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オバマ氏に代わって米大統領になったトランプ氏は、就任から1週間たっても、選挙当時からの「スタイル」を変えていない。ツイッターや演説でズバッと要点を言うやり方だ。だが、これはガツンと言って相手を脅す不動産屋の手口である。こんなやり方をいつまで続けるつもりだろうか。
米国親日派のアーミテージ氏(元国務副長官)は,トランプ氏のスタイルを不動産屋的だと喝破している(26日付け日経新聞)。ビジネスマンなら相手の立場も考えるが、彼はガツンと言って取引するタイプだと言う。政治家の経験がないだけに、対話が苦手なのだろうか。こういう人が世界をリードすべき米国の大統領なのだから、先が思いやられる。
日本が一番心配しているのは、米国が保護貿易主義に徹することと、アジアの安全保障を日本に肩代わりさせようとすることだろう。前者については、既にTTPからの撤退を宣言しているので心配が現実になった。今後クルマの輸出規制なども迫ってこよう。後者についてははっきりしないが、当面は駐留米軍経費の負担増が焦点になろう。
一方、中国に対しても強気な発言を繰り返しており、米中戦争を懸念する声さえ出ている。特に東シナ海、南シナ海での中国軍のプレゼンスに対しては、厳しい姿勢を取っている。対北朝鮮についても同様で、こうした姿勢が日本の安保問題に跳ね返ってくる可能性は十分ある。
では、ロシアに対してはどうだろうか。これまでのところ、オバマ政権時代の米露対立を緩和しようとしている感じがする。だが、ウクライナ紛争に絡む経済制裁や軍事力の優位性を変更するようなことは当面考えられない。ここでも「米国ファースト」を主張するに違いない。ロシアのプーチン大統領も当分はトランプ大統領の言動を注意深く見守ることになろう。
トランプ新政権のスタートも遅れていて、全容が明らかになるのは春先になるかもしれない。安倍首相はまたしても先走って2月にトランプ大統領との首脳会談を画策しているが、あわてて手の内をさらけ出すのは相手を利するだけだ。今はじっくり構えて対応すべき時ではないだろうか。(この項おわり)