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長岡弘樹 「教場」 小学館文庫

2016年01月31日 | 
週刊文春「2013年ミステリーベスト10 国内部門第1位
2014年本屋大賞ノミネート
2014年このミス第2位(国内編)
と 輝かしいうたい文句で手にした1冊

少なくてもミステリーではないと思うが、このミス2位。


微妙につながりのある短編6話とエピローグからなる連作の警察学校小説。

タイトルの教場とは教室こと。ここでは警察官が現場に配属になる前に学ぶ警察学校のこと。
「必要な人材を育てる前に、不要な人材を篩い落とす場。それが警察学校だ。」(第二話より)
この学校の中で様々な事件が起きる。

第一話 「職質」 前任が入院し急きょこの物語の主役風間係長が担任として登場する。宮坂と恩人の息子平田との人間模様を描く、成績の悪い平田のために出来の悪いふりをする宮坂。それを見下されたと思い恨む平田。学校でのプレッシャーにも耐えられず、宮坂を巻き込んで自殺を図る。
結果は第二話の中の会話で明らかになる。風間の鋭い洞察力で失敗に終わるが、平田は学校を去る。
殺人未遂なのにただ学校を去るだけでいいのか?

第二話 「牢問」 女性警察官の人間模様。同僚の岸川に脅迫状を送る楠本。楠本は岸川に婚約者を事故でひき殺されたと勘違いしていた。岸川はその送り主が信じている楠本からだと気付く。風間も気付く。裏切られた岸川は楠本を駐車場のピットに落としリフトで挟む。この結果も次話の中の会話で明らかになる。楠本は学校に残り杖をついて講義を受け、岸川は脱走同然でいなくなり退校処分。

第三話 「蟻穴 」白バイ隊員志望の鳥羽と蟻がきっかけで仲良くなった稲辺。本当の事しか書いてはいけない毎日の日記。鳥羽は禁じられた創作を書いてしまう。そのために稲辺のアリバイの証明する証言が出来ず、稲辺から恨みを買い蟻を耳に入れられイヤープロテクターを接着させてしまう。ここでも結果は次話に書かれている。鳥羽の鼓膜は蟻に食いちぎられ聴覚に支障をきたし白バイ隊員への道は絶たれ、稲辺は退校。

第四話 「調達」 ボクサー上がりの日下部と調達屋の樫村。成績の悪い日下部は樫村の点数を調達する誘いに乗る。授業でよい点を取った知識が災いし逆に学校で起きた小火事件の犯人にされてしまう。実際の小火の犯人は樫村と大学が同じ先輩警察官の尾崎だった。樫村は尾崎の無罪を調達したのだ。 

第五話 「異物」 一度刺されスズメバチが大嫌いでパトカー乗務員志望の由良と同じ講習会の準備担当の安岡。講習でパトカーを運転するが社内にスズメバチが居て気が動転して捜査を誤りひかれそうになった安岡を助けた風間ひいてしまう。由良は当番をサボった仕返しに安岡がスズメバチを車に放ったと思い込み、復讐を試みるが、風間に気付かれ失敗する。犯人はいないことがわかり仲直りする二人。風間の指導で由良も競技会でよい成績を収める。

第六話 「背水」 数話にちょこっと登場している都築。日下部にはめられ卒業文集編さん委員に。本文中で何人かの作文を読むことが出来る。宮坂、楠本、鳥羽、由良、そして都築。成績優秀で卒業生総代を狙っている都築だが風間から度胸がないから警察官は無理、卒業までに風間を納得させられなかったら退校と言われる。都築は文集締切以降の話を背水の陣として書く。拳銃検定と職質コンテストでトップの成績を取った、と。その通りとなり総代になる。

「エピローグ」 教場2に向けてか、第百期課程の警察官が入校した。



どこまでが本当なんだろうこの話。
警察学校は必要な人材を育てる前に、不要な人材を篩い落とす場。というのは納得できないわけでもない。
今警察官をやっている人たちはこういう厳しい学校を出て来たんだなと思う。
とうてい僕なら3日と持たないだろう。
でも本当にこんなにすごいところなの警察学校って?


それにしても1-3話はちょっと作り過ぎでは?こんな人たちばかりが警察官を目指しているわけではないと思う。
それに退校した人はあきらかに犯罪者でしょ。ただの退校でいいの?と思ってしまう。
4話になって少し落ち着きを見せ、5話6話は良い話的になってきているが・・・。
ん?全然いい話じゃないじゃん。初めの3話があまりにも醜い人間模様なので、勘違い。
4-6話にでてくる人が実際に警察官ならいやだなということに気が付く。


風間教官の観察力、洞察力、推理力と凄過ぎでしょ。
おかげで面白くは読めたが、後味はすっきりしない本でした。


教場2が2月末に発売になるようだが、どんな展開になるのだろう。