岡崎直司の岡目八目

歩キ目デス・ウォッチャー岡崎が、足の向くまま気の向くまま、日々のつれづれをつづります。

『世間遺産放浪記』

2007-05-31 09:48:10 | 良書紹介


またまた面白い本が刊行された。

著者は藤田洋三氏、別府在住のプロカメラマン。
氏の放浪記シリーズ「鏝絵放浪記」「藁塚放浪記」に続く三冊目。

まずは意表をつくタイトルが面白い。考えてみれば、“世間(せけん)”などと言う言葉自体も、若者的には今頃使うのかなぁ、という馴染み具合の現代。TVでワタオニ、つまり「渡る世間は鬼ばかり」という長寿番組があるから、何とか命脈を保っている言葉なのかも知れない。
ともかく、ブームと言っても過言ではない昨今の“世界遺産”に対する強烈なアンチテーゼを醸しているのは間違いない。岡目八目流に捉えれば、世界遺産は文化財のブランド志向、優劣順位がイメージされる傾向がある。
この本では、そうした分野には絶対入らないであろう、しかしとても気になる、無名の民が作り上げたモノが確かに周りに存在することを気付かせてくれる。

愛媛事例も多く取り上げられていて、石風社・刊の2300円。(247葉のカラー写真で構成されていてお買い得!?)

モーガン邸の本。【8】

2007-05-15 12:10:08 | 良書紹介


「湘南の名建築・旧モーガン邸はこうして残った」

今年2月に、「モーガン邸を守る会」によってやっと発刊された活動記録の本。
万人に読まれるよう、写真や図面なども豊富で読みやすく、工夫された本になっている。
募金運動を軌道に乗せ、さぁこれからという矢先の出来事。

建物は残念ながら不審火という不慮の事態によって焼失したが、守る会の活動ポリシーや多くの市民の尊い気持ちまでが消滅した訳ではない。
こうしたこれまでの地道な取り組みの軌跡を通して、また次なる展開方式に向けて頑張り時かも知れない。

中世から続いたドイツの町のように、第二次世界大戦で壊滅したにも関わらず、市民の努力で見事に復元復興した例もある。
人は時として、全く立ち直れそうに無い試練をママ受けることがある。このモーガン邸焼失の事件などはまさにそれで、「えっ、なんで?」の世界。
だからこそ、運動の更なる発展を祈るばかり。
一冊1200円のこの労作に、多くの人が共感して頂く事を願う。

ご要望の向きは、nokazaki@dokidoki.ne.jp (岡崎)までご連絡を。


モーガン邸  ⑨

2007-05-12 10:55:34 | 建見楽学


不思議なのは、洋間であるにも関わらず、こうして平然と「境欄間(さかいらんま)」が入れられていること。

日本人を妻とし、日本文化に溶け込もうとしたアメリカ人モーガンの趣味が感じられて面白いところ。