識)に対する責任の所在が明確になっており、2重、3重のセーフィティーネットによって人為的なミスをチェックする仕組みも構築されています

さらに、臨床の現場で出た疑問が、もれなくカンファレンスに自動的に拾いだされる仕組みがITを駆使して構築されており、それが次への知識として蓄積される仕掛けも考えられています

他にもHANDSで学んだ、マネージメントの要素が、あらゆるところで実践されています

さらに彼らのビジネスモデルの構築は、従業員のモチベーションの維持や、医療行為を選択するときに「純粋に患者さんのことだけを考えたい」という思いを実現することにも直結しています

例えば運営については、非営利のNPO(注)という形態をとっています

普通の医療法人だと、経営者である医師が医療の提供者を兼ねていることが多いです

経営者は医療を提供する際に、どうしても「利益」を考えてしまいます

経営が安定しないとなおさらです

しっかりとしたビジネスモデルを構築し、診療の際に経営のことを意識しなくても良い状態をつくりあげる

それが本当に実践できているかは、私にはまだ分かりませんが、少なくともそれを考えていて運営しているというのはすごいです

以前から、総合診療部の若手と三つ葉のメンバーで勉強会をしており、いろいろと話には聞いていたことばかりだったのですが

現場でそれをみると、聞いただけのときはピンと来ていなかったことを実感しました

彼らと話をしていると、いろいろと夢が広がっていきます

今後の展開とか、これは学会で発表できるとか・・・

素材の宝庫です

「在宅」を学びたいという思いで最初おじゃましましたが、マネージメントを勉強させてもらえるすばらしい機会を得ることができました

これで報酬を頂けるなんて一石何鳥というのでしょうか?

感謝、感謝です 

その分、何かをお返ししなくては行けません

彼らより臨床経験が長い私は、質の検証や監査的役割を期待されているようですので、是非お返しをしなければと思っています

(注)正しくは医療法人ですので広義でのNPOに入りますが、汎用される狭義のNPOではありません

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