飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

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北方領土を百年かけて引き渡す提案をしたトレーニン氏に聞く!

2013年10月04日 16時10分07秒 | Weblog
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  (質問に答えるトレーニン・カーネギー財団モスクワセンター長)
日露間の懸案である北方領土問題を百年かけて段階的に解決するとの提案をしたロシアの政治学者ドミトリー・トレーニン氏から、日露学術報道専門家会議の一員として、モスクワで今回の提案の真意や国内の反応を聞いた。

同氏はカーネギー財団モスクワセンターの所長を務め、民主派の論客として知られている。この提案は11年暮れ、論文として発表された。日本側が返還を求めている四島全てを百年かけて日本に引き渡すというもので、国内外で大きな反響を呼んだ。

具体的には、まずロシアが歯舞、色丹島を引渡し、50年後に残る国後、択捉島の主権を放棄。さらにその後50年間、4島を共同経済地域としながらロシア人住民の永住権を保障するという内容。プーチン大統領は2島引渡し以上には応じないとしており、日本側にとって大きな“援軍”といえる。

トレーニン氏は「この論文を書いたとき、祖国を裏切ったという批判が来ると思った。批判はあったものの、かなり弱い批判だった」と語った。さらに「プーチン大統領はシベリアと極東の開発にとって、日本との本当の協力が大事なことを理解している。そして領土問題を解決できる唯ひとりの政治家だ」と述べ、大統領に領土解決への期待を示した。

また、「この提案はロシアの世論とはかなりかけ離れているのではないか」との質問に、「保守派からの批判もいくつかあったが、内容はバラバラだった。保守派の影響力を過大に評価しないほうがいい」と指摘した。さらに、「プーチン大統領はシベリア・極東が中国の一部あるいは中国の支配下になることを心配している。そのため中国以外の国との協力が不可欠と考えている」と述べた。

一方で、プーチン大統領は北方領土問題の解決にあたって「引分け」を強調している。これについてジャーナリストのアンドレイ・イワノフ氏は保守系新聞「ザーフトラ」(ロシア語で明日)に「ソ連は(第二次世界大戦で)引分けのために(日本と)血を流して戦ったのか」という記事が掲載されたことを紹介。「(戦争の)勝者が引分けの話はしないという声が広がっている」と語り、大統領批判ともとれる意見がでていることを指摘した。

我々が会見した世論調査機関レバダ・センターのグドゥコフ所長は、北方四島の返還に反対する人がここ15年間、9割以上で変わらないことを指摘し「どの権力者も返還というリスクを犯す人はいない」と断言した。安倍晋三首相は領土返還交渉を本格化させる構えだが、よほどの覚悟がなければ国民が納得する成果は難しいことを肝に命じるべきだ。(この項おわり)
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