樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鳥の声は世界共通か? Part.2

2017年01月26日 | 野鳥
前回の記事で、鳥や動物の鳴き声は国によって違うことを紹介しましたが、鳥の声については「聞きなし」を比較しただけで、犬の声(ワンワンとバウワウ)のように擬音語では比較しませんでした。
外国人がウグイスのさえずりをどう表現するのかを知りたいと思ったのもそのためでしたが、先日それに近い事例を見つけました。動物学者・川村多実二が著書『鳥の歌の科学』の中で、次のように書いています。


中央公論社の自然選書版(オリジナルは昭和22年発行)

「われわれの聴き方と欧米人の聴き方とは不思議に違うことがある。(中略)欧米人が日本の鳥の鳴き声を記載した場合を照合してみると、われわれの聴かないdやtの音を聴いている」。
そして、日本に滞在していたアメリカ人がウグイスの笹鳴きを「Peler, Peler, Peler」と表記した事例を上げています。日本人が「チャッ、チャッ、チャッ」と聴く声を、アメリカ人は「ペラ、ペラ、ペラ」と聴くわけです。
以下の動画は私の撮影ではありませんが、ウグイスの笹鳴きを聴いてください。



川村多実二は鳥の声を科学的に研究した学者であり、わが日本野鳥の会京都支部の初代支部長でもあります。
もう一つ、ウソの地鳴きについても事例を紹介しています。日本では「フィ、フィ」と聴きますが、ドイツでは「ディウ、ディウ」と聴くそうです。
川村元支部長は「どうも欧米人と東洋人では音の聴き方にそうとう著しい開きがあるらしい」と書いています。
鳥や動物の声の国際比較についてはもう一つ気になっていることがあるので、次回も別の角度から考察します。
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鳥の声は世界共通か?

2017年01月19日 | 野鳥
以前、「聞きなしの国際比較」というタイトルで、さえずりの表現が国によって違うことをご紹介しました。その後、このテーマをさらに深掘りするうちに面白いことに気づきました。
まず、シジュウカラのさえずりが日本と外国でどう違うかについて。以下は、日本野鳥の会(本部)発行の小冊子『おさんぽ図鑑』のバーコードをスマホで読み取って聴くジュウカラのさえずり。



この声を日本では「ツペー、ツペー、ツペー」と表現します。聞きなしは、「ちょっと、ちょっと、ちょっと」とか「土地、金、欲しいよ」など。
イギリスでは「Teacher, teacher(先生、先生)」と聞きなすそうですし、ドイツでは「Spitz die Scharr(スピッツ・ディ・シャール)」、意味は「鋭く引っ掻け」。
似ているようで違います。また、「聞きなしの国際比較」にも書きましたが、アフリカに生息するアカメジュズカケバトは、英語圏では “I AM a Red-Eyed Dove”(私はアカメジュズカケバトだ!)と聞きなす一方、フランス語圏では“Je PLEU-re-re-re-re”(私は泣いているんですぅ~)と聞きなすそうです。フランス語の正確な発音は分かりませんが、スペルだけ見ても英語圏とは明らかに違います。以下の動画の2:02にアカメジュズカケバトの声が収録されています。



同じ鳴き声なのに、国によって聞きなしが違うのはなぜだろう? そう考えて、あることに気づきました。
例えば、今年の干支ニワトリの鳴き声は、日本では「コケコッコー」ですが、アメリカでは「コッカドゥードゥルドゥー」。さらに、イタリアでは「ココリコ」、スペインでは「クィクィリクィ」、ロシアでは「クカレクー」。あろうことか、アメリカと同じ言語のイギリスは「トゥイートゥイートゥイー」とのこと。
また、犬も日本では「ワンワン」ですが、アメリカでは「バウワウワウ」、ロシアでは「ガフガフ」、韓国では「モンモン」。ここでもイギリスはアメリカと違って「ウーッ」。このあたりまではまだ納得できますが、スペインでは犬が「ラドラール」となくと知ると、スペイン人の耳や言語感覚を疑いたくなります。
つまり、動物の声を聞く耳の感覚と、それを擬音語として表現する言語感覚は、国によって違うということです。また、アメリカとイギリスで違うということは、言語の構造的な要因ではなく、習慣や伝統によるものだと推測できます。
ということは、鳥の声も世界共通ではなく、国によって違うわけです。例えばウグイスのさえずりは、日本人には「ホーホケキョ」としか聞こえませんが、英米独仏伊それぞれ違うはずです。今度、外国のバーダーに会ったら、ウグイスのさえずりがどう聞こえるか聞いてみようと思います。

なお、前回のカモカウントテストの正解は66羽でした。
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ガンカモ調査

2017年01月12日 | 野鳥
今の時期は全国の多くのバードウオッチャーが「ガンカモ調査」のためにあちこちの水辺に出かけています。これは、環境省→都道府県→(多くの場合)日本野鳥の会の各支部というルートで受託し、ガン類とカモ類の数をカウントする調査です。
昔、NHKの紅白歌合戦で会員が赤と白の札をカウントしていましたが、多分このガンカモ調査がベースだと思います。今でも「日本野鳥の会です」と言うと、「あ~、紅白歌合戦の…」という反応が返ってきます。
私の担当は淀競馬場と近くの池、出身地の日本海沿岸の3カ所。競馬場へはいつもどおり日曜日の早朝に行ってきました。「シンザン記念」が開催された日です。
今年は鳥インフルエンザが全国に拡大し、京都府でもこの淀競馬場の池で飼育されていたコブハクチョウが死亡して陽性反応が出たため、コクチョウを含む全38羽が殺処分されました。
調査日はその約2週間後。人間に感染することはないので不安はなかったのですが、カモにも影響があるだろうなと思いながら場内に入りました。池の周囲は、石灰が大量に散布されて雪が降ったよう。



やはり、カモにも影響があったようで、合計数は昨年の420羽に対して220羽。コブハクチョウへの給餌のおこぼれがなくなったので半減したのでしょう。
このガンカモ調査の調査員育成と調査精度向上のため、京都支部では昨年「カモ識別講座」を実施しました。その教材としてカウントのレッスン用動画を作成しましたので、あなたも何羽いるかゲームのつもりでカウントしてみてください。



正解は次回の記事で発表します。
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鳥と映画と仕事

2017年01月05日 | 野鳥
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお付き合いください。
さて、年末から正月にかけて、私は結構忙しく過ごしておりました。まず、鳥。
12月26日に、京都支部として2016年最後の探鳥会を担当。宇治川沿いのコースを歩きながら、参加者に43種の鳥を見ていただきました。そして、1月2日は近くの干拓田で冬鳥を観察する恒例の新春探鳥会を担当。例年より多い45名の参加者を2人で案内しました。
ありがたいことに、昼食時間に干拓田の近くに住む会員夫婦が、大きなポットに入れたコーヒーと数十人分の紙コップを持って来てくれました。4年ほど前、この探鳥会で私が勧誘して入会された会員です。「探鳥会には参加できないけど、fagusさんの顔を見に来ました」とのこと。うれしいですね~。こういうことがあるから探鳥会の担当を続けられます。


12月26日の宇治平日探鳥会の様子

私は1年に約20回の探鳥会を担当しますが、長い間一会員として参加したことがありません。たまには参加者として鳥見を楽しもうと、翌3日に隣の八幡市で行われた探鳥会に出かけました。結局お手伝いをさせられましたが、天候にも恵まれ、久しぶりのベニマシコ雄やこの場所では多分初登場のオシドリなど、じっくり鳥見を楽しむことができました。
その午後、鳥が主役の映画『鳥』をつくったヒッチコックのドキュメンタリー『ヒッチコック/トリュフォー』と、1966年にベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した『アルジェの戦い』を見るために京都市内へ出かけました。探鳥会のはしごに続いて、映画のはしごです。
前者はヒッチコックを敬愛するフランスの映画監督フランソワ・トリュフォーのインタビューがベース。ヒッチコックファンの私としては見逃せない1本でした。後者はベネチアと同時に1967年のキネマ旬報外国映画第1位に輝いた傑作ですが、まだ見ていませんでした。フランスの植民地アルジェリアが独立するまでの戦いを描いています。たまたまですが、2本ともフランスがらみ。



そのフランスのある会社が日本で新しい事業を展開するので、その広告展開を手伝ってほしいという仕事が舞い込み、昨日大阪へ打ち合わせに行ってきました。クリスマスの頃にも別の仕事でインタビューを3件こなし、そのライティングで大晦日と元旦を費やしました。
というわけで、年末と正月は鳥と映画と仕事のはしごでした。今年1年、こんな感じで趣味と仕事がバランス良く続くといいのですが…。
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