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不動産受験新報2007年8月号 特集4宅建税制改正 19年宅建試験出題範囲

2007-08-27 09:00:00 | Weblog
住宅新報社・月刊「不動産受験新報」20007年8月号
       (毎月1日発売 定価910円)

特集4 宅建税制改正
19年宅建試験出題範囲
税理士 伊藤陽三

はじめに
 不動産にかかわる税制改正については,今年新たなものとして,高齢化社会への対応のため,バリアフリー改修工事促進税制が設けられました。このような政策的特例については,どのような趣旨で設けられた特例で,本則や従来の特例とどのような関係にあるかということの理解とともに,期限に注意が必要です。
 そこで,今回設けられた政策的改正の内容(①新設)と,従来からの特例の平成19年4月1日現在の状況(②一部内容改正,③一部内容改正のうえ適用期間延長,④同一内容で適用期間延長)についても説明します。主なものの概略は,以下のとおりです。
①新設
 住宅のバリアフリー改修工事をした場合の所得税額の特別控除および固定資産税額の減額の特例の創設(平成19年4月1日から平成20年12月31日までの工事)。
②一部内容改正(選択枠の付加)
 国から地方への税源移譲に伴い,住宅ローン減税効果の確保のため,現行制度に控除率および減税期間の選択を認める特例(平成19年および平成20年入居者)を設けた。
③一部内容改正のうえ適用期間延長
 特定居住用財産の買換えの特例の面積上限要件を撤廃のうえ,適用期限を3年延長し,平成21年3月31日までとした。
④同一内容で適用期間延長
 居住用財産の買換え等の場合および特定居住用財産の譲渡の場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除の適用期間を3年延長し,平成21年3月31日までとした。
 登録免許税に係る住宅用家屋の税率の特例の適用期限を3年延長し,平成21年3月31日までとした。
 不動産譲渡に関する契約書等(記載金額が1,000万円超)の印紙税軽減措置の適用期限を3年延長し,平成21年3月31日までとした。
改正点の解説
(1) 住宅のバリアフリー改修工事促進税制とは
 高齢化社会への対応として,居住者が廊下の拡幅や,手すりの設置といったバリアフリー改修工事を行った場合に,改修工事に充てるための借入金の年末残高の一定割合を所得税から差し引き(税額控除),翌年分の固定資産税額(100㎡相当分まで)を3分の1減額するものです。
 従来からのいわゆる住宅ローン控除も住宅取得のみならず,100万円を超える増改築工事には適用があり,このバリアフリー工事ローン税額控除と住宅ローン控除の両者ともに適用可能な場合には,いずれかの選択適用となります。
 なお,耐震改修工事促進のための所得税額の特別控除も,平成18年4月1日から平成20年12月31日までの既存住宅の耐震改修工事については従来から認められており,これは工事支出があれば借入金は不要で,住宅ローン控除と併せて適用を受けることができます。
 住宅改良工事に係る住宅ローン控除(増改築工事),バリアフリー改修工事ローン控除,耐震改修工事支出控除の内容の主な相違については,下表のとおりです。
〈各種工事に係る税額控除〉
 
特例 対象工事 対象期間 控除期間 ローン年末残高 控除年および控除率 最大控除額 適用関係
住宅ローン控除@ 100万円@超の増改築工事 平成19年 原則@10年 2,500@万円以下 原則@1~6年目@1%@7~10年目@0.5% 200万@円 居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除との併用可能
平成20年 2,000@万円以下 原則@1~6年目@1%@7~10年目@0.5% 160万@円
バリアフリー改修工事ローン控除 30万円超のバリアフリー改修工事 平成19年4月1日から@平成20年12月31日までの工事 5年 バリアフリー工事部分200@万円以下@@それ以外工事部分@1,000@万円以下 1~5年目@バリアフリー工事部分2%@@それ以外工事部分1% 60万円 住宅ローン控除といずれかの選択適用のみ
 
耐震改修工事支出控除 昭和56年6月1日以降のいわゆる新耐震基準に適合させる改修工事 平成18年4月1日から@平成20年12月31日までの工事 支出年 支出があればよくローンは不要 工事支出の10% 20万円 住宅ローン控除とは併用できる
(2) 住宅ローン控除の期間および控除率の選択を認める改正とは
 国から地方への税源移譲に伴い,所得税および住民税の税率が平成19年以降変わります。これにより所得税が減り,逆に住民税が増加する場合がでてきます。そして,このような場合には住宅ローン控除の対象となる所得税が,そもそも少なくなってしまい,結果として所得税額控除の効果が薄まってしまいます。
 そこで,最大控除額に変更はありませんが,あえて控除率を下げて期間の長期にわたるものを設けて選択を認め,従来からの所得税額控除による還付の期待を損なわないようにしたものです。
 従来の住宅ローン控除と改正により選択が認めるものとの相違は,下表のとおりです。
〈従来からの住宅ローン控除の概要〉
 
居住年 控除期間 住宅ローン年末残高 控除年および控除率 最大控除額
平成@19年 10年 2,500@万円以下 1年目~@6年目1%@7年目@~@10年目@0.5% 200万円
平成@20年 10年 2,000@万円以下 1年目@~@6年目1%@7年目@~@10年目0.5% 160万円
〈改正により上記との選択が認められるもの〉
 
居住年 控除期間 住宅ローン年末残高 控除年および控除率 最大控除額
平成@19年 15年 2,500@万円以下 1年目@~@10年目0.6%@11年目@~@15年目0.4% 200万円
平成@20年 15年 2,000@万円以下 1年目@~@10年目0.6%@11年目@~@15年目0.4% 160万円
(3) 特定居住用財産の買換えの特例の一部改正と延長とは
 従来,居住用財産を買い換えた場合に,売却した居住用財産の課税が繰り延べられる特例には,譲渡資産についての取得・居住期間要件の厳格な「相続等により取得した居住用財産の買換えの特例」と買換え資産について,床面積要件の厳格な「特定の居住用財産の買換えの特例」の2種類がありました。
 そこで特例を簡素化し,優良住宅への住み替えを促すため,前者を廃止し,後者に一本化したうえ,後者の買換え建物についての床面積要件の上限を撤廃し,適用期間を延長したものです。両者の一本化の概略は,下表のとおりです。
 なお,居住用財産の買換えの特例は,居住用財産譲渡の場合の3,000万円の特別控除および所有期間10年超の居住用財産譲渡の場合の軽減税率の特例とは選択適用となります。
〈特定の居住用財産の買換えの特例への一本化〉( )内は旧特例についての記述
 
特例 (相続等により取得した居住用 特定の居住用財産の買換えの特
 
財産の買換えの特例) →廃止 例@→ 一部要件緩和のうえ,期限延長
譲渡資産の要件 (・居住用財産)@(・所有期間10年超)@(・居住期間30年以上で父母等から相続等により取得したもの) ・居住用財産@・所有期間10年超@・居住期間10年以上
買換資産の要件 (・居住用財産) ・居住用財産@・面積要件@ 建物床面積@ 50㎡以上@ (280㎡以下@ との上限廃止)@ 土地面積@ 500㎡以下
適用@期限 (平成19年3月31日で廃止) 平成21年12月31日まで3年延長
(4) 同一内容での特例の期間延長については,趣旨および内容については従来どおりですので,説明は省略します。
 ただ住み替えを促すための居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除については,買換えの場合とそれ以外(賃貸住宅への住み替え等)の場合で要件がやや異なり,適用できる場合の区別が必要です。
 買換えの場合には,買い換えた新たな住宅について住宅ローンがあれば,譲渡した住宅についての住宅ローン残高の有無は問いませんが,買換え以外の場合には,売却代金で仮に譲渡した住宅についての住宅ローンを返済したとしても,なお住宅ローンが残るような場合に限り,適用可能となっています。
 また,登録免許税と不動産取得税の税率については,本則への移行を段階的に進めるための特例が昨年度より施行中であり,土地等につき注意が必要です。