飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

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レーニン廟の遺骸埋葬問題が年末の下院選の争点に浮上する?

2011年01月24日 12時31分45秒 | Weblog
 ロシア革命の指導者レーニンの遺骸は今もモスクワ中心部・赤の広場のレーニン廟に安置されているが、議会与党「統一ロシア」の議員が遺骸の埋葬問題を議論するよう提案し、波紋を呼んでいる。これまでも何度かこの問題は議論されてきたが、結論が出ないまま先送りされてきた。

 レーニンは1924年1月21日に死去したが、遺骸は本人が夢にも思わなかった永久保存措置を施され、赤の広場のレーニン廟に今なお安置され、公開されている。もっとも、遺骸の大半はサンクトペテルブルクの墓地に埋葬され、廟に実際に残っているのは1割程度とされる。

 今回改めて提案しているのはメジンスキー下院議員で、与党で議論し受け入れられれば下院で討論するよう求めている。これを受け、与党は先週末、公式サイトに同議員の意見を掲載、レーニン廟を撤去し、遺骸を墓地に埋葬することに賛成か反対かを投票するよう求めている。2日間の投票結果によると、約18万人が投票し、賛成が7割、反対が3割だった。

 この問題では何度も世論調査が行われているが、09年の調査では41%がレーニン廟での遺骸安置について「正しくない上、不自然だ」と回答、このままでいいという人は15%にとどまっていた。大勢は墓地埋葬派だが、政党の中で断固反対しているのは旧ソ連共産党の継承者を自認しているロシア共産党だ。今回の提案についても「すでにこの問題は決着済みだ。これを蒸し返そうという与党の試みは野党内を混乱させようという陰謀に他ならない」と決め付けている。

 一方、極右のジリノフスキー党首が率いる自由民主党は「政治的理由ではなく、人間的な観点から墓地埋葬案を支持する」として与党案に賛成している。また、改革派野党のネムツォフ元第一副首相も埋葬案を支持すると語っている。

 しかし、この問題を取り上げると、赤の広場に安置されている旧ソ連時代の英雄や無名戦士の遺骸撤去も論議することになり、大きな社会問題に発展すると危惧する声も出ている。

 与党内では、年末の下院選で目立った争点がないことから、この問題を争点にしようという動きもみられる。野党でいまだに大きな勢力を持っている共産党を追い落とすチャンスと見ているからだろう。与党の事実上の党首であるプーチン首相も、この問題には反対しないとの読みもあるようだ。

 今年12月には、ソ連共産党とソ連の解体から満20年を迎える。ロシアでは、いまだにソ連時代の遺物を引きずっていることが少なくない。その最たるものが、レーニン廟といえる。今年はこうした旧習から脱却するいい機会である。今も実権を握っているプーチン首相なら「ツルの一声」で解決するといっても過言ではないだろう。

 
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