飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するホットなニュースを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外に面白い!

北方領土交渉は主権決定方式から国際法的枠組みでの合意に様変わり?!

2017年02月05日 21時27分34秒 | Weblog
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安倍晋三首相とプーチン大統領の昨年末の首脳会談後、両国政府が合意した北方4島での共同経済活動を巡って国内で未だに議論が続けられている。合意を評価しようという容認派と、懐疑的な批判派の意見をまとめ、判断の参考にしたい。

両国政府のプレス向け声明によると、日露が択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島での共同経済行動に関する協議を開始することが平和条約の締結に向けた重要な一歩になりうるという。そこで両国首脳は関係省庁に漁業、海面養殖、観光、医療、環境などをあげ、共同経済活動の条件、形態、分野の調整などの問題を協議するよう指示するとしている。その上で、調整が済んだ分野に応じて国際的約束の締結などの問題を検討するよう指摘している。

この合意について下斗米伸夫法政大教授は「安倍首相の『新しいアプローチ』で問題解決の現実的過程が始まった」と評価している。さらに、一歩踏み込んで「共同経済活動次第では、平和条約へと進展する可能性が深まっている」と分析している。

下斗米教授によると、これは北方領土の主権の解決以前に四島で旧島民など両国民が共存するという理念で、国際約束(あるいは国際条約)という特別な枠での合意、つまりは一種のコンドミニアム「共同管理」的な解決枠に踏み出したと捉えている。このモデルになっているのは、2010年にロシアとノルウェーの国境問題を解決したスピッツベルゲン島のケースだ。ノルウェーの主権下にあるが、スバーバル条約でロシア国籍の住民数百人がこの島で暮らしている。これにより、両国は海の最終的な国境画定に成功したのである。

下斗米教授は以上のことから、今後の北方領土交渉は「これまで日露間で繰り返された一回の交渉で四島の主権を決める方式」から、共同管理などの「国際法的な枠組みで問題を解決する」仕組みに変わると述べている。つまり、共同経済活動への国際約束の模索は「一種の中間条約、ミニ平和条約でもある」と断じている。

これに対し、対露強硬派の袴田茂樹新潟県立大教授は首脳会談の結果について「経済協力合意のみで(これも実質は小さいが)、領土交渉の進展は全くなかった」と断言している(産経新聞2月3日付け「正論」)。さらに、注目の共同経済活動の合意について「官邸はあたかも成果のごとく宣伝している」と言い切っている。

こう決めつける理由として袴田教授は、ロシア側が共同経済活動を「あくまでロシアの法律下で行うとの主張を譲っておらず、首相や外務省が合意したと主張する『特別な制度』 を認めていない」からだとしている。

この論争の決着はまだついていないが、袴田教授のように全面的に切り捨ててしまえないのは、すでに日露政府が共同経済活動を基軸にして協議を進めていく方向に舵を切っているからだ。日本外務省も国際法の専門家である秋葉剛男外務審議官を対露交渉の正面に立てている。この公式協議は3月に東京で両国の関係省庁が参加して行われることになっており、この協議の行方をじっくり見守りたい。(この項おわり)
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トランプ米大統領は取引上手な不動産屋タイプ!

2017年01月26日 13時34分07秒 | Weblog

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オバマ氏に代わって米大統領になったトランプ氏は、就任から1週間たっても、選挙当時からの「スタイル」を変えていない。ツイッターや演説でズバッと要点を言うやり方だ。だが、これはガツンと言って相手を脅す不動産屋の手口である。こんなやり方をいつまで続けるつもりだろうか。

米国親日派のアーミテージ氏(元国務副長官)は,トランプ氏のスタイルを不動産屋的だと喝破している(26日付け日経新聞)。ビジネスマンなら相手の立場も考えるが、彼はガツンと言って取引するタイプだと言う。政治家の経験がないだけに、対話が苦手なのだろうか。こういう人が世界をリードすべき米国の大統領なのだから、先が思いやられる。

日本が一番心配しているのは、米国が保護貿易主義に徹することと、アジアの安全保障を日本に肩代わりさせようとすることだろう。前者については、既にTTPからの撤退を宣言しているので心配が現実になった。今後クルマの輸出規制なども迫ってこよう。後者についてははっきりしないが、当面は駐留米軍経費の負担増が焦点になろう。

一方、中国に対しても強気な発言を繰り返しており、米中戦争を懸念する声さえ出ている。特に東シナ海、南シナ海での中国軍のプレゼンスに対しては、厳しい姿勢を取っている。対北朝鮮についても同様で、こうした姿勢が日本の安保問題に跳ね返ってくる可能性は十分ある。

では、ロシアに対してはどうだろうか。これまでのところ、オバマ政権時代の米露対立を緩和しようとしている感じがする。だが、ウクライナ紛争に絡む経済制裁や軍事力の優位性を変更するようなことは当面考えられない。ここでも「米国ファースト」を主張するに違いない。ロシアのプーチン大統領も当分はトランプ大統領の言動を注意深く見守ることになろう。

トランプ新政権のスタートも遅れていて、全容が明らかになるのは春先になるかもしれない。安倍首相はまたしても先走って2月にトランプ大統領との首脳会談を画策しているが、あわてて手の内をさらけ出すのは相手を利するだけだ。今はじっくり構えて対応すべき時ではないだろうか。(この項おわり)
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トランプ次期米大統領、対露関係の改善問題でトーンダウンか

2017年01月13日 10時16分10秒 | Weblog

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ツイッターで世界に言葉の爆弾を投げ続けてきたトランプ次期米大統領が当選後、初めて記者会見に応じた。予想通り、大手メディアを罵倒したり、対メキシコ強硬策を繰り返したり、相変わらず言いたい放題の「トランプ流」会見だったが、対露関係では選挙中のロシアのサーバー攻撃を認めるなど、トーンダウンした印象だ。一方で、親露的な人物を政府などに登用しており、今後どういう政策を進めるのか、注目したい。

会見では、のっけからロシアが握ったとされるトランプ氏のスキャンダルに絡む質問が出され、トランプ節が爆発した。スキャンダルとは、トランプ氏が2013年に訪露した際、売春婦と関係したことを示すメモに関するものだが、トランプ氏は「情報はフェイクニュース(ニセのニュース)だ。インチキだ。病的な人々がクズのような情報をつなぎ合わせたものだ」と言い切った。その上、質問しようとしたCNN記者に対し、「フェイクニュースを流した」として質問を封じた。

民主主義国家を標榜する米国ではありえない対応だが、その後の選挙中のサーバー攻撃についてはこれまでの発言を撤回し「ロシアの仕業だったと思う」と容認。さらに、今後の米露関係について「プーチンがトランプを好きならそれは負債ではなく、財産だ。プーチンと気が合うかはわからない。そうあってほしいが、そうでないかもしれない」と答えた。これまでの発言に比べるとトーンダウンした感じがする。周辺の人々から吹き込まれたのかどうかわからないが、今後の政策で判断する必要がある。

対外関係では、中国に対し「経済的にも、南シナ海の巨大な要塞建設によっても我々に完全につけ込んでいる」と敵意をむき出しにしている。続けてトランプ氏は日本、メキシコを名指しして「私が国を率いれば、過去の米政権下より、はるかに我々を尊敬するようになる」と暗に脅している。日本もオバマ政権時代の「蜜月気分」でいると、飛んだとばっちりを受けないとも限らない。

以前、トランプ氏はツイッターでロシアでのスキャンダル絡みで「私たちはネチス・ドイツに住んでいるのか」とつぶやいたが、メディアに対する対応や記者会見をせずにツイッターで一方的に相手を攻撃するような手法は、かつてのナチスそのものと言っても言い過ぎではない。今後、日本もこういう大統領を相手に付き合っていかなければならないだけに、よほど腹をくくって対応しないととんでもないことになりかねない。世界に先駆けて、わざわざ自宅にまで会いに行ったどこかの首相で本当に大丈夫なのだろうか。(この項終わり)
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2017年はプーチン露大統領とトランプ新米大統領の掛け合いに注目!

2017年01月01日 09時52分33秒 | Weblog

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昨年11月の米大統領選で勝利したトランプ氏が1月20日、新大統領に就任し、いよいよトランプ時代が幕をあける。一方、米国への対抗意識を燃やすプーチン露大統領は、米国のサイバー攻撃批判への対抗措置を取らずに、新大統領のお手並み拝見とばかり、余裕の作戦に出ている。ともに「理念よりも損得」という現実主義者だけに、二人の丁々発止の言動に注目したい。

近年、米英主導の自由放任主義的資本主義が台頭し、格差社会と金融危機、環境問題の三悪が世界的に深刻となっている。これへの大衆レベルの反発が、既成勢力への強力なノーとなり、世界的に内向きな政治が主流になりつつある。この傾向の二大チャンピョンがプーチン大統領であり、トランプ新大統領であるといえる。この二人の言動が2017年の世界を動かしていくことは間違いない。

では、今年この二人はどう動くのか。米国の影響力が低下するハザマを縫って、ロシアは中東、欧州、さらにアジアに影響力を伸ばしている。これに台頭著しい中国が割って入り、三つ巴の様相になりつつある。こうした大国の動きに一番影響を受けやすいのが日本だろう。日本は日米同盟を基軸にしているものの、肝心の米国が内向きになり、トランプ氏の発言のように、アジア太平洋の安全保障の「肩代わり」を要求してくると、平和国家・日本の根幹が崩れてこざるを得ない。当面、この点についてのトランプ新大統領の発言を注視していきたい。

一方、北方領土問題を巡って日本との経済協力強化を画策するプーチン大統領は、領土交渉をテコに日米同盟にクサビを打つ構えを見せている。日米同盟関係にクサビを入れてまで北方領土返還を求めるのかどうかの本気度を安倍政権に迫っているのである。これに対し、安倍首相はあわててハワイへ飛んでいき、真珠湾攻撃への「和解」を演出したが、実利を求めるトランプ政権はこんなことで騙されないだろう。今後安倍政権はトランプ新政権に日米同盟の本気度を試されることになろう。

こうした状況の中で、日本は米中露の三大国との距離感あるいは立ち位置を明確にするよう求められることは明白だ。その際、安倍政権はきちんとした対応ができるのかどうか心もとない。日米間の距離が広がる分、どの国との距離を縮めるのか。ともに領土問題を抱える中国とロシアとの関係を、どう見直していくのか。外務省だけでは無く、安倍政権全体として、これからの国際関係をどう創造していくかを真剣に検討すべきだろう。(この項おわり)
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今回の首脳会談を長期的な日露関係を構築するきっかけにすべきだ!

2016年12月17日 11時13分04秒 | Weblog
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プーチン大統領訪日による日露首脳会談は、北方領土での共同経済活動を巡る交渉開始を決めただけで、北方領土問題の交渉そのものは進展がなかった。二階自民党幹事長が述べたように「国民の大半はがっかりしている」に違いない。だが、この結果は長期的に見ると、日露関係を抜本的に見直すチャンスでもある。安倍晋三首相はこの際、日米同盟も含めて日米露の関係見直しを図るべきではないか。

北方領土交渉に前のめりで取り組んだ安倍首相は、日露の共同経済行動受け入れを領土交渉開始の条件とされ、プーチン大統領の術中にはまってしまった。しかも、日本側の主張する、主権棚上げの「特別な制度」による共同活動ではなく、ロシアの主権を認めた上での共同活動という大枠をはめられてしまった。これでは日本側は認められるわけがなく、会談は行き詰ったに違いない。

そもそも北方領土は第二次大戦でソ連軍に占領され、それ以来、旧ソ連・ロシアの実効支配を受けてきた。戦争で奪われたものを平時の交渉で取り返すには、日本側が譲歩せざるを得ないのは明らかである。そこで、プーチン政権が日本側の足元を見て、共同経済活動を領土交渉開始の条件として要求してきたのである。これでは、安倍政権としてもこの条件を飲まざるを得ないのは当然である。

ここで問題になるのは、主権の扱いである。日露双方とも主権問題では簡単に折れるわけにはいかない。そこで安倍政権は主権を棚上げした「特別な制度」を提案したが、これも北方領土を実効支配しているロシアとしては譲れないところである。今後、この問題の交渉を両国間で行う事になったが、対症療法的な解決策では治らないだろう。これを機会に、安倍政権はロシアとの関係を拡大し、対米、対中との関係に劣らない積極的な関係に改めるべきである。

もう一つの問題は、平和条約交渉の際、プーチン大統領が安全保障問題を絡める意向を示唆した事である。ロシアにとって、北方領土があるオホーツク海周辺は核弾頭搭載の原潜を配備した安保戦略上、重要な地域である。北方四島のうち、1島でも日本に返還すれば、ロシアの安保戦略に変化が生じかねない。日米同盟が厳然として存在すれば、日本に島を返還すれば、そこに米軍の基地ができる可能性を排除しないからだ。

安倍政権は今後、この問題にどう向き合っていくのか。領土返還交渉を本気で行うなら、この問題で米新政権と協議する必要がある。場合によっては日米同盟自体の見直しにつながるかもしれない。安倍政権の本気度が問われる問題である。一方、米国のトランプ新大統領は「日本の安保ただ乗り論」を主張した経緯があり、日米同盟の見直しにより、逆に日本側が相当な対価を払う羽目になる可能性もある。

今回の日露首脳会談の結果、北方領土問題は日露間の問題にとどまらず、米国、さらには中国をも巻き込んだ国際問題に発展しかねない事態となりつつある。この際、安倍政権は対米従属の日米同盟を改め、独自性を持った外交ができるようにすべきだろう。そうでない限り、ロシアは日本を自立した独立国と認めず、本格的な領土交渉に乗ってこない恐れがある。そこまでやる気がなければ、安倍首相が考えている任期中の領土問題の解決は望めないだろう。(この項終わり)
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ソ連崩壊から四半世紀。変わらぬロシアとどう向き合うべきか?

2016年12月10日 09時52分59秒 | Weblog

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かつて米国から「悪の大国」と言われたソ連が1991年暮れに崩壊してから早四半世紀が立つ。この間、新生ロシアは市場経済に移行し、民主制度を構築したものの、ソ連時代の大国体質が時折顔を出し、西側諸国の反発を買っている。隣国である日本は、この国とどう付き合えばいいのだろうか。

筆者はソ連崩壊時、モスクワに駐在し社会主義大国・ソ連の落日をつぶさに観察した。人類初の社会主義大国は国民の支持を失い、統制経済が立ち行かなくなると、倒れるのはあっという間だった。70年余続いた共産党の支部から党員が次々姿を消し、幹部連中は国有財産をタダ同然で掠め取ったのだ。

ソ連崩壊の直前には国営商店の棚から商品が消え去り、我々外国人は外貨ショップで買うしかなかった。だが、ロシアの庶民はどっこい、生き残った。労働者は組合間の物資横流しで融通し合い、年金生活者は菜園付き簡易別荘(ダーチャ)で食いつないだ。外国人には餓死者が出ないのは不思議だったが、2度の世界大戦を乗り切った庶民の知恵は偉大だった。

市場経済への移行は早かった。ソ連崩壊のショックも癒えぬ翌年の正月3日には統制価格をほぼ一斉に自由化した。その途端、国営商店に商品が出回り始め、価格が一気に値上がりした。この悪名高きショック療法で庶民の暮らしはたちまち苦しくなり、社会が大混乱した。そのスキに乗じてマフィアが跋扈し、一時無法社会に陥った。

この混乱の中でも、社会に押し流されず、抵抗した庶民が少なくなかった。筆者が目撃したのは、泥酔した男がパン屋に入っていき、店員を怒鳴りつけ、オタオタしている間にパンを持ち逃げした光景だ。筆者はすぐ通りに出てみたが、顔の赤い男の姿は見えなかった。見えたのは、奥さんらしき女性と談笑しながら歩いている中年の男だけだった。その男が酔ったふりをしてパンを盗んだのは明らかだった。「さすが、役者が多い国だな」と感心したのを覚えている。

ロシアには大昔から近隣国家に支配され、痛めつけられた歴史がある。日本のような島国と違って、平原の国家の宿命かもしれない。中でも、ジンギスカンの末裔に約200年間も支配された「タタールのくびき」はロシア社会に大きな爪痕を残したが、外国人の抑圧をいかに最小化するかを身を以て体験したとも言える。こうしてロシア人は苦難を耐え抜くことと、抑圧から逃れるすべを学んだのである。今日本が直面しているのは、こうしたタフなロシア国民とどう向き合うのかという難題である。

プーチン大統領の訪日が決まった時には、北方領土をめぐる交渉への楽観論がにぎわったが、トランプ氏が米大統領選に勝利した頃から風向きが変わってきた。プーチン大統領を始め、ロシア高官は揃って日本への態度をトーンダウンさせている。今では北方領土での共同経済開発しか解決の道がないような雰囲気になっている。だが、交渉上手なロシア人に騙されてはいけない。これも、いかに交渉を有利に運ぶかの作戦の一つに違いない。

筆者の数少ない体験からしても、ロシアほど先が見えない国はない。逆にいうと、予想をしても結果的に間違うことが多かった。ロシアはまさに「予想できない国」である。と言って、要求を下げては相手の思うツボである。あくまで要求を貫き、主張すべきである。そうすれば、さすがのロシアも、根負けしてこちらの要求を受け入れるかもしれない。今まさに我々は、タフなネゴーシエイターを相手にしていることを自覚すべきだと思う。(この項終わり)


 
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北方領土交渉が「そう簡単ではない」のは安倍首相のせいではないか!

2016年11月21日 11時34分55秒 | Weblog

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安倍首相は19日、ペルーの首都リマでプーチン・ロシア大統領と首脳会談を行い、北方領土問題を中心に協議した。その後の記者会見で安倍首相は領土交渉について「(解決への道筋は見えてきているが)そう簡単ではない」と語った。その発言の意味を新聞各紙が色々分析しているが、筆者は安倍首相の言動が交渉を一層難しくしたように思う。

安倍発言の背景には、米大統領選で「米国ファースト」のトランプ氏が当選したことが挙げられる。選挙中からトランプ氏はプーチン大統領を持ち上げ、米露関係改善を訴えてきた。この事もあって、プーチン政権はトランプ陣営と選挙中から接触を続けてきたのだろう。トランプ氏当選後には電話会談を行い、プーチン大統領は対露政策がオバマ政権と大きく変化する確信をつかんだに違いない。

一方、安倍首相は外務省などの事前の情報と違い、トランプ氏が当選したため、出遅れ感もあってあわててトランプ陣営に頼んで会談を設定した。トランプタワーの豪邸で出迎えたトランプ氏は、当選後、初めてやって来た外国首脳を歓待したのはいうまでもない。舞い上がった安倍首相は各国ともトランプ氏の今後を分析している段階で「信頼できる人物だ」と、世界に先駆けてお墨付きを与えてしまったのである。

こうした状況を見ていたプーチン大統領は、これまでと同様、安倍政権の対米追随路線が続くと判断したに違いない。ロシアからすれば、ウクライナ紛争を契機に自国に編入したクリミア問題で西側諸国から経済制裁を受けたうえ、シリア情勢で米国と対立を募らせていることから、日本との関係強化に危機脱出への期待をかけていたのだろう。その当てが外れただけでなく、安倍首相の朝貢外交とも取れる”弱腰外交”を見て、「北方領土問題で日本に譲歩するメリットなし」と方向転換したのではないだろうか。

プーチン大統領との会談後の安倍首相の憔悴した姿が、全てを物語っているように思える。安倍政権がロシア側から領土問題の交渉相手として信頼を勝ち得るためには、米国にきちんとものを言う、独自外交ができることを証明しなければならない。そうした信頼を得ない限り、12月のプーチン大統領訪日は経済協力を求められるだけで、領土問題は進展なしという、いつもと同じ結果に終わりかねない。(おわり)
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プーチン大統領側近、トランプ陣営と何度も接触していたと明言!

2016年11月11日 23時49分22秒 | Weblog

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米国第一主義をかかげ、外交、安保問題で過激な発言を繰り返していたドナルド・トランプ氏が米国の新大統領に当選し、世界中にトランプ・ショックが広がっている。一方、オバマ政権との確執を強めていたロシアでは、トランプ氏当選に安堵する見方が広がっている。

そんな中、プーチン大統領のペスコフ報道官がAP通信とのインタビューで、ロシアの専門家が選挙期間中、米国のトランプ、クリントン両陣営の選対代表、とりわけトランプ陣営と何度か接触していたことを明らかにした。これに対し、トランプ陣営は接触はなかったと否定している。

ロシアのコメルサント紙によると、ペスコフ報道官は選挙期間中に候補者側とコンタクトを取るのは当然だと話している。彼の発言で注目されるのは、プーチン大統領とトランプ氏は外交政策で意見が合っていたと述べていることだ。その根拠としてプスコフ報道官は、最近行われたバルダイ会議でのプーチン大統領の発言の一部がトランプ氏の大統領当選後の発言と似ていることを指摘している。

また、プスコフ報道官は、米露間の対話再開の可能性について楽観的な見方をしている。実際にトランプ氏は選挙期間中、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の一方的な編入を容認する姿勢を示していた。西側諸国はクリミア問題で一致してロシアに経済制裁を科しており、トランプ氏の発言はこうした西側の態度と相反している。それだけに、ロシア側はトランプ氏の大統領就任に大いに期待していることは明らかだ。

だが、プーチン大統領は9日のクレムリンでの演説で「(対米関係の改善は)容易ではない」とも語った。トランプ氏は政治家の経験がなく、どれだけ指導力を発揮できるかどうか不透明だからだろう。

過去の米国大統領の旧ソ連、ロシアとの関係を振り返ると、民主党よりも共和党の大統領との関係の方がうまくいっているのは明白だ。しかも、トランプ氏はプーチン大統領と同様、「強い大統領」になると見られるだけに、両者はウマが合うかもしれないからだ。

ロシアとともに米国との関係が好転するのでは、との見方が出ている中国も、トランプ氏の内向きな政治姿勢に期待感が強まっている。いずれにしろ、トランプ氏の登場で米国の一極支配が緩和され、多極化傾向が強まる可能性が高い。さらに、欧州で強まりつつある既成勢力への反発が今後一層激化することが予想される。世界はますます不安定化することは避けられないだろう。こうした情勢に日本はどう対応すべきなのか。安倍政権の動向を注視する必要がありそうだ。(この項終わり)
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北方領土の解決案を各紙はどう報道しているのか?

2016年10月20日 12時32分58秒 | Weblog
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プーチン大統領の12月訪日を控え、日露間の最大の懸案である北方領土問題の解決案についての報道が熱気を帯びてきた。北方領土の2島引き渡しなどを取り決めた「日ソ共同宣言」から満60年を迎えた10月19日前後の各紙の報道から、解決の行方を探ってみた。

この間の日本政府の解決案をリードしたのは、読売の9月23日付1面トップを飾った「北方領 2島返還が最低限」の記事である。北方四島のうち、歯舞、色丹の2島が返還されれば日本政府はロシア政府と合意することを示唆したもので、安倍首相寄りとされる読売の記事だけにインパクトは大きかった。安倍首相はこれまで「日露双方が受け入れられる解決案を探る」と言ってきたので、ある意味では当然の帰結といえる。

この方針に疑義を唱えたのは、佐藤優・元外務省主任分析官の10月16日付産経コラム「世界裏舞台」だ。政府は「四島に対する日本の主権が認められることが解決の基本方針」と主張してきたのに、勝手に「四島の帰属に関する問題を解決する」に変更したとして「国民を欺く秘密外交」と指摘している。つまり、主権と帰属は全く違うのに、それをきちんと国民に説明しないのは、国民軽視の外交だと主張しているのである。

こうした報道に対し、朝日はクールな姿勢を保っている。10月19日付の記事「北方領土交渉 動くか」では、プーチン大統領が日ソ共同宣言に ついて「島を引き渡すが、主権を引き渡すとは書いてない」と解釈しているとし、返還は4島でも2島でもなく、0島にとどまっているとの見方をしている。また、毎日は安倍首相が柔軟な判断を下すのでは、との見方が強まる一方、「ロシアが2島返還で合意しても、直ちに返還されることはあり得ない」とのロシアの学者の意見を載せている。

興味深いのは、19日付読売「論点スペシャル」で紹介しているロシア専門家2人の対照的な見方だ。下斗米伸夫法政大教授は、日露双方の歩み寄りを可能とする条件がようやく整ったと指摘し、「四つの島の行方は首脳会談後、明らかになるだろう」と、言い切っている。
それに対し、袴田茂樹新潟県立大教授は「日露平和条約は日本という馬の前にぶら下げたニンジンだ」との喩えを示し、首脳会談で領土問題が動くことはないと断言している。

いずれにしろ、12月の首脳会談は学者2人の楽観論と悲観論の間を激しく揺れ動くことになるに違いない。日露のどちらが笑うかは神のみぞ知るだろう。(この項おわり)
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北方領土の解決案を巡り、注意すべき点は何か?

2016年10月12日 13時18分38秒 | Weblog

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プーチン大統領の12月訪日が決まり、北方領土問題解決への期待が高まりつつある。早くも様々な解決案がメディアを賑わせているが、ソ連時代も含め、すでに70年以上も日露間で断続的に交渉を続けてきており、明るみになっている事実も少なくない。そこで、ロシア政府や日本政府の言い分に誤魔化されないためにも、注意すべき点を指摘したい。

第一に、北方四島全体の返還はあり得ないということである。日本政府は相変わらず「四島返還が原則」と答弁しているが、戦後結ばれたサンフランシスコ講和条約で日本政府は国後、択捉の2島については「権利は放棄した」と説明している。それを今更返せと言っても世界的に通用しない。つまり、歯舞、色丹の2島返還が最大限、許された要求と言ってもいい。

第二に、歯舞、色丹2島の面積を合わせても4島全体の7%にすぎないが、2島が返還されれば、日本が水産資源や鉱物資源について排他的に管理できる「排他的経済水域」は4島全体の約半分になる。その水域内では、日本は主権的権利を持つことができるので、漁業などの面で日本側のメリットは計り知れないほど大きくなる。

第三に、いま現実的な解決案として「2島返還プラスアルファ」がクローズアップされている。そしてアルファの中身として、残る2島の共同統治や共同開発案が日露両政府から浮上しているが、主権が相手側にある限り、日本側にはメリットがほとんどないと言ってもいい。特にロシア側はしきりに共同開発を主張しているが、日本側が吸い取られるだけという結果になりがちだ。こうした提案にあまり期待しない方が無難である。

第四に、日本側の4島返還と、ロシア側の2島返還の折衷案として「今後双方が合意すれば改めて協議する」というような文言を平和条約にいれるという話があるが、これは玉虫色の表現にすぎない。1956年の日ソ共同宣言でも「領土問題を含む平和条約に関する交渉を継続する」との原案から「領土問題を含む」という字句がソ連側の強い要求で削除された経緯がある。少しでも交渉継続を匂わす趣旨の表現があれば、ロシア側が乗ってこないだろう。

安倍政権には、北方領土問題を政権浮揚あるいは政権存続のために利用しようという考えが強く感じられる。そうした考えでこの問題を恣意的に取り扱われては、将来に大きな禍根を残す事になりかねない。ゆめゆめ国家百年の計を忘れてはならない。(この項おわり)

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来日ロシア人研究会、21年目の休会!

2016年10月02日 17時26分45秒 | Weblog
(写真は、最後の研究会で、これまでの活動状況を回顧する中村喜和さん=左=と長縄光男さん)


ロシア革命以後に日本にやってきたロシア人の足跡と日本人との交流を研究する「来日ロシア人研究会」は結成から21年目の10月1日の研究会を節目に、休会することになりました。この日は、ちょうど100回目の研究会でした。プーチン大統領が来日し、新たな日露関係を築こうという矢先に休会となるのは誠に残念です。

この研究会は、先行の『「ロシアと日本」研究会』が1992年に終結した後、ロシア文化研究者の中村喜和さん、長縄光男さんらが集まって1995年、新たな研究会を立ち上げました。会の名前は最初、「亡命ロシア人研究会」でしたが、その後、人物交流を中心に日露文化交流史を研究するフォーラムにしようということから「来日ロシア人研究会」という名前に変わりました。

その結果、学者だけでなく、一般市民の参加も認め、アカデミズムとアマチュアリズムの融合を目指すことになりました。そして、この研究会は規約もない、会費も取らない、経歴も問わない、というユニークな会になったのです。つまり、日本人もロシア人も自由に出入りできるが、お互いに敬愛の念を持つことだけを参加資格にするという、自由な集まりになったのです。筆者もモスクワ特派員から帰国後、2000年ごろから参加し、日本にやってきたロシア人の足跡を学んだだけでなく、ロシアに関心のある多くの人たちと知り合いになることができました。

最終回の研究会では、中村喜和さんと長縄光男さんがこれまでの研究会の活動を回顧し、人と人との触れ合いや、研究会存続の苦労話などをされました。この中で、中村さんは最近東京で見たロシア映画「ユノーア号とアボシ号」の話をされました。この映画は、幕末期に日本に開国を求めてやってきたロシア帝国外交官レザノフ(当時42歳)が帰国途中、スペイン人の15歳の娘と恋に落ち、結婚を約束しながら不慮の事故で死亡、娘は35年間、レザノフを待ち続けたという実話をもとに制作されたそうです。江戸幕府に開国を拒否されたレザノフはその後、部下に仕返しを命じ、彼らが北方4島の村々を襲撃し、その後、日本国内で”対露恐怖症”が広まるわけですが、その陰でこうした儚い恋の物語があったとは知りませんでした。研究会では、こうした思いがけない話が聞けるのが楽しみの一つでした。

この研究会には、毎回30人以上の参加者がありましたが、最終回にはその倍以上の参加者で会場はいっぱいでした。日本人とロシア人が気軽に交流でき、時には議論を戦わすこともありましたが、お互いの理解が進むきっかけになった事は間違いありません。聞くところによると、研究会はしばらく解散せず、ロシアから著名な学者や文化人が来日した時は、臨時の研究会を開く計画もあるそうです。また近い将来、この研究会が復活することを願ってやみません。

研究会では、研究の成果をまとめ、これまでに『異郷に生きる 来日ロシア人の足跡』シリーズを成文社から計5冊刊行しています。最終刊は『異郷に生きる Ⅵ』で、現在発売中です。(この項終わり)

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ロシアはソ連時代の一党独裁状態に戻るのか?

2016年09月20日 14時52分01秒 | Weblog

ロシアの下院選(9月18日投開票)の開票結果が判明し、プーチン大統領の与党「統一ロシア」が下院(450議席)の4分の3を占め、単独で憲法を改正出来る権限を取得した。このため、一党独裁のソ連時代を思い起こすような強権的政権が出現しかねない。

ロシアの新聞報道によると、下院選の結果、与党は比例区(225議席)の54%を得票、203議席を獲得した。また、小選挙区(225議席)では105議席を得た。合わせると、343議席となり、単独で憲法を改正出来る3分の2の議席を越えた。

一方、第2党の共産党は92議席から42議席に、第3党の自由民主党も56議席から39議席に、それぞれ減少した。こうした政党も親プーチン派で、いわば「政権内野党」という存在である。いざとなると、プーチン大統領支持に回るのである。

確信的な反プーチン派は唯一人、グドコフ氏しかいなかったが、その人物が落選したため、議席ゼロになってしまった。リベラル派が議席を獲得出来ない最大の理由は、比例区では全体の5%を超す得票率がないと、政党は当選者を出せないという規則があるからだ。こうした政党は小選挙区でも当選者を出せないのは言うまでもない。与党はこうした規則を多用して少数派を締め出しているのだ。

プーチン大統領はこの選挙結果について「人々は無条件で安定を選び、指導的勢力を支持した」と、誇らしげに勝利宣言した。2年後の次期大統領選に立候補を目指している大統領は再選への自信を深めたに違いない。次期選挙で再選されれば、それ以前に大統領を2期4年間務めているので、20年間も指導者として君臨することになる。プーチン大統領の強権的政権が一層強まるのではと危惧される。

だが、今回の選挙で一番問題なのは、投票率が48%という下院選の史上最低を記録したことかも知れない。特に首都モスクワで35%に下がったほか、地方の主要都市でも投票率が30-40%にとどまった。この最大の理由は、都市住民の政治不信が極限に達しつつあるからではないだろうか。前回の下院選では、不正選挙の疑惑が強まり、都市住民が抗議の大規模デモを行ったものの、政権側が実力で排除、ウヤムヤに終わった経緯がある。

現在、ロシア経済は原油価格の低下に加え、西側の経済制裁が続き、プーチン政権になって初めて年金の支給額が実質減となっている。これに対し、国民の不満は強く、いつ爆発してもおかしくない状況である。ロシア人は我慢強い半面、忍耐が限界に達すると直接行動を惜しまない民族である。プーチン政権が今回の大勝で気を許していると、いつ国民の反撃を食らうか分からない。(この頃終わり)

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パラリンピックで日本選手のメダル獲得が少ないのはなぜか?

2016年09月17日 17時36分05秒 | Weblog

パラリンピック・リオ大会は18日に閉会し、日本のメダル獲得数は金ゼロ、銀10、銅14の計24個となった。総数では前回のロンドン大会の16個を上回ったが、金メダル数では5個からゼロに減っており、参加国の24位から一気に64位に落ち込んだ格好だ。確かに中国のメダル獲得数239個(うち金は107)に比べると「なんで日本はこんなに少ないのだろう」と思う人も多いと思う。だが、批判を恐れずに言えば、日本が障害者スポーツをないがしろにしてきた結果の表れとは言えないだろうか。

パラリンピックの歴史をひもとけば、日本の金メダルの最高は2004年のアテネ大会での17個で、それ以降、減り続けている。その理由として、世界各国が障害者スポーツの育成に力を入れてきたのに対し、日本は有効な手を打ってこなかったためとみられている。

具体的に何が遅れているのかというと、まずハード面で、障害者スポーツの練習場が極めて少ないことが挙げられる。たとえば、世界的に人気のあるパワーリフティングの練習場は全国に3箇所しかない。ウエイトリフティングと違って、仰向けに寝てバーベルを上げるので、その器具一式が必要となる。ところが、その器具が揃っている場所は全国に3箇所しかないのである。

また、車いすを使う団体競技がバレーボールやラグビーなどたくさんあるが、学校や自治体の体育館で車いすを使わせないところが少なくない。その理由として「床が傷つく」とか、「事故や怪我に対応できない」ことを上げるところが多い。こうした理由でスポーツのできる場所が制限されてしまうのである。

さらに、国際競争力をつけるには海外の大会に数多く出場する必要があるが、こうした場合、選手個人の負担が重くのしかかっている。東京パラリンピックが決まってから国からの補助が増えたり、選手とアスリート雇用の契約をして経費を負担してくれる企業も増えている。それでも選手の個人負担は減っていないとの調査結果もある。その上、企業との契約は東京パラリンピックまで、と期限を切られている場合が少なくない。

政府も2014年から障害者スポーツの所管官庁を厚労省から文科省に移し、国立の施設を使った強化合宿が行われるようにするなど、便宜を図るようになってきている。だが、競技人口の裾野を広げなければ、本当に強化することにはつながらない。そのためには、スポーツの予算を増やすと共に、指導者の育成や若手の発掘に力を入れるなど、総合的な施策を急ぐ必要がある。

私もこの半年間、障害者スポーツの現場を回ってみて、選手たちは厳しい条件の中で、こんなに頑張っているんだとつくづく感心した。それでも勝つこともあれば負けることもある。彼らの努力に報いるためにも、素直に拍手を送りたい。金メダルだけがメダルではないのだから。
            (この項終わり)


     
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日露の北方領土をめぐる本格的“戦い”が始まる!

2016年09月03日 10時09分18秒 | Weblog
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安倍晋三首相とプーチン大統領の9月2日の首脳会談で、プーチン大統領の12月訪日が正式に決まり、北方領土をめぐる本格交渉がいよいよ開始されることになった。大統領は今後の交渉について「(領土の)交換でも売買でもない。日露双方が損をしたと思わないような解決策を探ることが肝心だ」と述べているが、ロシア紙は今後の交渉を「領土をめぐる戦い」と表現している。

任期内の解決を目指す安倍首相は、大統領と2人だけのサシの会談で1時間近く話し込んだことから「突っ込んだ議論ができた。手応えを強く感じ取る会談だった」と自画自賛しているものの、中身については一切言及していない。

サシの会談で何が話合われたかは不明だが、共同通信は消息筋の話として安倍首相が首脳会談で2島返還論を提起すると伝えている。同通信は日本政府が返還すべき島として歯舞、色丹島をあげ、その交換条件としてロシアとの経済協力を拡大する戦略を提案すると報道している。

一方、ラブロフ露外相は記者会見で、ロシアが以前から提案している北方領土の共同開発について「日本は共同経済活動や人的交流にについて協議する用意があると感じた」と述べている。日本側はこれを否定したが、ロシア側は「交渉の重要な側面」として共同開発について今後、日本側と協議する意向を示している。

プーチン大統領はもともと日ソ共同宣言(1956年)に基づいて歯舞、色丹島返還による解決を模索しているとされる。安倍政権もこの方針に基づいて解決策を模索する考えとみられるが、ロシア側は極東・シベリア開発に日本側を巻き込む思惑があり、今後とも共同開発を提案してくる可能性が高い。

ロシア政府は外貨獲得源の原油価格が低下し、経済状況が悪化しているうえ、ウクライナ紛争を巡って西側の経済制裁を受けている。このため日本との経済協力に活路を見出そうとしているだけに、領土解決を優先する日本側と経済優先のロシア側との攻防は今後激しくなるだろう。

ロシアのバザール(青空市場)的な交渉術に負けないためには、日本側のタフな対応が求められる。その一方、日本の世論も考慮して「落としどころ」を探らなければならない。まさに日本外交の正念場である。(この項おわり)

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旧ソ連の「8月クーデター」から四半世紀を経て考える!

2016年08月22日 15時51分31秒 | Weblog

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1991年8月に旧ソ連で起きた、保守派によるクーデター未遂事件から25年が経過したと新聞報道で知り、当時モスクワでこの事件を取材したことを昨日のように思い出した。ソ連軍との衝突で反クーデター派の市民3人が犠牲になった8月21日、当時の参加者らが追悼集会を開いたが、その集会はテレビで放映されなかったという。ロシアの状況が当時とすっかり変わったなと改めて思い知らされた。

「8月クーデター」は、ソ連の保守派と民主派がポスト・ソ連の路線を巡って激しく争っている時期に、保守派が起死回生の実力行使に出たものである。ところが、当時のゴルバチョフ・ソ連大統領は保守派に乗らなかったばかりか、エリツィン・ロシア大統領が率いる民主派の強い抵抗に遭い、保守派の“天下”は3日で終わった。その引き金になったのが、市民3人の犠牲だった。

民主派はこの後、旧ソ連の実権を握り、ソ連解体に突き進んだ。つまり、8月クーデターはソ連解体の直接のきっかけになった事件で、民主派は毎年、3人の慰霊碑の前で追悼集会を開き、彼らの勇気を称えてきた。だが、プーチン大統領が登場してから民主派は国会議員も出せないほど、痛めつけられ、新生ロシア全体が保守派一色になっているといっても過言ではない。

この事件当時、私はモスクワ特派員になったばかりで、現場取材を担当していた。3人が死亡した時は、民主派が立てこもった最高会議ビル(現在の政府庁舎)を市民が「人間の鎖」作戦で幾重にも取り囲み、体を張ってソ連軍の攻撃から守ろうとしていた。私も取材中にその輪のなかに入り込み、軍隊が来たらどうしようと正直、震えていた。そのとき、3人は最高会議ビルに迫っていたソ連軍を止めようと、装甲車部隊に襲い掛かり、銃殺されたのだ。この英雄的な抵抗がなかったら、ソ連軍は最高会議ビルに突入して、流血の大惨事になったに違いない。そうなれば私もどうなっていたか、と思うと恐ろしくなる。

結局、ソ連軍はビルを囲んだ民主派の数の多さや、大規模な流血による国際世論の反発などを考慮して実力行使を断念、民主派に屈することになった。今でも「人間の鎖」に加わった若者たちの熱気を思い出し、「あの時の若者はどこへ行ってしまったのだろう」と思わずにはいられない。

その疑問を解消してくれるかも知れない下院総選挙が9月18日に行われる。450議席のうち現在、過半数の238議席を与党「統一ロシア」が占め、残りもプーチン大統領支持の「体制内野党」である。つまり、民主派はもちろん、反プーチン派も独立系議員もいない。まさに、オール与党体制なのである。

この体制を覆そうと、民主派の「人民自由党」や改革派の「ヤブロコ」が候補を立てているが、議席獲得の可能性は低いというのが大方の見方だ。与党の都合のいいような選挙の仕組みができているうえ、民主主義への国民の期待が薄れているためだ。25年前の市民の熱気は、あだ花だったのだろうか。
               (この項おわり)

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